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〈はたらく〉 イノベーションの舞台
FRONT of TOKYO

|2018.10.01

全国津々浦々にいる未来の仲間と「つながる」異業種交流会

「ニッポンのモノヅクリとスグレモノ」をテーマに、首都圏を中心に7店舗の小売店を構える株式会社日本百貨店。同社にとって初の飲食店「日本百貨店さかば」が、東京駅八重洲南口の街にオープンしてから約5カ月が経つが、月に一度、溢れんばかりの熱気に包まれる夜があるという。イベントの名は、「日本百貨店さかば〈つながる〉」。
食品業界を中心に話題を集める異業種交流会だ。真相を探るべく、9月12日(水)、噂の現場へと足を向けた――。

モノヅクリの現場と使い手をつなげる「日本百貨店」が仕掛ける新たな場

「日本のモノヅクリの百貨店」として、「作り手」と「使い手」をつなぎ「モノヅクリの現場にお金を回す」ことを目標に掲げる「日本百貨店」。2010年の創業来初めてとなる飲食業態出店の地に選んだのは、八重洲南口エリアに位置する複合ビル「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」の地下1階にある飲食店街「グランアージュ」だ。

個性的な店舗が並ぶ中でも、お目当ての「日本百貨店さかば」はどこか懐かしく温かみのある空間。首都圏に販路を広げたい香川県丸亀市、静岡県加茂郡西伊豆町ふたつの自治体と、首都圏を中心に販路を持つ日本百貨店がタッグを組んだ“一企業二自治体”の広域連携事業によって運営されている。

最大の魅力は、丸亀市と西伊豆町の食材を中心に、日本百貨店が選りすぐった「まだ知られていない全国のスグレモノ」をコラボレーションさせたメニュー。さらに、広域連携の施策として、共に商品を企画したり、互いの販路を共有したりなど、様々な相乗効果も生んでいる。

実は、「日本百貨店さかば」がハブ機能を果たす本事業に関心を寄せる自治体は他にもあった。しかし、助成金を使って運営する以上、域外の商品を取り扱うことに彼らが難色を示すのは無理もない。「でもその方が楽しいから」と株式会社日本百貨店代表取締役の鈴木正晴さんはあっけらかんと言ってのける。「お客さんの立場になって考えても、あの日本百貨店の酒場といったら『全国のものが食べられる!』と期待されるだろうし、巡り巡って自分たちのメリットにつながるはずなんです」。

丸亀市、西伊豆町の両担当者の相性の良さも鈴木さんは見抜いていた。「おふたりに共通するのは、漠然と地域全体を押し出すやり方ではなく、心底惚れ込んだ商品があり、それを本気でおすすめしたいという姿勢。熱い想いに僕らがいつの間にか巻き込まれていて、気づいたら『彼らのために一役買おう!』と一緒に頑張っている」。出会いからエネルギーが生まれ、多くのヒト・モノ・コトを引き寄せる。「熱意のある場所には力が宿る」というのが鈴木さんの考え方だ。

日本百貨店代表の鈴木正晴さん
月の半分は地方を駆け回り、全国にある取引先を訪問、作り手と使い手をつなぐ

感動や共感がつなぐ新たな仲間

「日本百貨店さかば〈つながる〉」(以下〈つながる〉)は、毎月第2水曜日に開催される異業種交流会。全国の自治体、地域商社、メーカー、バイヤー、それに、お店や参加者を応援する人たちが、新たな交流を求めて集う。

「〈つながる〉は、日本百貨店の「仲間」たちを紹介して“つなげる”場なんです。物販も居酒屋も考え方は同じ。地域の作り手がやって来て、使い手に直接プレゼンした方が感動や共感がより深まる。そこからコミュニケーションが生まれて、地域活性化の切り札になればなおいいですが、仲間たちの集まりなんだから楽しいのが一番ですよね」(鈴木さん)。

他では出会えない交流を求め集う日本百貨店の「仲間」たち。全国の「スグレモノ」食材を使ったメニューも楽しみのひとつ

「楽しさ」は店内を見れば一目瞭然だ。鈴木さんはひっきりなしに訪れる来店客の対応に追われながら、会場を回ってはマッチングできそうな仲間同士に声がけして、参加者たちをどんどんつなげていく。初対面の垣根を一瞬にして取り払ってしまう鈴木さんがつくり出す明るい空気感のせいか、まだ酔いもまわらぬうちから話に花を咲かせる参加者たちは、傍からは気心の知れた昔馴染みのようにみえる。実際に、「前回盛り上がった業者さんとこの場で再会し、商談につながった」「日本百貨店が何かやるならば来ないと損だと思って毎回来ている」「食事がどれも美味しいから話が弾む」などの声が聞かれた。

