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〈むかしみらい〉 地元企業物語
Campany's story in our town

|2016.09.20

Vol.1 味の素

百年以上前から「食と健康」を科学的に考え続ける。


第五の味覚として、今や国際的にも認められている「うま味」。その成分を発見したのは、帝国大学理科大学(現東京大学理学部)教授・池田菊苗きくなえという人物だ。独自の研究を重ね、明治41(1908)年、昆布だしの味の成分が、アミノ酸の一種であるグルタミン酸と一致することを発見。そこから濃縮したグルタミン酸ナトリウムを主成分とした調味料の製造へ進展させ、特許も取得している。

池田はドイツへの留学時に、日本人の貧弱な体格から栄養不足などの健康問題を意識するようになり、栄養摂取の促進の目的でこの研究を始めている。商品化も考え、企業に話を持ちかけるが、当時は日露戦争後の不況期。目を向ける企業などないのが実情だったが、唯一興味を示したのが、後の味の素社の創業者である二代鈴木三郎助だった。

父親の初代鈴木三郎助は、現在の神奈川県葉山町で穀物や酒類の小売店を営んでいたが、35歳の若さで亡くなっている。そのため妻ナカがその後を切り盛りし、明治21(1888)年には、家計の足しにと始めた海藻から医薬品や殺菌剤の原料となるヨードを取り出す家内工業を軌道にのせ、「鈴木製薬所」が誕生する。

実は、二代三郎助が池田のもとを訪れたのは、その家業に役立つのではないかと考えてのことだった。弟忠治に製造技術面を、長男三郎に販売面を受け持たせ、さっそく事業化に乗り出した。そして「うま味」発見の翌年、明治42(1909)年の5月には、「味の素」と名付けられた、まったく新しい調味料が誕生した。

同年、二代三郎助は、商売の拠点となる事務所「味の素本舗」を京橋区南伝馬町1丁目12番地(現在の中央区京橋1丁目6番地)に構え、店頭にショーウインドウを設置。商品ができるまでの工程を見せる工夫をしたり、建物を広告塔に見立てたイルミネーション看板や、新聞広告や乗り合い馬車(後の市街電車)の中吊り広告など、今にも通じるPR手法を次々と実施する。また、同時期に国内外の販売ルートの獲得も精力的に行ったことで、一気に認知され人気商品となった。

昭和21(1946)年、社名を「味の素株式会社」に改称。それ以降も、新たな菌を使った発酵法の開発や、体に欠かせないアミノ酸を含む食品や医薬品の開発・製造・販売に、味の素グループの「開拓者精神」は今も息づく。

味の素株式会社
住所: 中央区京橋1-15-1
TEL: 03-5250-8111
交通: 都営地下鉄浅草線宝町駅から1分、東京メトロ銀座線京橋駅から5分
WEBサイト: http://www.ajinomoto.co.jp/



TEXT: 大谷みさ子
東京人2016年7月増刊より転載

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