〈さんかする〉イベント詳細
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|2018.07.06

島村光展「十三支・おくれてきたねこⅣ」[LIXILギャラリー]


島村光氏は岡山県出身の備前焼の作家で、40年にわたりオブジェを中心とした作品を制作しています。

備前焼には、「備前焼細工」という江戸時代に藩主保護奨励のもと、獅子や布袋、動植物の置物や香炉の細工物が繁栄した歴史があります。島村氏は大学の絵画科を卒業後、オブジェや彫刻を制作する現代美術作家として活動をしたのち、備前焼の細工物を制作するようになりました。
釉薬を使わずに、焼き締めた土の表情だけで表現をする備前焼ですが、島村氏は高い技術をもち、伝統を踏まえつつ独自の現代的な造形を生み出しています。

今展では十二支をモチーフに、猫を加えた13種類の動物による「十三支・おくれてきたねこ」シリーズの新作を展示します。
折り畳んだ紙をジャバラに拡げて成形したようなバイオリンを弾くウサギや、ジャンパースカートがおしゃれな大きな瞳の猫など、まるで絵本の世界の登場人物のような物語性と、大人のユーモアとペーソスを感じさせる作品です。

<イベント詳細>

会期: 6月28日(木)~ 9月3日(月)

開館時間: 10:00~18:00

休館日: 水曜、8月11日(土・祝)~15日(水)、26日(日)

入場料: 無料

企画制作: 株式会社LIXIL

WEBサイト: http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g3-1806/

島村光展 「十三支・おくれてきたねこⅣ」 に寄せて 

備前焼の細工物作家・島村光(ひかる)の作品は、これまでの伝統的な備前焼とは違って、独特の作調と存在感を持っている。そして、どこかユーモアに溢れ、懐かしい詩情に包まれている。やきものは焼くことによって浄化されるというが、島村の作品はとても清潔で、少しも媚びたところがない。その魅力を一言でいうなら、作品から醸し出される品格であろう。

島村は五十過ぎまで、作品を発表することはなかった。すなわち、売るための作品を作らず、自分の作りたいものを作り続けてきた。それは、個展を開催するようになったいまも変わらない。島村は、ひたすらわが道を歩み続ける作家である。高い志(こころざし)と清貧の思想こそ、この作家の真骨頂なのであろう。

島村のトレードマークは、無精髯(ぶしょうひげ)と素足に草履。このスタイルは春夏秋冬変わらない。その理由を問うと、「いつも地に足をつけていたいから」という。島村の作品は、すべて細かい備前土を使った無釉の焼締陶である。多くが日常身辺にいる猫や雀、窯場の風景などがモチーフとなっている。島村は「焼き上がりを思い浮かべながらの土造りは、私にとってホッとするひととき。土の特性によって造るものが決まる」と語る。土に触れることによって、かたちが生まれる。そこが、やきものの面白さであり、島村の作品の新鮮さもそこにある。

島村は20代の頃、前衛美術家を目指すが、稀代の芸術家・工藤哲巳の作品を見て、「自分はこの人には近づけない」と悟り帰郷、幼い頃から身近にあった備前焼の細工物を作り始める。しかし、島村の創作の根底には、いまも若い時に培(つちか)った「人の真似はしない」というアバンギャルド精神が息づいているように思う。

「腹八分目」という言葉があるが、島村の作品を見ると、腹八分で表現を抑えて、簡略化しているところがある。それは恐らく、作りすぎると本質が伝わりにくいからであろう。それは、そのままこの作家の生き方にも通じる。余白が想像力を膨らませるのである。

今回のテーマ「十三支・おくれてきたねこ」シリーズは、人間にとって最も身近な存在であるネコが、どうして干支に入っていないかという疑問から始まった。それが十三支を作る切っ掛けとなった。今展には、折り畳んだ紙をジャバラに拡げて成形したようなバイオリンを弾くウサギや、ジャンパースカートがおしゃれな大きな瞳のネコなど、まるで絵本の世界から抜け出たような十三支がニューバージョンで登場する。

森 孝一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)

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