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〈たべるかう〉 老舗の「粋」指南
"IKI" Lessons from the long-established stores

|2016.10.24

第4回  秋の反物と小物 ―竺仙―

第4回目のテーマは、竺仙と言えばの「江戸小紋」。その特徴と着こなしの指南、また竺仙デザインの粋な手ぬぐいについて、五代目小川文男社長に話を聞いた。

暦も9月になると、着物は単衣ひとえを、10月からはあわせを着るのが本来のしきたりである。

「いまの方は、単衣に仕立てるとその着物は単衣のまま、袷なら袷のままお使いになりますが、昔は、季節によって仕立て替えをしたものでした。単衣でまず作ったものを、次に袷に仕立て替えをし、寒くなると綿入れをし、春になると綿ぬきをするというように。他にも、八掛はっかけ(着物の裾回し)が派手になったと思えば八掛だけ替え、裏が切れれば裏だけ替えた。そういう使い方をしたものです」

小川社長は、それを、着物が手の内に入っていた時代の着物の使い方だと振り返る。いまの時代に、よそ行きのブラウスを着古したら普段着にするような感覚で、着物が日常着だった時代は、一枚の着物を着まわしたと言う。着物が高価になったいまの時代は、出来上がりの姿のまま着回すのが普通になったが、そうなると悩むのが、10月の気温の高い日でもやはり、しきたり通り、袷を着なければいけないのかということ。

「6月、9月が単衣というのは、知識として知っていればいいわけです。地球も変わってきているのですから、自分の体感に合わせて選べばいいと思います。10月に暑ければ単衣でもいいし、暖かみのある木綿の浴衣でもいい。それをおかしいんじゃないかと注意する方もいまでは少なくなってきていますね」

では、江戸小紋を紹介しよう。伝統の模様から、型を彫る職人と染屋さんが新たに生み出した模様まで、さまざまな美しい模様に目を奪われるが、そもそも江戸小紋にも季節の柄があるのだろうか。

「例えば桜の花のような季節感のあるモチーフもありますが、桜なら春先にしか着られないのかというとそうではなく、一年中大丈夫です、と申し上げるようにしています。ですから、江戸小紋は季節はお考えにならないほうがいい。季節感やご自分の趣味は、着物ではなく帯で出していただくほうがいいですね。季節に合った染帯を街で見かけるとすごくいいですね」

「極麻の葉小紋」290,000円

「染め帯」南天素描 110,000円

そう言って、出していただいたのが、南天の素描の染帯。南天の朱色とコーディネートして、同系である錆朱色さびしゅいろの麻の葉模様の江戸小紋を持ってくる。もうひとつ、辛子色の角通し小紋かくとおしこもんには、なんとも愛らしい江戸玩具の染帯を。細かい模様のため遠目には単色に見える江戸小紋に、帯の絵柄が映える。着物と帯を洋服感覚でコーディネートできるのも江戸小紋の楽しさかもしれない。

「角通し小紋」市松どり310,000円

「染め帯」おもちゃ尽くし200,000円

そして、今回は手ぬぐいや風呂敷、お膳掛けについても紹介しよう。竺仙では、それらも毎年新作がお目見えする。反物を長方形の型に折りたたみ、一気に染料を注いで染める注染ちゅうせんは、明治時代の後半に始まった染色技法。これにより浴衣を大量に染めることが可能になったわけだが、もともと注染は手ぬぐいが最初だった。大胆に菊をあしらった手ぬぐいなどは、伝統のなかにも斬新なデザインが目を引く。

手ぬぐい左から「菊」1,900円、「月に楓」1,250円、「山道」1,500円

お膳掛け「椿」1,800円(約70㎝×約70㎝)

手ぬぐいは便利な代物だ。水分をしっかり吸収し、速乾性が高い。日常生活のあらゆるシーンで活躍する。他にも、いまではあまり見なくなったお膳掛けなどもぜひ手にとってみてほしい。

風呂敷「金霞」3,500円(約90㎝×約90㎝)

お膳掛け「五葉松」1,800円(約70㎝×約70㎝)

風呂敷「向鶴菱」3,500円(約90㎝×約90㎝)

(文・織田桂 写真・泉大悟)

INFORMATION

竺仙

住所
東京都中央区日本橋小舟町2番3号
電話番号
03-5202-0991
営業時間
9:00~17:00
定休日
土曜・日曜・祝日(4月~7月は土曜も営業)
Webサイト
http://www.chikusen.co.jp/
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