参加費用は、客もプレゼン企業も一律5,000円。第1回は、42社96人が参加。2回目は、51社88人、3回目は台風の影響があってキャンセルこそ出たがそれでも58人が参加した。4 回目となる今回は、54社91名の参加となった。
イベントのテーマ、プレゼンターの選定は、基本的に鈴木さんが行う。「皆さんが目的を持って参加している。熱意ある仲間たちが集うからこそ、影響力のあるプレゼンターに登壇していただくことにしています」。

日本橋に支店がある企業「アルファー食品」のプレゼン
『アルファ化米』のおいしい食べ方


この日のプレゼン企業は16社。そのうちの1社で、島根県出雲市に本社を置くアルファー食品株式会社は、1970年代に東京に進出し、現在は日本橋堀留町に東京支店を構える企業。日本百貨店と取り引きがあった関係で、〈つながる〉には第1回から参加している。
洗米やつけ置きが不要なうえ、早く簡単に炊くことができ、長期保存も可能な『アルファ化米』は、業界においてトップシェアを誇り、給食用・業務用・備蓄用・家庭用と幅広い用途の商品を展開するアルファー食品だが、広く一般消費者に馴染みのある商材ではないため、近年、自治体・企業・家庭などに向けた備蓄食のPRを本格化させている。

同社営業本部営業2部部長の町田光司さんは、〈つながる〉について「店舗での試食販売は通常、もともと興味がある方へのご案内に留まるケースが多いですが、ここでは、不特定多数の方に向けてプレゼンができます。今日もキッチンをお借りして『アルファ化米』を使ったメニューを作らせていただきましたが、例えば、『出汁』を持ち込まれる企業がいたら、即興で“『アルファ化米』を出汁で調理したメニュー”を作って試食してもらう、といったこともできるかもしれません」と期待を込める。

アルファー食品の調理風景。『安心米』のパックの中で、簡単にメニューができあがる

「被災時に食べ慣れないものを食べるのはストレスになります。そこで弊社では、備蓄食を日常的に消費しながら備蓄する『ローリングストック法』を推奨しています。『気が付いたら備蓄食の賞味期限が過ぎていて廃棄した』という経験がある人は多いのではないでしょうか。賞味期限前に、備蓄食を食べる日を設けることで、いざというときにも普段と同じものが食べられる環境を準備しておくことになります」。

『ローリングストック法』の実践例として今回同社が提案したのは、アルファー食品の『安心米』をカゴメ食品の5年間の長期保存が可能な野菜ジュース『野菜一日これ一本』で味付けし、明治屋の『おいしい缶詰』シリーズのソーセージをトッピングした『備蓄食のパエリア風』、同じく明治屋の焼き鯖のマリネを使った『ブラウンライスサラダ』、『かぼちゃのドリア』など。いずれも備蓄食の概念を刷新するような、彩り豊かで味わい深いメニューで、参加者たちの関心を引いていた。

左)アルファー食品のプレゼン。新しい備蓄法『ローリングストック法』が紹介される 
右)『安心米』の彩り豊かなメニュー

特に評判なのが『備蓄食のパエリア風』。トマトの旨味が効いているだけでなく「野菜が豊富にとれ健康志向にも合致する」ことが評価され、一般社団法人防災安全協会が選ぶ『災害食大賞(c)2018 うまみ部門』で銀賞の受賞もしている。前回のプレゼンでは、都内のとあるタワーマンションの理事会関係者とつながり、マンションの防災備蓄用品として実際に受注に至ったほか、大手企業が運営するネットショップなど新たな販路も広がった。

会場は時間いっぱいまで盛り上がっていた

明日を切り開く高揚感。「仲間」たちがつなぐ夜の熱気は本物だった

取材を終えて帰るとき、鈴木さんに「また飲みにおいでよ!」と声をかけられた。この先何か面白いことが起こりそうな予感。おそらく他の参加者も鈴木さんの笑顔に引き寄せられ、何度も訪れるうちに、自分自身と仲間との化学反応を感じているに違いない。次回〈つながる〉の開催、10月10日(水)が待ち遠しい。

<次回開催情報>
第5回 「日本百貨店さかば〈つながる〉」  
日時:2018年 10月10日(水) 18時~21時
定員:100名
参加費:5,000円(税込)
申込:※要事前申込。
   info@nippon-dept.jp 
        上記Eメールアドレス宛にご連絡ください 

<イベント詳細>
第4回 「日本百貨店さかば〈つながる〉」
日時:2018年9月12日(水)18時~21時
場所:千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内 B1階 GranAge(グランアージュ)
主催:日本百貨店さかば

関連サイト
日本百貨店さかば facebook: https://www.facebook.com/nippondeptsakaba/

 

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