オフィス街でありながらも、歴史ある老舗をはじめ、美術館や複合ビルなど、さまざまな表情をみせる京橋。そんな進化をつづける街、京橋で、街に呼応するようにあらゆる顔で楽しませ、アップデートしながら人々の心をつかむ老舗店「レストラン サカキ」が注目を集めています。昼と夜で異なる料理を提供する「レストラン サカキ」の秘密を紐解きます。
昭和26年創業、同地で3代つづいた老舗洋食店の4代目として、「レストラン サカキ」で腕をふるうご主人の榊原さん。食べることが大好きで、幼少期から自宅のキッチンに立ち、料理を楽しんでいたそう。
近隣に住まう常連客が中心だった同店の未来をイメージしたとき、「近隣のお客様をたいせつにしながら、“京橋に足を運んでまで食べたい”と思っていただけるお客様も増やしたい」との想いが芽生え、辻調理師専門学校フランス校を卒業後、四谷の老舗フレンチ「北島亭」で修行。その後、渡仏して南フランスを中心に修行を重ね、帰国。2003年より、昼は代々つづく洋食メニュー、夜はご主人のセンスが光るフレンチを提供する「レストラン サカキ」を切り盛りしています。
夜のフレンチではコースが中心で、とりわけ「プリフィクスコース Aコース」6,000円(税別)が大人気。アミューズ・前菜・温前菜・旬のお魚料理・グラニテ・お肉料理・デザート・お茶菓子と食後のコーヒーがすべていただける、素材の質・バリエーション・ボリュームともに驚くほど充実した内容。前菜やお魚料理などでそれぞれ数種類から選べるばかりか、旬や仕入れ内容にあわせて提供料理を変えるこだわりよう。「一度訪れると常連客になる」との評判にも納得です。
「プリフィクスコース Aコース」のお肉料理で特に人気が高いのが、「仔羊のロースト バジリコソース」。オーストラリア産の上質な仔羊肉を使用しているため、肉質が柔らかく、クセが少ないことから幅広い客層に好まれています。
バジリコソースにも同店ならではの工夫が凝らされており、仔羊の骨を炒め、仔羊の出汁を用いて香草で整えた、まさにこの一皿のための絶妙な味わい。バジリコの香りがさらに引き立てます。
付け合わせには、香辛料をきかせた仔羊肉の腸詰めソーセージとして知られるメルゲーズや、芽キャベツ・トマト・ポテトをさりげなく。「目で楽しみ、舌で楽しむ。フレンチならではの一皿を味わってほしいですね」とのご主人の想いがこめられています。
同コースの前菜において、もっともぜいたくで素材の豊かさを堪能できる一皿としてファンが多いのは、「北海道産生ウニとコンソメジュレ アボカドのムース添え」。
北海道から築地に直送される新鮮な生ウニをはじめ、つぶ貝とオマール海老をたっぷりと使い、そこに惜しみなくのせられたキャビア。味覚に酔いしれながら食べ進めるうちに、底に敷き詰められたアボカドのムースが顔を出す。思わず知らずのうちに感嘆の声をあげてしまいそう。
「正直に申し上げて、原価ギリギリのサービスメニューです。同店の精神が反映された一品といってもいいですね」と笑いながら語るご主人の、“お客様に楽しんでほしい”という誠実なお人柄までうかがえる貴重な一皿です。
南フランスでの修行時代、魚介ばかり取り扱うお店で働いた経験もあり、得意料理をお伺いすると「魚介料理ですね。特に好きな食材は、海老やイワシ。海老は生でも焼いても使えるし、イワシはどんな料理にもアレンジできる。料理人の腕と感性を試される食材はワクワクさせられます」。また、これから冬にかけて、エゾジカのジビエや、ヒラメもオススメだそう。
「京橋生まれ・京橋育ちとして、もっと京橋の街を盛り上げていきたいんです。新しい複合ビルなども仲間入りし、日々変わりゆくこの街が、今よりもっと活気であふれるように。銀座や日本橋とはまた違った魅力に出会うためにも、ぜひ京橋、そして当店に足を運んでいただけるとうれしいですね」。
真面目で誠実そのもののご主人・榊原さんの情熱で歩みを止めない「レストラン サカキ」。昼夜を通して愛される名店の人気の秘密を確かめに、その扉を開いてみては。