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〈たべるかう〉 拍手喝采!「褒められ手みやげ」
Nice souvenirs of Tokyo

|2017.08.15

Vol.2 江戸・明治・大正創業店で出会う、いぶし銀の名品

[ROJI日本橋] & [ときわ木] & [お多幸]

案内/長山智美  文/友永文博(プレジデント社)  撮影/加瀬健太郎

江戸創業の食の目利きたちが揃えた、日本橋発の自信作たち


日本橋は昔から私の大好きな街。この地に転居してから、かれこれ20年近くが経ちます。なぜ日本橋に惹かれるのかと問われたなら、その答えはたくさんの“本物”に出会えるからでしょうか。特に高島屋など百貨店は買い物に、お茶にとよく利用しますし、老舗のお店もできるだけのぞくようにしています。日本橋で見聞きし、いつしか磨かれた感性が、今の仕事にも大きく役立っていると思います。

そんな日本橋住民の私がセレクトしたのは、私自身が本物と見極めた手土産。「本物=伝統」とは限りませんが、やはり歴史ある老舗には本物の品が多いことは事実。そこで日本橋ならではの、江戸・明治・大正の3つの時代にそれぞれルーツを持つお店から、控えめながらも奥深い魅力のある品々をご紹介します。仕事柄、どうしても最初は見た目で惹かれるケースも多いのですが、ご紹介するものはもちろん中身も極上。受け取る側の期待を裏切らず、サイドストーリーにも事欠かない、ツウ好みの逸品ばかりです。


では初めに国分グループ本社株式会社の商品が揃う『ROJI日本橋』から。国分といえば幼い頃に食べた、青地に黄色い果肉の写真が印刷されたパイナップルの缶詰を今でも覚えています。4代國分勘兵衛さんが江戸・日本橋本町に「大國屋」の屋号で店舗を構えたのが始まり。創業時は呉服を扱うとともに、醤油醸造業を手がけていたと今回、新たに知って驚きました。その後、1880(明治13)年に醤油醸造業から撤退して食品卸売業を手がけ、現在に至るのですが、その国分が本社1階に2011年オープンさせたセレクトショップが『ROJI日本橋』なのです。

コンパクトながらも3面ガラス張りで開放感のある店内には、国分が扱う自慢の食品がいっぱい。最近では“そのままおつまみになる缶詰”がキャッチフレーズの「缶つま」シリーズが人気で、私も実は自宅で愛用しています。ただ手土産用に一番にご紹介したいのは、「日本橋漬」。現在は瓶詰めですが、初めて購入した際は、同様のデザインの缶詰でした。明治時代に商標登録したという桐印が入った、日本橋を描いたオリジナル画がなんともクラシカルで素敵です。中身は甘ったるさを排した大人の福神漬けといえるもの。カレーの付け合わせというよりは、お酒のおつまみや漬物としてご飯のお供に最適な、醤油の効いたお味です。

<日本橋漬>1912(大正1)年日本橋本銀町で缶詰を製造していた青木平四郎さんが従来の福神漬けを改良し、「日本橋漬」と名付けたのが起源。翌年より国分商店(現・国分グループ本社)が販売を手がけている。以来、保存料無添加の醤油に漬け込む伝統製法を継承。甘くなく、キリッとしたその味付けは、大人の街、日本橋にぴったり。また発売以来変わらないレトロなパッケージデザインも魅力。瓶(135g)560円、2本詰め合わせの「日本橋漬ギフト」1300円。賞味期限18カ月。

そして次にお勧めしたい甘納豆と海苔せんべいは、ともに日本橋菓房ブランドの「麒麟の翼」シリーズから。東野圭吾さんの小説名にもなった、この翼を持つ麒麟像は、1911(明治44)年の日本橋の架橋の際、日本の道路の基点を行き交う旅人の守り神として中央に4体配置されたもの(実は4隅には獅子も4体!)。その名を冠する当シリーズは、日本橋を創業の地とする老舗とタッグを組み、日本橋発信の名品を揃えたプレミアム商品群。甘納豆は榮太樓、海苔せんべいは山本海苔店との共同開発です。

私がよく利用するのは、複雑な多角形の外箱も可愛い「日本橋甘納豆」の3種詰め合わせと海苔の香ばしさが際立つ「日本橋海苔せんべい」詰め合わせ。お箱代(100~300円)を支払えば、店内の商品はお好みで自由に組み合わせられるので、こだわりのある方々への手土産選びに大変重宝します。さらに先ほどの「缶つま」のほか、ワインなどアルコール類も充実、手土産ばかりか、自宅用、彼女用、出張帰りの新幹線車中で自分用にも気に入った品を購入できるので、まさに一石三、四鳥。さらに店の奥には、川辺を望むお休み処まで。まずは真っ先に足を運んでいただいて損はない、頼もしい品揃えの一軒です。

