八重洲・日本橋・京橋に店を構える老舗の旦那に、さまざまな食物の『旬の味』を教えていただくシリーズ。今回お話を伺ったのは、「四季料理 いけ増 日本橋店」の営業部長・喜多高廣さん。夏場から秋口にかけて旬を迎える秋刀魚と鯖について語っていただきました。
秋刀魚は、8月のお盆あたりから脂がのった身が市場に出回ります。実は秋ではなく残暑の時期がもっともおいしいので、暑い時期の食欲増進にも最適なんですよ。
「四季料理 いけ増 日本橋店」では、新鮮な魚にこだわり、素材を活かした調理法を用いながら旬に限定してご提供しているため、秋刀魚をお楽しみいただけるのは8月中旬から9月にかけて。昨今の水温上昇の影響から、現在ではロシア寄りの北海道沖でとれる秋刀魚が一番安定しており、当店では同地域で漁獲された中でも優良品種、かつ最短で市場に出回る秋刀魚をお出ししています。
人気が高いのは「塩焼き」。脂がのった旬の旨みをあますところなく味わえる塩焼きは、長年にわたって根強い人気を誇りますね。ランチとディナーで焼き上げ方をアレンジしており、仕事中のオフィスワーカーの方が多くご来店されるランチには身をまっすぐに焼き上げ食べやすくし、ゆっくりとお召し上がりいただくディナーには焼串をクロスさせて刺し、踊るような姿に焼き上げることで目でも楽しめるようご提供しています。
「塩焼き」と並んで人気なのが「刺身」です。当店の新鮮な秋刀魚を存分に堪能いただける一品だと自負しています。しょうがとあわせてご賞味いただくと、甘みと深みがありながらもさっぱりとした秋刀魚がさらに食べやすく、後味のよさに気づいていただけますよ。
ご家庭で調理される場合、よい秋刀魚を見分けるポイントは、口が黄色く、身がまん丸と太っていること。下処理の際に使用する包丁は、よく切れることが重要です。できれば、プロの調理人が用いる柳刃包丁をつかい、根本から刃先にかけてスッスッと引くように切ると身を壊すことなく綺麗に仕上がりますよ。また、当日購入したものは当日中に食べることが基本です。
三浦湾の松輪漁港で獲れるブランド鯖「松輪の鯖」をはじめ、品質が安定し、大トロのような味を堪能できる品種にこだわり、仕入れを行っている鯖は、7月後半から9月いっぱいを目安に店頭にてお楽しみいただけます。
鯖は、鮮度を重視することはもちろんですが、足の速い魚種のためすばやく内臓を取りだし下処理を施すことがなにより大事です。〆鯖は、その時々の状態(脂の乗りや魚体の大きさ)に合わせ、お塩とお酢でしめ、適正時間寝かせることで、鯖ならではの旨みを引き出し美味しくお召し上がりいただけるようになります。
先程も話に出ましたが、鯖は鮮度が落ちるのが早い魚です。スーパーや魚屋などで切り身を買う際は、身に弾力があり、切り口が鮮やかなものを選んでください。身の色がくすんでいたり、トレイに血が出ているものは避けましょう。秋刀魚同様、購入したものは当日中に食べることも大事ですね。
「四季料理 いけ増 日本橋店」では、1ヶ月半~2ヶ月ごと、年8回メニューが変わり、常時11~12品ご用意している季節メニューと、年間通して安定した味覚が味わえる鮪などの定番メニューの二本立てで営業しています。
常連のお客様を中心に「あそこに行けば旬の美味しいものがある」とご信頼いただき、ご来店いただけることは、本当にありがたいことだと実感しています。
当店を創業した初代が、「気軽に足を運びお楽しみいただくため、値段を抑えめにし、その価格を変えない」との強い意志で切り盛りしてきたこともあり、昭和23年の創業以来、今でも変わらずその姿勢を守っています。世界的に和食が脚光を浴びる中で、ますます幅広いお客様にご愛顧いただいており、そのご期待にそえるよう鋭意努力していく所存です。ぜひお気軽に足をお運びいただきたいですね。