《京橋映画小劇場》第34回企画として、日本の優れたドキュメンタリー映画監督の歩みを回顧する特集を開催します。
今回は、1950年代から現在まで、幅広い対象を粘り強くとらえ続け、日本の社会や文化に新たな視座を提供している
羽田澄子監督を取り上げます。
本特集は、羽田監督のデビュー作から最新作まで、計26作品を18プログラムに組んで上映し、その足跡をたどる格好
の機会となります。ぜひご来場ください。
解説:
羽田監督は1926年大連に生まれ。1949年、羽仁説子の薦めで岩波書店内の中谷宇吉郎研究室に入り、1953年、羽田は羽仁進の誘いで映画製作に転身し、羽仁の監督した『教室の子供たち』(1954年)などに助監督として就いた後、1957年、農村の婦人たちがグループ学習を行う様子を追った『村の婦人学級』で監督デビューします。
以後、岩波映画で1982年に定年退職するまで、数多くのPR映画・教育映画・科学映画の演出・脚本・構成・編集を手がけました。
その一方で羽田は、1977年、夫でプロデューサーである工藤充と共に初の自主映画『薄墨の桜』を完成させ、岩波ホールで行われた上映会が成功したことをきっかけに、記録映画作家として新たな道を切り拓いていきます。
1981年に工藤が自由工房を設立して以降は、岩手県北上山地の麓で継承されている山伏神楽を追った大作『早池峰の賦』(1982年)や、認知症高齢者の日常を追った先駆的なドキュメタリー『痴呆性老人の世界』(1986年、企画製作は岩波映画)、十三代目片岡仁左衛門の最晩年の至芸をゆったりと捉えた『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』六部作(1992-94年)などの話題作を次々に発表します。
近年は、自身のルーツを見つめ直すかのように、旧満洲地域への旅を自身の語りと共に記録しています。羽田の一見オーソドックスに見える記録映画は、さまざまな技法的実験や工夫に満ち、また、対象との真摯で妥協しない交わりを基にした、芯の通った演出によって貫かれています。その歩みは、日本のドキュメンタリー映画に豊かで大きな実りをもたらしてきました。
上演作品詳細(一部):
●村の婦人学級(25分・16mm・白黒)
1957(企画)文部省(製作)岩波映画(監・脚)羽田澄子(製)小口禎三(撮)小村静夫(録)櫻井善一郎
4年間の助監督生活を経た羽田の初演出作品。滋賀県の農村を舞台に、これまで因習によって家庭の中で発言する機会を持たなかった婦人たちが一所に集い、学校教育とつながることで子どもたちをより深く理解するとともに、新時代の考え方にも目覚めてゆく。撮影にあたっては、時間をかけて地元の人々の理解を得、映画作りと並行して婦人学級も組織化されたという。
●薄墨の桜(42分・16mm・カラー)
1977(監・脚)羽田澄子(製)工藤充(撮)西尾清、瀨川順一、若林洋光(録)片山幹男(ギター演奏)岩崎光治(解)香椎くに子
羽田が岩波映画に在籍しながら4年をかけて撮った、記念すべき自主製作作品。岐阜県根尾村(現在は本巣市根尾谷)に立つ樹齢1400年の桜に魅せられた羽田は、『法隆寺献納宝物』と同様に妹・近藤矩子に詩を書いてもらって映画を撮るつもりだったが、近藤は1972年に早逝。だがそれをきっかけとして羽田は、自分の作りたい映画を作る必要性に駆られ、本作で自主記録映画作家としての第一歩を踏み出すことになる。
会期: 2016年8月9日(火)~2016年8月28日(日)
作品リスト: http://www.momat.go.jp/fc/exhibition/kyobashi-za34/#section1-2
スケジュール: http://www.momat.go.jp/fc/exhibition/kyobashi-za34/#section1-3
会場: 小ホール
定員: 151名(各回入替制)
料金: 一般520円/高校・大学生・シニア310円/小・中学生100円/
障害者(付添者は原則1名まで)、キャンパスメンバーズは無料
ご注意: 各回の開映後の入場はできません
発券: 地下1階受付
・観覧券は当日・当該回のみ有効です。
・発券・開場は開映の30分前から行い、定員に達し次第締切ります。
・学生、シニア(65歳以上)、障害者、キャンパスメンバーズの方は、証明できるものをご提示ください。
・発券は各回1名につき1枚のみです。