2016年春に創業70周年を迎えたコーセー。同社が創業の地である北区王子から、日本橋に本社を移したのは1965年のことだ。当時から銀座・日本橋はファッション・文化の中心であったこと、また近隣に薬品・化学系の企業が多く、利便性が良いことなどが移転の決め手となったという。そして現在、同社の宣伝部で働く女性たちも、日本橋で働くことを日々満喫しているようだ。
「この界隈は、路地に入ると小料理屋さんのランチがあったり、老舗の和菓子屋があったりして、新しいお店を発見する楽しみがありますね」と、話すのは宣伝制作課で広告制作に携わる青木瞳さん。また、宣伝企画・PR課で雑誌の取材などに対応する比毛友美さんと平井祐未さんも、「華やかな銀座に近いのに、また違った雰囲気がありますし、美味しいお店が多いのも魅力です」「先輩といろいろなお店に行って、毎日感動しています」と、口を揃える。
彼女たちは、広告の撮影現場や取材現場に差し入れを用意する機会が多く、日本橋、京橋界隈で「手みやげ」を購入するのは日常の業務でもある。
「たとえば、榮太樓總本鋪さんでは、金鍔をよく購入しますが、撮影スタジオは乾燥しがちなので、出演者の方に喉の調子を整えていただくため、飴の詰合せを選ぶこともあります」と青木さん。比毛さんも「芸能人にもファンが多い、日本橋うさぎやさんのどらやきは、手みやげの鉄板ですし、イデミ・スギノさんのマドレーヌも、ここぞの時に購入するお菓子です」と話す。
また、広告に起用する女優やモデルのために、早朝の撮影のときの朝食として京橋千疋屋でカットフルーツの盛り合わせを注文することもある。生菓子、焼菓子、冷菓など、その日の現場の状況や相手により、喜ばれるものが異なるため、彼女たちは日々のリサーチにも余念がない。
「美味しいと聞けば、すぐ出かけてしまいますね。先輩から、ときわ木さんの話を聞いて、まずは自分用にと、お饅頭を買いに行ったりしました」(比毛さん)。
忙しい業務のかたわら「手みやげ」にも気を配る彼女たち。そして日本橋、京橋界隈には、彼女たちの思いに応える、細やかな技と心意気を持った名店が、たくさんある。
大宮人(おおみやびと)の高楼、つまりは皇居や神宮などの雅な建物の礎石をイメージした、日本橋本店限定の和菓子、楼(たかどの)。外側の黄身しぐれは、一度玉子を茹でてから作られており、なめらかな舌触りとともに口の中で溶けていく軽さが魅力。小豆餡で包まれた渋皮付きの栗の甘露煮との相性も抜群で、どこに出しても恥ずかしくない銘菓のひとつ。
住所: 中央区日本橋1-2-5
TEL: 03-3271-7785
営業時間: 【販売】9時30分〜18時 【喫茶室】10時〜18時
定休日: 日曜・祝日
オレンジとグレープフルーツのフタ部分を外すと、現れるのはぷるんぷるんのゼリー。果実をくり抜き、しぼりたての果汁をゼリーに仕立てたもので、30年以上前から販売され、毎月それぞれ5000個以上は売れるという人気商品だ。食べる前にフタの部分の果汁を絞りかければ、香りとみずみずしさが際立ち、さらに美味しくいただける。
住所: 中央区京橋1-1-9
TEL: 03-3281-0300
営業時間: 【販売】月〜金8時〜21時、土日祝9時30分〜18時 【フルーツパーラー】月8時〜18時(LO17時30分、19〜21時に開催されるフルーツバイキングは要予約)、火〜金8〜21時(LO20時30分)、土日祝9時30分〜18時(LO17時30分)
定休日: 無休
明治2年の創業以来、「上質な素材を使い、混ざりものはなし」の信条を貫く桃六は、劇場の楽屋見舞いなど、芸能人御用達の店としても有名だ。定番の「桃太郎だんご」は、醤油をからめた「焼だんご」と、あんこを巻いた「甘だんご」の2種類。上新粉100%のモチモチだんごが、醤油の香りとあんこのみずみずしさを引き立てる。
住所: 中央区京橋2-9-1
TEL: 03-3561-1746
営業時間: 9時〜18時
定休日: 日曜・祝日
開店前から行列ができる大人気パティスリー。おもたせにおすすめの焼菓子はいずれも、刻む、煮る、漬け込む、練り込むなどの作業を施し、どこまでも丁寧に作られたものばかり。細かく刻んだマロングラッセとマロンクリームを生地に使った「マドレーヌ アルディショワ」は、しっとりとした食感とリキュールの香りが楽しめる逸品だ。
住所: 中央区京橋3-6-17
TEL: 03-3538-6780
営業時間: 【販売】火〜土11時〜19時 【ティーサロン】火〜土11時〜18時(LO17時30分)
定休日: 日曜・月曜
紺の暖簾がかかる小さなお店は、いつも看板商品のどらやきを求める人で大賑わい。だが、ここのどらやきをひと口食べれば、その人気ぶりにも納得がいく。ふかふかの生地にたっぷりと挟まれた粒あんは、しっとりなめらかな口当たりの中に小豆の粒が感じられ、思わず2個目に手が伸びてしまうほど。購入は予約がおすすめだ。
住所: 中央区日本橋1-3-8
TEL: 03-3271-9880
営業時間: 9時30分〜18時
定休日: 土曜・日曜・祝日
明治43年の創業以来作られている「若紫」は、年に3回だけ、予約日を設けて販売される人気の品。豆を煮ては水にさらすという手順を丁寧に何回も繰り返して作られる、手亡豆(てぼうまめ)と小豆の餡を砂糖と丹念に練りあげて、口の中ではかなく崩れる独特の食感を生み出している。すっきりとした甘みが一瞬で消えていく上品な味わいは感動ものだ。
住所: 中央区日本橋1-15-4
TEL: 03-3271-9180
営業時間: 9時30分〜17時30分
定休日: 土曜・日曜・祝日
京橋にある明治ホールディングス本社の1階には、チョコレートづくしのカフェがある。特にお土産として人気なのが、カカオ豆の産地やミルク、フレーバーなどが異なる56種類のチョコレートだ。カラフルなパッケージに加え、和三盆、黒胡椒、ロイヤルミルクティーなど意外性のあるラインナップは、幅広い年代に喜んでもらえること間違いなし。
住所: 中央区京橋2-4-16
TEL: 03-3273-3184
営業時間: 月〜金8時〜20時(LO19時30分)、土日祝11時〜19時(LO18時30分)
定休日: 無休
一風変わったかりんとうが評判の日本橋錦豊琳。八重洲通りに面する本店では、直径2センチはある「極太かりんとう」を販売している。沖縄の黒糖を使った「黒」と北海道のビート糖を使った「白」の2種類で、いずれもパキッと噛めば、独自の製法で揚げられたサクサクの生地が崩れ、優しい甘さが口いっぱいに広がる。
住所: 中央区日本橋3-5-12
TEL: 03-6225-2952
営業時間: 10時〜19時
定休日: 日曜・祝日
TEXT:吉田千春、 PHOTOGRAPH:松田祥子
東京人2016年7月増刊より転載