<日本橋甘納豆>初代栄太郎さんが創製して「甘名納糖」と命名。その後、甘納豆として全国に広まったという生粋の東京生まれの菓子。「日本橋甘納豆」は小豆を使った「大納言」、黒大豆を使った「黒千石」、さつま芋を使った「鳴門金時」の3種が揃う。長山さん的には、ふくよかな食感の「鳴門金時」がイチオシ。単品包装に描かれた絵は、栄太郎さんが日本橋に出てきて(大納言)、きんつばを屋台で売って(黒千石)、その後、成功して店を構えた(鳴門金時)という物語をイメージ。一方、詰め合わせ用のパッケージは日本橋をパノラミックに表現。単品(40g)270円、詰め合わせ(3袋)970円。賞味期限120日。

<日本橋海苔せんべい>山本海苔店は1869(明治2)年、明治天皇の京都行幸のお土産用に味附海苔を苦心して創案したことから宮内省御用達となった老舗。専門店ならではの旨味、香り、歯切れの良さにこだわった海苔はもちろん、関東のコシヒカリ種を玄米のまま低温保存した生地や、独自の醤油だれを使って紀州備長炭で焼き上げる昔ながらの製法など、こだわりが満載の「日本橋海苔せんべい」。本物のおいしさを手軽な手土産にぜひ。(角形6枚・丸形3枚入り)1080円。賞味期限150日。

飾らない意匠の極上和菓子を、明治の老舗の矜持とともに

次は1910(明治43)年創業の『お菓子司 ときわ木』です。ここは表通りには面しておらず、つい見過ごしてしまいそうな小さなお店。永代通りの江戸橋1丁目の交差点を茅場町方面へ渡り、首都高速の手前を左に入りすぐのところにあります。その奥ゆかしい佇まいからして私好みでたまりません。お菓子の購入は、漆塗りの3段の重箱に入った見本を見ながら注文する座売スタイル。それもまた風情があり、ちょっとした儀式のようでもあり、心ときめくのです。

私ももっと若い頃は洋菓子派でしたが、最近は徐々に和菓子に傾倒中。粒餡より、餡自体の洗練度が際立つこし餡派なので、『ときわ木』のこし餡2種「黒まんじゅう」と「ぎゅうひ」を初めて口にした際には、あまりの美味しさに卒倒しそうになりました(笑)。想像を超えた、繊細で上品な味わい。控えめな意匠と卓越した味のギャップに驚きます。

現在は3代目森宗一郎さんが一人で朝3時から(時には2時から)手作りされているそう。接客はいつも優しい店主の奥様のご担当。その奥様に箱詰め・包装をしていただき、最後に紐でキリッと一文字に縛っていただいた商品を受け取るのも、とても清々しい気持ちになって好きなのです。

上生菓子主体のお店なので、レパートリーは100種以上、時季によって品揃えが大きく変わります。私のおすすめは定番なら「黒まんじゅう」「最中」、夏の時季には「水ようかん」「水の月」。そして夏は残念ながら作っていないのですが、絶対に外せない銘菓「若紫」など。伝統に忠実に、技を受け継ぎ磨き続ける老舗の品はことさら奇をてらわずとも、凛とした貫禄を感じます。手土産を渡す際に、先の注文方法や店内に立てかけられた創業時の木の看板のことなど、些細なサイドストーリーも一緒に伝えてあげると、いっそう喜ばれるのではと思います。

<詰め合わせ>右上から時計回りに。
【黒まんじゅう】黒糖餡を用いた「黒まんじゅう」は、大和芋、山芋など薯蕷(じょうよ)芋を饅頭の皮に用いて蒸した薯蕷饅頭と呼ばれるもの。出来上がった饅頭は、波照間島産の黒糖の芳ばしさとふわっと柔らかな食感が特長的。この薯蕷饅頭の味によって店のレベルが知れるといわれるほど、作り手のセンスと技量が表れるのだそう。280円。賞味期限1日(翌日)。
【水の月】本わらび粉と寒天を合わせた生地でこし餡玉を包み込み、水に映る月に見立てた「水の月」。もっちりぷるんとしたのど越しを味わいたい、夏の上生菓子。別添えされる桜の葉を下に敷いて頂けば、瑞々しい趣がいっそう格別に。270円。賞味期限1日(翌日)。
【最中】粒餡が苦手な長山さんも、その美味しさにひと口でファンになったという「最中」。大粒の大納言の食感を残しつつ、絶妙にふっくらと仕上がっている。注文後に餡を皮に挟んでくれるため、サクッとした皮の軽やかな食感が長続きする。150円。賞味期限1日(翌日)。
【水ようかん】口の中でほろほろと崩れる絶妙な口どけ加減に、夏らしい儚い魅力を感じる「水ようかん」。控えめで自然な甘みで後味もさっぱり。何気ない意匠も可愛い容器に入っており、手軽に食べられるのも嬉しい。270円。賞味期限1日(翌日)。

