〈さんかする〉イベントレポート
Event report

|2018.02.27

+OURS 八重洲で開催中の広報PRセミナーに潜入!


昨年末、日本経済新聞の夕刊に「AIに勝つ『臨機応変力』相手に合わせるスキル磨く」という見出しで記事が掲載された。人材サービス大手エン・ジャパンが、同社の女性向けサイト利用者約600人に「AIの台頭にあたり、今から身に付けておくべきスキルは何か」と聞いたところ、全体の約7割が「臨機応変に対応するスキル」と答えたことを受けて書かれた記事である。

話題を本筋に戻そう。昨年12月から始まり今年2月までの計3回、会員制シェアオフィス「+OURS 八重洲」で開催中の「広報PRセミナー」では、業界にインパクトを与える様々な企業・団体のPRパーソンから直接、その心構えや手法を学ぶことができる。新しいメディアが次々に誕生する中で、コミュニケーションのスペシャリストであり続ける彼らの「臨機応変力」は論をまたず、前段の文脈に即して考えるなら、広報・PR部門に属さない人にとっても必聴のセミナーといえるだろう。第2弾となる今回のテーマは「地域創生の成功事例」。第1部の講師で、日光市情報観光情報発信センターの加藤倫子さんの話は3年前に遡る。

新しい魅力を発見して、日光を「2度目がある場所」に

「2015年6月、都内のプレスセンタービルに『日光市観光情報発信センター』が開所したのに伴い、同センターの『PRパーソン』に就任しました。観光地として有名な日光ですが、何もしなくても観光客が呼べていた昔とは異なる状況は誰の目にも明らか。2020年を見据えた、攻めのPRが必要だったんです」。

静岡県富士市出身の加藤さんと日光との関わりといえば、20歳のときに当時勤めていた会社の社員旅行で一度訪れたきりだ。修学旅行の主要な行き先でもある日光。加藤さんに限らず、多くの人にとって「なかなか2度目がない」場所ではないだろうか。

「だからこそ、日光の新しい魅力を発見して伝えてほしいというのが、日光市からのオファーだったんです。センターの調査でも、日光に対する大方の印象は『日光東照宮と鬼怒川温泉、サル』ぐらい。でも中には、日光金谷ホテルなどの歴史的建造物に『異国情緒を感じる』といった意見もありました。地元の若者たちからも『日光をオシャレにしていきたい』という要望があったものですから、それらを踏まえた新たな日光のストーリーを提示した結果、複数のファッション雑誌に掲載していただきました」。

左)熱心に加藤さんの解説に聞き入る参加者たち 右)雑誌『LEON』の「日光」特集。日光はファッションページの撮影にも度々使われている

首都圏メディア、地元メディアのどちらも大切。小さくても多くの露出を

PRパーソンにとってリリースは基礎中の基礎だが、配信側の発信したい情報が中心のリリースに対して、加藤さんが用意した4つのプロモート資料は、取り上げるメディアを起点に練られたもの。世の中のトレンドなどにも言及し、一つの企画として成立する資料となっている。さらに、現地にメディアを招待して案内するプレスツアーや、表参道に期間限定の日光市のアンテナカフェをオープンさせるなど、様々な打ち手を講じて順調にメディア露出を広げていく。

「同時に、地元メディアとのリレーションも大切に考えています。地元メディアが扱ったネタをテレビリサーチャーが収集し、大きなメディアで取り上げられることも少なくないんです」。

日光市観光情報発信センターが開所した2015年、観光入込客数は過去10年で最高を記録。翌年には『るるぶトラベル』発表の『最強の避暑地』で軽井沢を抜いて首位に。国土交通省の2017年版観光白書では、日光市の取り組みが大々的に紹介された。そして3年経った今、加藤さんが地道に発信し続けてきた情報は自然発生的に広がりを見せている。

日光市の首都圏プロモーション 左)六本木駅のデジタルサイネージ展 右)表参道の「Antenna WIRED CAFE」とのコラボレーションカフェ

一人ひとりのはじめの一歩を生み出す greenz.jp

第2部の講師はNPO法人グリーンズの植原正太郎さん。2006年創刊のウェブマガジン「greenz.jp(以下、グリーンズ)」において「コミュニティエディター」の肩書を持つ。

「創刊当時は、地球温暖化など環境問題のネガティブな情報ばかりがマスメディアを通じて人々の耳に入っていっている時期で、『それでは何も解決しない』と考えたグリーンズ代表の鈴木菜央が、個人のグッドアクションを応援したりグッドアイデアを広めたりするためのメディアをつくったのが始まりです」。

"ほしい未来は、つくろう"。グリーンズのこのスローガンが意味するのは、まちづくり、子育て、働き方など大小様々な社会課題について、一人ひとりができることを考え実行することで社会に大きな波及効果をもたらす未来のあり方だ。

「例えば2012年にグリーンズが取り上げた、大阪市内でサービス展開されているシェアサイクル事業『HUBchari(ハブチャリ)』。大阪のホームレスのおっちゃんたちの就労問題と放置自転車問題というふたつの社会課題の解決に向け、当時まだ女子大生だった川口加奈さんが立ち上げた事業は、時を経て地域の新たな仕組みとして育っていっています」。

