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〈みるきくしる〉美を愉しむ/地元の古美術・画廊巡り
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|2017.01.17

渡邊省亭「雪中の鴨図」

印象派に強い影響を与え、世界が評価した渡邊省亭を語る


明治期のもっとも優れた日本画家のひとり、渡邊省亭(わたなべせいてい)。近代文化の幕開けの時代に、いち早く世界に視野を広げ、高い技術と優れた感性で活躍しました。ところが、欧米諸国で広く知られ、印象派に強い影響を与えたことでも高い評価を受けているにも関わらず、日本では認知度、評価ともに実績に対して充分なものが得られていません。そんな中、国内で渡邊省亭を広める気運が高まっています。加島美術・代表取締役社長の加島林衛さんに伺いました。
 
 
──まずはじめに、渡邊省亭について教えてください。
 
幕末期に江戸に生まれ、近代文化の幕開けとともに活躍した日本画家です。政治的な情勢や文化が激しく動いた時代、まったく違った価値観で世界に目を向け、世界的に高い評価を得た画家のひとりとして欧米諸国を中心に知られています。
 
鋭敏な感性の持ち主なので、明治維新を迎え、西洋の文化が入りだした時代に合致しました。伊藤若冲とは時代は違えど、省亭もまた「時代が生み出し、時代に求められた画家」とよべる存在です。
 
また、幅広いフィールドで活躍したことも省亭ならではの魅力です。画家でありながら、版画や挿絵を描いたり、七宝工芸図案を担当したり、自身の技法や理論を突き詰めた画家でした。
 
 
──日本国内で認知度が低いのはなぜでしょうか?
 
省亭の不遇は、政府のお抱え団体や国展などに所属していなかったことに加え、非常に高い技術と理論をもっていたがゆえに、政府お抱え絵師などに厳しい言葉を残し、国内では表舞台から引いたことです。そのため、海外では圧倒的な評価と認知度にも関わらず、不思議なほど国内で知られておらず、「省亭?聞いたことがあるかもしれない」という状態です。
 
2017年は省亭の100回忌で、さまざまなイベントが企画されています。これを機に、ぜひ「渡邊省亭」という類まれな画家を知ってほしいと願っています。
 
 
──省亭が海外で受けた評価を教えてください。
 
生前、フランスの印象派との交流があり、印象派グループに強い影響を与えたことがあげられます。
 
フランスでデモンストレーションを行った逸話もあります。思う通りに筆を動かさなければ世界観が崩れる一発勝負の日本画の技法は海外では非常にめずらしく、そんな欧米人の目の前で実際に作品を仕上げたそうです。それが大盛況だったと伝えられています。
 
また、内国勧業博覧会やシカゴ万博・パリ万博などでさまざまな賞を受賞し、各種国立系美術館やメトロポリタン美術館に作品が収蔵されています。世界に向けた発信が困難だった時代にも関わらず、いち早く「いかに日本の画技や感性が素晴らしいか」を訴え、実演まで行い、評価されたのが省亭です。

アウトプットのみならず、インプット能力に優れた稀代の画家


──省亭の作風を一言で表すと?
 
一言でいえば「線」。省亭は、後進の指導に定評のあった歴史画家の菊池容斎に師事しており、最初の数年間は自身の名前だけしか書かせてもらえなかったほど徹底した修行を積んでいます。これは容斎の「世界観を具現化するためには、筆を自由自在に動かせるようにならなければ、思い描く世界は表現されない」という考えから。エッジが効いた独自性豊かな画法が特徴です。
 
この類まれな技術を身につけたからこそ、七宝工芸図案にもマッチしました。七宝は刀で刻む技工を用いるため、刻むかのような線を描く省亭は幅広いフィールドで活躍できました。
 
 
──具現化のためのインプット能力も優れていた印象を受けます。
 
省亭にはこんな逸話があります。容斎の弟子時代、街を連れ歩かれ、帰ってきた瞬間「◯丁目の◯◯で会った人の着物の柄は?」と質問されても、すべて答えたそうです。アンテナの張り方や、情報の収集力と記憶力が高かった。
 
とりわけ、それらの能力は花鳥画において発揮されました。動く動物を瞬間でとらえるのは至難の業ですが、省亭はその点に秀でていたため、作品の中では花鳥画がもっとも評価されています。

エッジの効いたダイナミズムあふれる「線」は、渡邊省亭の真骨頂

  渡邊省亭「雪中の鴨図」
  本紙149×70/全体225×85 絹本 着色
  (販売済)

渡邊省亭「雪中の鴨図」部分図

──今回ご紹介いただく作品について教えてください。
 
近代画家の巨匠、鏑木清方が所蔵していた作品「雪中の鴨図」です。線が命といわれる美人画で名を馳せた清方が所蔵していたことも納得がいきます。
 
雪が降りそそぐ中、鴨が佇む様子が描かれており、枝を抜きながら全体に墨を塗っていることが特徴です。特に鴨の羽毛は、微妙な強弱をつけることで立体感を出す省亭の技術を駆使した「線」のダイナミズムが味わえます。
 
写真でその瞬間を収めたかのような臨場感がある作品が多いことも省亭の持ち味ですが、「雪中の鴨図」は省亭らしさが味わえる代表作のひとつといえるでしょう。

美術品鑑賞を楽しむための、既存概念にとらわれない提案

モダンな空間に、美術作品が映える。

──加島美術は1Fのギャラリーがモダンですが、意識した提案でしょうか?
 
「美術品をもっと自由に楽しんでほしい」という理念で運営しています。
 
本来、美術品は純粋に鑑賞を楽しむものです。つまり、時にはコンクリートの打ちっぱなしのスペースや、下になにも置かれていなくても、鑑賞する方が気に入ればそれでいい。それを具現化し、「こんな楽しみ方もできますよ」という提案を行いながら見せ方を考えています。
 
1Fは無機質の現代空間、対して2Fは京都の中塗仕上げで本物の土を使用した土壁のスペースや、クラシカルな床の間など。実際にお客様の目で体験し、知っていただくライブ感をたいせつにしています。

  代表取締役社長の加島林衛さん

  レトロモダンな建物が印象的な加島美術外観

INFORMATION

「SEITEI 孤高の神絵師 渡辺省亭」展

開催期間
2017.3.18(土)~2017.4.9(日)
営業時間
10:00~18:00
会場
加島美術1階・2階展示スペース
主催
渡辺省亭展実行委員会
Webサイト
http://www.watanabeseitei.org/

加島美術

住所
東京都中央区京橋3-3-2
電話番号
03-3276-0700
営業時間
平日・土曜: 10:00〜18:00
定休日
日曜・祝日
Webサイト
http://www.kashima-arts.co.jp/
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