レトロなオリジナル缶に詰めた、大正生まれの絶品おでん

<おでん缶>おでん種は常時20種類以上(190~390円)。出汁は古くからつぎ足し使い続けてきた、かつお、昆布、関東醤油がベースの秘伝の甘辛味。つみれ、キャベツ巻き、しらたきなど多くは自家製にこだわり、名物「とうめし」も含めて毎日400丁ほど出る木綿豆腐は日本橋人形町の「とうふの双葉」の特注品。その中から好きなものをアラカルトで選び、おでん缶(580円)に詰めれば、なんとも楽しい手土産の出来上がり。缶には最大16種類ほどの種が入るものの、豆腐だけは崩れてしまうので、タッパー容器に。もちろん、おでん缶単品の購入も可能。出汁付き。賞味期限1日(翌日)。

最後に、おでんといえば日本で一二を争う名店、『日本橋お多幸本店』の知られざる逸品をご紹介します。それは実はおでん種ではなく、おでんを入れる缶なのです。『お多幸』の創業者・太田幸さんは栃木県出身。夫とともに神戸に転居した後、関東大震災で多くの料理店が被害を受けた1923(大正12)年に日本橋に店をオープン。その後、銀座に移って以降、「お多幸」を名乗り、2002年に都市開発のため日本橋の現在の場所に移転しました(戦時中は一時閉店)。幸さんの友人で右腕として活躍し、戦後に店を再開した中村てふさん、その弟子の田中辰雄さんという直伝の味を受け継ぐのは、実は東京ではこの店舗のみ。

私自身はおでん缶をまだ実際に買ったことはないのですが、以前からお店で見かけていて、とても惹かれる存在でした。なんといっても取っ手付きの缶製、というのが愛らしく、赤とオレンジを混ぜたような色調にそそられます。今回、お店の中村康さんに伺ったところ、以前はベースの赤色がもう少し暗めで、取っ手もほかの色だったり。現在の色に落ち着いたのは日本橋に移転後だとか。今も時々、お店に昔の配色の缶を持ってこられるお客様がいて、それがとても嬉しいそうです(そんなレアもの、できれば私も欲しいです)。しかも「お多幸」の文字はすべて職人が手書きをしているため、一つとして同じものはないことも知りました。さすが、老舗だけあり、小物にまで味わいが染みています。

東京駅からも近く、おでん以外もつまみが充実しているこのお店。私の推薦する利用法は、東京を離れる前に、開店と同時に店に入り(電話がなかなかつながらず、予約が少々難しいので)、思い出の美味をあれこれ満喫。その間、好みの種をおでん缶に詰めていただき、退店とともにピックアップというパターン。あの缶を下げて帰路につくのも(実際には紙袋も用意していただけます)、ノスタルジックな情緒があって素敵だなぁと思います。

案内人プロフィール: 長山智美(ながやま・ともみ)
雑誌『Casa BRUTUS』『&Premium』など数多くの雑誌を中心に活躍する日本橋在住の人気インテリアスタイリスト。最近はもっぱら和食派で、自宅近くの渋めのお店を訪ねては、日本橋グルメを満喫中。

INFORMATION

ROJI日本橋

住所
中央区日本橋1-1-1
電話番号
03-3276-4162
営業時間
11時~18時30分(土曜・日曜・祝日は18時まで)
定休日
不定
Webサイト
http://www.roji-nhb.jp/

ときわ木

住所
中央区日本橋1-15-4
電話番号
03-3271-9180
営業時間
9時30分~17時30分
定休日
土曜、日曜、祝日

日本橋お多幸本店

住所
中央区日本橋2-2-3
電話番号
03-3243-8282
営業時間
11時30分~14時、17時~23時(土曜・祝日は16時~22時30分) 
定休日
日曜

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