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〈はたらく〉 イノベーションの舞台
FRONT of TOKYO

|2021.05.18

大好きなコスメで日本と中国をつなぐ、China Cosmetic Labに注目

20代の女性メンバーが中心となり、中国化粧品市場や中国コスメにまつわる情報を収集、発信しているChina Cosmetic Lab。東日本橋にオフィスを構える一般社団法人日本美粧協会を母体として設立された経緯や、こうしたサービスをコミュニティを基点に行う意味とは? 所長の古郡優さん、メンバーの臼井杏奈さん、あみさんにお話を聞いた。

 
実は日本であまり得られない! 中国化粧品市場の情報を提供
 
2020年4月に誕生したChina Cosmetic Lab。設立のきっかけとなったのは、日本の化粧品ブランドの中国展開をサポートする日本美粧協会が、その活動の中で持った、ある課題意識だった。

左)所長の古郡優さん。もともとはPRの仕事をしており、中国化粧品市場に可能性を感じて、China Cosmetic Labを立ち上げた
右)中国の文化やコスメに対する深い知識を買われて古郡さんにスカウトされたメンバーが大半。中国にルーツを持つメンバーも多い

「日本美粧協会は、日本の化粧品ブランドが中国展開をする際の戦略立案、市場調査、認可を取るためのお手伝いなどを幅広く行っています。その中で感じたのが、中国展開をしたいというブランドの担当者でさえ、中国の化粧品市場の“今”をあまりご存じないということ。たとえば中国では、扱うアプリや主要なSNSプラットフォームも日本と異なるのですが、それを知らないことによって、共通言語を見つけられずにいる。日本にいると、誰かが抽出した情報や、一部を切り取られたような情報しか入ってこないんですね。もっとオープンに、中国の化粧品市場の情報を提供できないかなと思い、China Cosmetic Labの設立に至りました」(古郡さん)。

左)China Cosmetic Labのアカウント名でnoteで公開されている記事の一例
右)ライターの臼井杏奈さん。美容業界紙「WWD BEAUTY」の記者として、中国市場をまとめる特集を担当したことで中国コスメに興味を持ったそう。現地のSNSやメディアはくまなくチェックし、最新トレンドを把握。左写真の記事も臼井さんが担当

現在、アクティブに活動しているChina Cosmetic Labのメンバーは7人。noteやTwitterでの情報発信、イベントの開催、各コミュニティや企業が行う中国ビジネスセミナーへの登壇などが主な活動内容だ。ライターの臼井杏奈さんはnoteでの記事の執筆を担当している。
 
「メンバーそれぞれに得意分野があるので、個性を生かした記事を担当しています。私はコスメのトレンドや化粧品市場について書くことが多いです。SNSの利用が制限されている中国ですが、インスタグラムに似たSNSがあるので、そこで新しいコスメの情報を集めたり、どういうトレンドが起きているかを調べたり。ビジネス寄りの情報は、現地の中国語のメディアを見たりもします。地道に情報収集をして、できるだけわかりやすく伝えるように心がけています」(臼井さん)。
 
大学生のインターンであるあみさんは、もう1つの情報発信手段であるTwitterを担当し、日々最新情報を更新中。
 
「noteではじっくり読める記事、ビジネス向けの記事が多いのですが、Twitterは文字数制限もあるので、最新トレンドや消費者向けの情報を中心に更新しています。写真も効果的に使い、ツイートされた後をイメージしながら作成します。クイズ形式にするとフォロワーの方が答えてくれたり、コメントをくれることも。一方的に情報を押し付けるのではなく、双方向のやりとりを大切にしています」(あみさん)。
 

企業はもちろん、消費者の女の子にも中国コスメを身近に感じてほしい
 
ちなみに、これまでにいわゆる「バズった」記事や情報はあるのだろうか。

左)インターンのあみさんはTwitterの更新を担当。かつて上海に約15年間住んでおり、日本での中国のイメージがアップするような情報発信ができればと活動に参加したそう
右)あみさんが発信する「#ラボの中国メイク用語」では、中国発ソーシャルECアプリ「小紅書」で流行中のメイク用語をわかりやすく解説

