〈むかしみらい〉 地元企業物語
Campany's story in our town

|2018.04.27

ベンチャー文具メーカーと共に、業界に新風を吹き込む文具営業専門家の挑戦(後編)

祖父が開発したマジックインキ®︎をはじめ、本当にいい文具を世に送り出したいとの想いから、「ベンチャー文具メーカー」の営業サポートを通じて、メーカーと一緒になって業界に新風を吹き込もうと奮闘するNEXT switch株式会社(中央区京橋1-3-2)代表取締役の寺西廣記さん。起業から3年半。成熟産業といわれる文具業界でどのように現場と向き合い、新たなビジネスモデルを組み立ててきたのか。
なお、できる限り、寺西さんが起業に至るまでのストーリーをまとめた「前編」を読んでからこの記事に触れていただきたい。

リーマンショックをきっかけに文具業界が勢いづいた

「話は遡りますが、2008年のリーマンショック以降、経費削減で会社から支給される文具は目に見えて減りました。自分の財布を使うのであれば、自分の好きなもの、気に入ったもの選びたいですよね。そうした大きな潮流の中で、ひとりから数十人程度の小規模な体制で、ユーザーに近い目線から文具をつくるメーカーが出てきたこと。また、彼らの隅々まで行き届いたアイデアとこだわりが感じられる商品に注目が集まることは必然の流れかもしれません」。

寺西さんはそう謙遜するが、いわゆる「ひとりメーカー」と、長年の技術を文具づくりに応用させた町工場など、本業の技術を活かした商品開発に取り組むメーカーを合わせた「ベンチャー文具メーカー」という新たなカテゴリーを売り出した寺西さんの功績は大きい。今年7月に控える「国際文具・紙製品展 ISOT」。大手メーカーを筆頭に毎年星の数ほどの新商品が送り出される中で、ベンチャー文具メーカーを集め、2016年から連続出展しているNEXT switchのブースは終日大勢の来場者が出入りし、メディアの取材も多い。また、ISOTのみどころひとつである「日本文具大賞」のグランプリ商品も輩出している。

「1年目は、あたぼうさんさんの飾り原稿用紙 『碧翡翠』が、2年目はぷんぷく堂さんの『あなたの小道具箱』が日本文具大賞を受賞しました。受賞はもちろん分かりやすい成果ですが、うちのブースを半日かけてじっくり見てまわるバイヤーさんや、海外のバイヤーさんからのお褒めの言葉は、全てのベンチャー文具メーカーに向けられているものだと思っています」。

左)ISOTでのひとコマ。文具の良さや使い方の工夫を伝えるため、寺西さんは提案型の営業にこだわる。
右)東京の町工場の職人が一つひとつ手作業でつくる「あなたの小道具箱」

成熟産業にこそビジネスチャンスがある

寺西さんは十数社におよぶクライアントに代わって行う商談の成約率をさらに高めるため、ベンチャー文具メーカーの商品を集めた通販サイト「文具道」を開設。利益を上げるのが目的ではなく、個々の商品ページのURLをSNSで拡散することで認知を高めるのが狙いだ。その反響は、百貨店や大型生活雑貨チェーン店で「文具道」ブランドのポップアップ企画が進行中と聞けば明らかで、さらに、文具道師範代として自ら雑誌に登場したり、店頭を意識した商品開発を手伝ったりと、「できることは何でもやる」姿勢が実に清々しい。次は一体何を仕掛けるのか。

「昨年12月、11月29日を『いい文具の日』に認定していただきました。すでに、『文具の日』(11月3日)がありますが、『いい文具の日』はバレンタインデーのように、大切な人に文具をプレゼントする日になって欲しいんです。また、文具営業専門家としては、売場の品揃えなど年間MD(マーチャンダイジング)は無視できません。9月、10月中に来年の手帳が出揃い、12月に入ればクリスマスの商材から、年末、年始の商材へシフトしていきます。その合間の11月に新たな需要を引き出すことができれば嬉しいですね」。

作り手の想いがそのまま形になった文具は独特の個性を放つ。文具道では、一般の文具店ではなかなか手に入らない商品も取り揃えている

新年度に使いたいおすすめの文具4選

文具業界における流通は、予算をかけて売り出された大手メーカーの商品や供給しやすいアイテム数の多い商品が優先され、下流へ動く傾向がある。文具営業専門家という唯一無二の肩書を持つ寺西さんの存在が、市場に楔を打ち込むことになるか、その答えが出るのはまだ先だが、ベンチャー文具メーカーの商品について語る言葉の熱量は、18歳にして文具メーカーを立ち上げた祖父のベンチャー魂の系譜を確かに感じさせる。そんな寺西さんに今回、新年度が始まってから間もない今の時期におすすめの文具を、ベンチャー文具メーカーから4つ挙げてもらった。これを機に、クリエイターたちが繰り広げるこだわりの文具の世界に触れてみてはいかがだろうか。
 

寺西さんのインタビューの前編はこちら

◆寺西 廣記
NEXT switch株式会社 代表取締役 文具営業専門家
1976年大阪生まれ。物心がついた時からマジックインキ®︎などの筆記具やクレヨンなどの画材をはじめとした様々な文具に囲まれて育った。大学卒業後都市ガス会社のシステム部門へ就職し、2006年に祖父が創業した老舗筆記具メーカーに転職。営業、経営企画を経て2014年9月に独立し現職。「ベンチャー文具メーカー」を支援するための独自のビジネスモデルを実践。文具業界だけでなく多方面への人脈なども活用し「文具営業専門家」、文具道師範代として文具通販「文具道」の運営に携わる。MBA(経営学修士)。

関連サイト
NEXT switch株式会社: http://www.nextswitch.co.jp
文具通販 文具道: http://www.bungudo.jp

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