〈さんかする〉イベント詳細
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|2018.11.08

板橋廣美展 ―重力内無重力―[LIXILギャラリー]


2018年11月6日(火)~2019年1月15日(火)の期間、「板橋廣美展 ―重力内無重力―」を開催します。

「重力内無重力」とは板橋氏独自の造形技法をしめす言葉です。釉薬をシャモット(粘土を焼成して粉砕したもの)の中に埋めて焼成すると、宙空で造形するような作品になり、危うさを孕んだ存在感を放ちます。また板橋氏は水をかたどった楕円形や円形の白磁のオブジェ作品にも定評があります。今展ではシャモットによるインスタレーション「寂」と、内部の空気を感じさせるゆるやかな曲線の白磁のオブジェなど約20点を展示する予定です。


<開催概要>

会期: 2018年11月6日(火)~2019年1月15日(火)

休館日: 水曜、11/25、12/28~1/4

開館時間: 10:00~18:00

会場: LIXIL ギャラリー

入場: 無料

アーティスト・トーク:
 日時: 2018年11月10日(土)18:00~18:30
 場所: LIXILギャラリー
 申込: 不要です。直接会場にお越しください。

企画制作: 株式会社LIXIL

WEBサイト: http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g3-11/

「板橋廣美展 ―重力内無重力―」に寄せて

陶の造形作家・板橋廣美の創作する作品はじつに幅広い。それは、造形のみならず技法に於いても然りである。しかし、その多様な作品の枝葉を辿っていくと、およそ次の2点に絞られる。それは白い磁器とシャモット。この2点が、板橋の創作を支える二大要素であり、この二大要素によって今日までの創作活動が展開されていると言ってもいいだろう。

板橋は日大法学部を卒業後、3年ほど板前の仕事に就き、原宿の画廊で陶芸家・伊藤慶二の作品を見て、伊藤が講師を務める多治見市陶磁器意匠研究所に入所した。そこで、陶芸の基礎とデザインを2年間学び、さらに2年間、伊藤の弟子として毎日工房へ通った。そして、1980年三鷹に帰郷、陶芸家として作陶を続けるが、そのうち三鷹で多治見で学んだやきものを作ることに違和感を感じるようになったという。「自分は一体どこにいるのか」「やきものとは何か」ということを考え始めた時、陶芸家の鯉江良二の作品から「焼いて残るもの」ということを学んだ。そこから「ただ土を焼き固めることがやきものではなく、作品として完成に辿り着くまでの段取りやシステム、そういうプロセスがやきものの醍醐味」という板橋の発想が生まれ、「新しい作り方をすると必ず新しいものが生まれるのです。過去に作られた良い作品はすでに存在しているので、それを目指して作るというよりも、別の視点からそれを超えるような新しい作品を作りたいと思っていました」という板橋の挑戦が始まった。

1977年、板橋は朝日陶芸展に風船から石膏型を取った鋳込みによる無釉白磁のオブジェを出品、朝日陶芸賞を受賞した。以後、白くデリケートな磁土の感触とゆるやかな曲線を描くフォルムをもつオブジェ作品を展開するが、のちの水をかたどった白磁作品なども、基本的にはその延長線上にある。本展には、内部からの空気を感じる二つの楕円作品「界」や円形作品が展示される。

また90年中頃から、粘土を焼成して粉砕したシャモット(焼粉)と呼ばれる素材に注目し、釉を骨格としてシャモット粒を焼成させていく、宙空(ちゅうくう)での造形に成功する。この技法は、これまでの陶の領域にはなかった、宙空でしかできない形の表現である。サブタイトルにある「重力内無重力」の造形技法が、それである。本展には、直方体の土(シャモット)の上に銅板を置いて焼いたという20パーツからなる作品「寂」が展示される。このシャモットによる作品は、白い磁器作品のように見た目に美しいものではないが、存在の根源を問う作品として評価されるべきであろう。

板橋は、「凹んでいるものは、みな器である。そう考えるとすごく楽になった」と語る。それは、既成概念から心を開放し自由になることであり、同時に、目には見えないやきものの本質を表現することでもある。

森 孝 一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)

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