「日本では『地雷ライン』と言われる、下まぶたの目尻にアイラインを引くことで、目を大きく見せるメイク法を紹介した時はバズりました。中国ではそのラインをアイシャドウで引いてナチュラルに見せたりと、アプローチの仕方が全然違うんです。また中国では、黒いアイラインや濃い赤のリップなど、メイクで自立した女性像やかっこよさを表現することが多く、それが日本の女の子からも支持を集めている気がします」(あみさん)。

noteやTwitterでの情報発信もイベントも「中国化粧品市場に関するものなら何でもOK」というのが、全体の方針だと言う。そこに込められているのは、China Cosmetic Labが果たすべき役割と参加するメンバーたちの思いだ。

どんな記事をあげるか、メンバーでブレストを行うことも。担当者が書きたいテーマから優先的にまとめることが多く、自由度が高いそう

「BtoBでありBtoCでもあるメディアなので、中国コスメ企業の決算書を読み解いた業界レポートがあれば、このコスメの広告に人気のアイドルが起用されたといったエンタメ情報もあっていい。中国の今の温度感が伝わる情報なら、どんなものでもいいと思っています。大切にしているのは、堅苦しくなりすぎずに、できるだけコスメは楽しく、おもしろく、かわいいものがたくさんあるのだといういいイメージを、友達に教えるように親しみやすく伝えること。私たちChina Cosmetic Labが、中国化粧品の情報を日本に届けることで、企業はもちろん、消費者にも中国を身近に感じてほしいという思いがあります。中国と日本の化粧品市場の架け橋になれればと…! 中国では、日本女性のように毎日化粧をする女性は多くなく、これからの化粧品市場のポテンシャルがまだまだある。その可能性を少しずつ知ってもらえたらいいなと思いますね」(古郡さん)。


実際に試せる「中国コスメバー」。日本橋近辺でのイベントを実現させたい!
 
この1年間はコロナ禍でリアルのイベントができず、Twitterライブでオンラインイベントを開催したことも。

Twitterライブの様子。「中国アイドルの商業価値に迫る!」というテーマで、コスメのアンバサダーを務めることも多い中国アイドルについて語り尽くすイベントを

「中国で流行っているメイクを実際に試したり、中国のショッピングアプリのセール中にライブコマースを同時実況したり。文章では伝えにくいことをTwitterライブでは取り上げています。これはこれでもちろん楽しいのですが…やはりオフラインのイベントを早くやりたい。当初は中国コスメを実際に触って試せる『中国コスメバー』を東日本橋の日本美粧協会のオフィスでできればと思っていたんです。今後、社団法人ではできない営利目的の活動も幅広くできればと、運営元が日本美粧協会から株式会社に移行するのですが、日本の中心地である日本橋近辺でのイベントは、ぜひいつか実現させたいです」(古郡さん)。
 
お話を聞いていて感じるのは、彼女たちのエネルギーの強さ。大好きなコスメを媒介にした交流はとても純粋で、軽やかに国境を飛び越えてしまう。China Cosmetic Labのこの先の活躍に期待を抱かずにはいられない。
 
「コロナが落ち着いたら中国に足を運んで、実際の店舗を見て回りたい。中国では香水も盛り上がっているのですが、香りは実際に試してみないとわからないですからね。中国コスメを爆買いして、それを日本に持ち帰ってまた新たな情報を発信したいです。現地で動画をまわして、配信するのもおもしろそう。やりたいことはたくさんあるので、これから少しずつ実現できたらいいですね」(臼井さん)。
 
「最近では、次々と誕生する中国コスメブランド側からご相談をいただくケースも増えてきています。日本での中国コスメの人気の高まりを受けて、日本へ進出を検討している企業の存在は、私たちの活動が着実に実を結んできたことの証かもしれないと思うとうれしいですし、日本企業と中国企業どちらのリクエストにも可能な限りお応えしていきたいです」
(古郡さん)。
 
関連サイト
China Cosmetic Lab noteURL: https://note.com/china_cosmetic
Twitter: https://twitter.com/chinacosmelab(@chinacosmelab)
Facebook: https://www.facebook.com/chinacosmelab
 
執筆:野々山幸(TAPE)、撮影:名和真紀子

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