〈みるきくしる〉美を愉しむ/地元の古美術・画廊巡り
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|2016.04.26

伊藤若冲「芭蕉叭々鳥図」

今なお高い人気、「奇想の画家」伊藤若冲を紐解く

江戸時代、京都で活躍した日本画家、伊藤若冲。既存の概念にとらわれず、写実と想像の融合や、斬新な画法や素材を取り入れるなど、同じ江戸時代の画家、曾我蕭白、長沢芦雪と共に「奇想の画家」と称され、高い評価を受けています。2016年は生誕300年を記念し、東京都美術館にて「若冲展」が行われるなど、さらなる注目を集める若冲。実際にどんな絵師だったのか。加島美術・代表取締役社長の加島林衛さんに伺いました。
 

──はじめに、伊藤若冲について教えてください。

若冲は生きている時からもちろん人気のある絵師でした。近年の再評価という点では、2000年に京都国立博物館で没後200年を記念した展覧会が開かれたことをきっかけに、人気ミュージシャンのミュージックビデオに作品が使われたり、日本で爆発的なブームが巻き起こりました。今や葛飾北斎や喜多川歌麿をもしのぐ人気ぶりで、国内海外問わず高い評価を受けている画家と言えるでしょう。

若冲が活躍したのは江戸後期の京都。当時は、幕府のお抱え絵師として日本絵画史上最大の画派と称される狩野派や、公家に寵愛される土佐派など、さまざまな流派がありました。そこに新たな旋風を巻き起こしたのが若冲です。

それらの流派と若冲の大きな違いは、既存概念にとらわれず、新しい素材を用い、新しい筆法などを生み出し、新たな世界観を表現したことです。精緻な描写と躍動感のある大胆な構図、彩色も彼独自の手法がみられます。また若冲は京都錦小路の青物問屋の長男という出自。豊富な財力をもって南蛮渡来の高価な藍色の絵の具を使ったり、西陣織の旦那衆との交流などから上質な絵絹も手に入ったようです。それらの要素があわさり、誰もが驚く斬新な絵を残すことができました。

──幕府や公家の絵師との違いは、立場的なものもあったのでしょうか?

幕府の狩野派、公家の土佐派などの絵師は、自分の個性を極め貫くのではなく、注文にあわせ、その流派に求められる決まった描き方、構図、画題を描いていました。

若冲はそうした組織に属していないため、束縛がありません。自由に筆を走らせ、たとえそれが既成の日本画手法を逸脱し、古い体制から眉をひそめられようが、そんなことは自分にはいっさい関係ない、と。常にイノベーションを起こすのが自身の本懐であるというような生き方でした。

──活動当初から独自の世界観を構築していた画家でしたか?

若冲にも手法やタッチの変遷はあります。ただ、「動植綵絵」シリーズを描き出した頃から、独自の世界を切り開いていきました。こうした描き方をしている画家は他にはいません。

長崎派の画家、鶴亭と交流があり、着色などにいくつか共通点がみられますが、若冲の場合、そこからさらに独自の世界を築いたことが特徴です。それまでの画家が成し得ていないオリジナリティ、付加価値を加え、自身の世界をつくったことは間違いありません。

若冲の技術と発想が楽しめる「芭蕉叭々鳥図」と、渡邊省亭との類似点

伊藤若冲「芭蕉叭々鳥図」
本紙105×29/全体189×41 紙本 水墨
¥3,800,000(税抜)

伊藤若冲「芭蕉叭々鳥図」部分図

──今回ご紹介いただく作品について教えてください。

「芭蕉叭々鳥図」、若冲50歳代の作品と考えられます。黒い鳥はカラスではなく、中国の叭々鳥(ハハチョウ)。中国の絵画文化も取り入れていた若冲らしさを持つと同時に、遊び心やリズムをつけたデザイン性が高い作品です。

技法としての特徴は、芭蕉の葉に若冲特有の「筋目描き」が用いられていること。これは若冲の技術の高さが可能にした技法です。

また、親鳥と小鳥の対比に愛嬌があり、現代の私たちが見ても思わずにっこりしてしまうユーモアがありますね。実際は芭蕉に叭々鳥がとまることはありませんが、想像からデザインし、おもしろさを演出している。インスピレーションを働かせて想像を融合させる感性が優れています。

──次回は渡邊省亭もご紹介いただきますが、二人に類似点はありますか。

伊藤若冲と渡邊省亭は、時代や育った境遇も違うし、関係性はありません。ただ、二人ともどこの流派や組織にも属さず、自身の貫きたい画道を貫き、豊かな想像力を駆使しながら可能性を求め、具現化するように絵を生み出していた。そんな姿勢が非常に類似していると考えます。

また国内での人気や価値認識が今ほどではなかったとき、海外のコレクターたちにより積極的に収集され、逆輸入のような形で国内で人気と価値が高まったのが若冲です。同じ流れを省亭がたどりつつあります。ふたりの画家にあらためて注目してほしいですね。

間近で作品の息吹を感じられるのがギャラリー

一階は広々とした打放しコンクリートのモダンな展示空間が広がる。

──加島美術はどういった点にこだわって運営していますか?

「ギャラリーとしての敷居を下げる」というのが加島美術のポリシーです。入口の構造も、中が見やすく、入りやすい設計を取り入れています。

また、たとえば若冲展ともなれば、美術館には長蛇の列ができ、ガラス越しに鑑賞することになります。そうではなく、本当に間近で作品の息吹が感じられる。作品の保護という点で危惧もありますが、やはり民間のギャラリーですので美術館とは違う距離感で、筆使いなど臨場感を味わってほしいと思いますね。ぜひ本物の魅力に触れてください。

ちょうど江戸時代~現代の名品およそ430点を集めた「美祭 -BISAI-」という展示販売イベントが4/23(土)~5/5(木)にございます。今回ご紹介した若冲のほか、葛飾北斎や竹久夢二など、著名な作家の作品を間近にご覧いただけます。お気軽に足をお運びいただければと思います。

──美術品に対する加島社長の考えや想いを教えてください。

絵のある暮らしは、欧米諸国では一般のご家庭にも浸透しておりますが、まだまだ日本では浸透しているとは言えず、加島美術としてその魅力を提唱しております。

とりわけ、お子様をお持ちの方は、胎教や情操教育にも効果があることを知っていただきたいですね。発育する上でもっとも重要な時期に、芸術作品が人間性や教養、豊かな人格形成にいかに影響を与えるか。皆さまに広く認識していただければと願っています。

    代表取締役社長の加島林衛さん

    レトロモダンな建物が印象的な加島美術外観

INFORMATION

「美祭‐BISAI‐」

開催期間
2016.4.23(土)~2016.5.5(木・祝)
営業時間
10:00~18:00 ※会期中は無休
出展作家(一部)
伊藤若冲・曾我蕭白・円山應挙・長澤蘆雪・池大雅・与謝蕪村・酒井抱一・鈴木其一・河鍋暁斎・慈雲尊者・仙厓義梵・棟方志功・横山大観・竹内栖鳳・上村松園・川合玉堂・小倉遊亀・平山郁夫
Webサイト
http://www.kashima-arts.co.jp/events/index.html

加島美術

住所
東京都中央区京橋3-3-2
電話番号
03-3276-0700
営業時間
平日・土曜: 10:00〜18:00
定休日
日曜・祝日
Webサイト
http://www.kashima-arts.co.jp/
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