左)グリーンズでは「HUBchari」を複数回にわたり取材。その活動を応援している 右)ノートパソコンでメモを取りながら聴講する姿も見られた

取材対象もライターも読者も互いに「ほしい未来をつくる仲間」

第1部でも加藤さんが「情報が情報を呼ぶ」と話されていたが、読者がアクションを起こしたくなるような情報を提供し、そのアクションをまた取材にいき、さらなる盛り上がりや多様な広がりを生むグリーンズというメディアを知るほどに「つながり」を強く実感する。その最たるものが、植原さんが今まさに挑戦中の日本初の寄付型メディアづくりだろう。

「月額1,000円の寄付会員制度『greenz people(以下、ピープル)』を導入したのが2013年。全ての記事を無料で公開しているグリーンズのサービスを持続的に運営するため、いただいた寄付金でライターへの原稿料や取材経費などをまかなっているわけですが、結果的にグリーンズが『ほしい未来をつくる仲間たち』が集まるコミュニティであることを際立たせることになりました。現在約880名の方に参加いただき、ピープルを原資につくられた記事だけでも年間120本ほどに及びます」。

左)オフラインの“場”も重視するグリーンズの恒例イベント『green drinks Tokyo』 右)アイデアを形にするための場『グリーンズの学校』

真の地方創生とは? 資源×文化×人=仕事と暮らしをつくる

とはいえ、グリーンズではPVを一つの指標としか捉えていない。なぜなら、「読者が自分で活動を始めるか」がグリーンズにとってのKPIであるからに他ならない。植原さんが考える「地域の魅力を伝える広報」とは、バズらせることを目的とした話題性のあるコンテンツづくりではなく、本質的な価値づくりだ。

「地方創生のキモは、その地域ならではの資源と文化、そして“人”を掛け合わることで、仕事と暮らしをつくることにあるのではないでしょうか。グリーンズの記事でいうと、岐阜県郡上市の当時20代の移住者たちが立ち上げた『猪鹿庁(いのしかちょう)』が好例です。その名の通り、イノシシやシカなどから農作物被害を防ぐ『捕獲』を行う以外に、猟師育成を行う捜査一課、天然のお肉を美味しくいただくジビエ課などがあり、狩猟体験エコツアーや解体教室といったプログラムなどここでしかできない体験を通じて、観光客に郡上の魅力を伝えています」。

まだまだ紹介したい事例はあるのだが、ぜひグリーンズのライター陣が魂を込めて執筆した原稿の数々を読んで知っていただきたい。加藤さん、植原さんの話のあとには質疑応答と交流会の時間が設けられ、講師と参加者、参加者同士が交流し、つながりながら興味や知識を広げている姿が見られた。次回の「広報PRセミナー」は3月8日(木)、場所は同じく「+OURS 八重洲」で開催される。

<イベント詳細>

広報PRセミナー 第2弾「地方創生の成功事例」

日時:2018年1月30日(火)
     開会挨拶19:00~/セッション19:10~/質疑応答20:40~/交流会21:15~

場所:+OURS八重洲(プラスアワーズヤエス)
        ※+OURSで開催されるセミナーの最新情報は、+OURS のWEBサイトにてご案内しております。

主催: PR Supporters

◆加藤 倫子(かとう みちこ)
日光市観光情報発信センター/PRパーソン
週刊誌のライター事務所のアシスタントから民放キー局の報道社会部へ出向。ADから記者、ニュース番組のディレクターを経験。いじめ自殺、少年犯罪、交通量刑の改正等、生死を見つめる取材、「人」にフォーカスした企画特集制作に携わる。他、国内外のニュースのキュレーションアプリ立ち上げの際のエディター等、ニュースの世界に8年半。その後、銀行、証券、保険の業界で営業を経験。営業職時代、広報業務の依頼や友人・知人に相談をされることが多くなり、株式会社東京片岡英彦事務所でアシスタントをしながら広報・PR活動。
2014年に独立、中小企業、NPO法人等のPRを手掛ける。現在は「日光市観光情報発信センター」のPRパーソン。人の心へ伝えること、ストーリー性を持ったPRを意識している。ビジネス・インタビューライター業も。
 
◆植原 正太郎(うえはら しょうたろう)
NPO法人グリーンズ / greenz.jp コミュニティエディター
1988年仙台生まれ。親の仕事の都合で日本全国を転勤しまくる幼少期を過ごす。
大学卒業後、デジタルマーケティングのコンサルティング会社に入社。その後、2014年10月よりNPO法人グリーンズにスタッフとして参画。WEBマガジン「greenz.jp」の寄付読者制度「greenz people」を担当し、日本初の寄付型メディアづくりに挑戦中。
ライフワークとして、東京の武蔵小山で「風邪で倒れた時にお粥を届けあう」助け合いのご近所コミュニティづくりに励む。好物はチーズバーガー。

関連サイト
greenz.jp: https://greenz.jp/
+OURS : https://plus-ours.com/news/

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