|2020.03.23
日本橋・京橋をまたぐ、 骨董通りを歩こう!
photo : Koichi Tanoue text : Tomoko Ogawa
骨董通りといえば青山と思われがちだが、実はEATSに本物の“骨董通り”がある。150を超える店舗が軒を連ねる。この通りを知り尽くす、「東京アートアンティーク」実行委員会が選ぶ、骨董ビギナーにもおすすめのお店とは?
プロに導かれながら、審美眼を磨く方法。
骨董品を手に入れたくても、初心者にはなかなかハードルが高い骨董通り巡り。歴史ある古美術店は、世襲や丁稚奉公スタイルが残り、親族もしくは師弟での少人数店舗経営が多いため、品物のレベルも高く、お値段も張りがち。けれど、一級品を実際に手に入れないことには、審美眼のお勉強は始まらないもの。
今回、初心者でも入りやすい個性豊かな古美術商を紹介してくれたのは、日本橋・京橋界隈で年に一回、春に日本最大級の地域密着型アートイベント、「東京アートアンティーク~日本橋・京橋 美術まつり」を主催する、「東京アートアンティーク」実行委員会と、地域ポータルサイト「東京街人」(運営・東京建物)のみなさん。お手頃なものから高級品までを扱う店、知識や目を肥やせる店、親しみやすく相談にのってくれる良心的な店主のいる店。ドアを開け、一歩店に入ってみないとわからないことはたくさんある。
アートは一日にしてならず。審美眼だって、一日一夜では養えるはずがない。まずは、好みや嗜好が自分と合うお店を見つけてみる。そうしたら、どんなテイストのものが欲しいのかを値段も含めてコミュニケーションを取ることから始めてみよう。古美術のプロの目利きに導いてもらいながら、自分の目で見て、手に取り、自らのセンスも時間をかけて磨いていく。これこそが、美の真髄を見極める匠たちが集まる骨董通りの嗜み方であり、醍醐味なのだ。
日本古陶磁を眺めつつ、
古美術の話をしよう。
大阪で古美術店をやっていた父の店を継ぎ、東京と大阪・老松通りに店舗を持つ。日本古陶磁の中でも、献上用につくられた高級磁器・鍋島や、古九谷、柿右衛門、古伊万里、初期伊万里などの鑑賞陶器を専門に扱うギャラリー。
手広くよりは、狭く深くをモットーに、力強く、状態のいい一品ものをそろえる。品名、時代、値段が明瞭に提示されているのもうれしい。古陶磁の目利きと会話をし、手で触れることでその美しさを実感する。学ぶことで、古陶磁の魅力はもっと深まるはず。
造形美も楽しめる、
花籠、竹籠の世界を知る。
海外ではその造形美が評価され、観賞するためのオブジェクトとして人気が集まる花籠・竹籠を扱う、数少ない専門店。江戸時代の花籠から現代の竹工芸作家のものまで、タイムレスな魅力を誇るアイテムをセレクト。
〈東京国立近代美術館〉の「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」の開催に合わせ、9月13日から竹まつりを開催中。あでやかで深い味わいの鳳美竹や清涼感のある白竹の作品が展示予定。美術館と併せて竹工芸の世界が楽しめる。
大切に守られてきた書画を
また引き継いでいく。
創業100年、京都で続く書画屋・四代目の東京オフィス。専門家、研究者を多く顧客に持ち、美術展に出展することも。伊藤若冲、曽我蕭白など人気絵師の作品だけでなく、白隠慧鶴(えかく)、仙厓義梵(せんがいぎぼん)などの禅画も扱う。
カリカチュア世界大会で総合優勝したアーティストの田村大氏に制作を依頼した日本画など、時代に流されない価値のある書画を収蔵、販売している。たとえば、好みの美術展を伝えることからでも、テイストに合った一品を提案してくれる。
力強い美しさを放つ
東洋古美術のコレクション。
中国、朝鮮、日本の古陶磁を主に扱い、コレクター、美術関係者、作家に愛され続ける〈浦上蒼穹堂〉。屋号は、作家の立原正秋が命名。
店主は、学生時代に「北斎漫画」に夢中になり、以降約1,500冊のオリジナル版本を収集し、世界的なコレクターとしても知られる浦上満さん。彼の審美眼で集められた新石器時代や戦国時代、前漢時代といった歴史を生き延びた古美術が、ハッとするほどのシンプルで力強い美しさを放つ。
額装された「北斎漫画」も古陶磁とよく似合って魅力的。
古陶磁の文様に
愛らしさを見出す。
柿右衛門や古伊万里のそば猪口や器、掛け軸、屏風などの古美術を扱う。600個以上並べられた古伊万里は、素朴な風合いが美しい初期伊万里の白磁や、キュートなうさぎ、猫、馬など人気の動物モチーフまでさまざまな文様で、眺めているだけで楽しい。
花からくさは、器に描かれる植物の文様のこと。デザインも形も多様なそば猪口は、手に持つとなんともかわいらしく、江戸中期以降の品にはお手頃価格のものも。手に触れる感覚も大切にしながら、お持ち帰りしたい一つを探してみて。
個性的で愛嬌のある
骨董品と巡り合う。
〈ロンドンギャラリー〉勤務を経て独立し、六本木で27年営業したのち、2009年に日本橋に移動。店内には、中国・韓国・日本の陶磁器を中心に、「お客様のニーズに応えてどんなものでも探し出す」という目利き・田附宏一さんがセレクトした古美術品がズラリと並ぶ。
宋赤絵の人形に、オランダの花瓶、大ぶりの縄文土器まで。どこかかわいらしく、個性的な面持ちの古美術でにぎわう店内に一歩足を踏み入れれば、想像もしていなかったワクワク感と、運命の出合いが待っている。
※Hanako SPECIAL ISSUE 「東京イーストエリアマガジン」(2019年10月発行)より転載