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〈たべるかう〉 大人の「グルメ」知恵袋!
Few pearls of wisdom about gourmet for adults

|2017.12.26

Vol.7 「新年会」幹事さんにおすすめ! 絶賛必至の老舗料理店

[酒席 いづみや] & [や満登]

案内&文/大竹聡  撮影/工藤睦子

新しい1年のスタートを祝う新年会。職場の上司、同僚、部下との顔合わせは清々しくいきたいものです。まして、相手が取引先となれば、会場の格式や居心地、料理や酒の品揃えなどなど、万全を期したいところ。

そこで今回は、格式と伝統ある日本橋、八重洲の街中から、新年会にうってつけの2軒をご案内いたします。

粋な江戸っ子女将の居酒屋で賑やかに盛り上がろう


まずは、日本橋3丁目の「酒席 いづみや」さん。もとを辿れば江戸時代創業の酒屋さんから屋号を引き継いだといいます。酒席としてのスタートも戦後間もない昭和22年のことですから、老舗中の老舗です。もちろん、当時のこの界隈は戦後の焼け野原からの復興中でありましたから、付近の料亭も酒場もまだ満足な営業ができなかった時代です。女将さんの、山崎かづ江さんがおっしゃいます。

「もともと父が八丁堀のほうで店を開いていて、そこから移って来たそうですが、昭和22年の創業当時はまだ東京駅には八重洲口がなくて、丸の内だけの時代。八重洲口で戦後に店を開いたのは、うちが最初のほうだったようです」

話す言葉の歯切れがいい。江戸っ子だなあ、と、東京生まれの人でもきっとそう思うような、チャキチャキ感と美貌が女将さんの売りです。土地柄、界隈の大企業にお勤めの方に、多く愛されて来たということですが、常連さんの中には、女将さんの顔みたさに通った人も少なくないような気がいたします。

「古い店ですからね。お客さんの中には90代の方もいらっしゃいます」

写真:酒席 いづみや店内。店は地下1階から2階まで総席数110席。個室は3~4名のテーブル席から最大60名の大広間まで、大小宴会が可能。宴会では別途サービス料10%。(写真提供:酒席 いづみや)

いかにも格式があって、新年会などの賑やかな宴にどうかと思われるかもしれないが、そこは下町気質というか、ざっくばらんに対応してくれる。宴会の人数は、3、4人のごく小規模なものなから60人くらいの会まで柔軟に対応できるので、遠慮なく相談してほしいとのこと。

料理のおすすめは、その名も「粋」という名前のコースです。季節のお通し、鮮魚の盛り合わせ、宮崎産鶏串焼き、季節のいづみやサラダ、白魚の唐揚げ、出汁茶漬け、季節のデザート。

サラダは大根とジャコ。白魚の唐揚げと交互に口へ運ぶと、乾杯のビールはたちまち空になる。酒は厳選していて、燗酒には灘の酒、冷や用には東北地方や奈良の銘酒を揃える。旬の魚介10品の刺し盛りも豪勢です。タコ、タイ、ブリ、マグロ、カンパチ、シャコ、サワラ、ホタテ、甘エビ。こちらは魚介だけではなくて、焼き鳥も評判で、この日の宮崎鶏はビールに、酒に、よく合って、杯が進みます。

写真左:鮮魚の盛り合わせ。 写真右:宮崎産鶏串焼き。

写真左:季節のいづみやサラダ。 写真右:白魚の唐揚げ。

これで4104円。飲み放題にして6480円ですから、賑やかに盛り上がる一次会にぴったり。早い時間から続々とお客さんの来る人気店は、東京駅八重洲口まで歩いて5分かからないほど近いから、帰りにも二次会への移動にも便利。新年会の幹事を仰せつかったら、さっそく相談してみたい老舗の酒席です。

写真左:美しい女将さんにお酌してもらい、うれしそうな大竹さん。
写真右:ひょうたんの看板が目印の、いづみや外観。(写真提供:酒席 いづみや)

100年以上愛されてきた実力派割烹で格別な一席を


さて、もう1軒は老舗割烹「や満登」さんです。住所で言うと八重洲1丁目ですが、先に紹介した「いづみや」さんから歩いてすぐのところ、つまり、東京駅にほど近い場所にあります。

こちらの創業は明治35年といいますから、すでに115年もの間、営みをつづけてきたことになります。リニューアルされた店は、現在はビルの中ですが、かつては、現在の場所の一軒家で営業していた。パンフレットに当時の実に渋い店舗の外観写真が掲載されていて、それを見るだけでもこの店の長い歴史の一端に触れることができます。

現在の当主、成川英行さんは4代目。
「うちの曾祖父さんは神田の畳屋の息子、曾祖母さんは京橋の魚屋の出で、ふたりはこの近くの料理屋で働いていました。曾祖父さんは花板、総料理長ですね。で、曾祖母さんは仲居頭。このふたりが一緒になって近くに料理屋を出させてもらったということです。修業してお世話になった店の近くで、よく独立させてもらえたなと思うのですが」(笑)

4年前、和モダンをコンセプトに内装をリニューアル。店にはカウンター、テーブル、ボックス、掘り炬燵の広間、さらには5部屋の個室があるが、桐の箪笥に漆塗りの梅形テーブルを配した「面影」という個室には、初代夫婦の娘さんで、英行さんのお祖母さんが愛した帯が壁を飾っている。明治生まれの女性としては背が高く、モダンな柄の着物が似合ったお祖母さんの持ち物は今見ても美しく、高級感の漂う部屋に、しっくりと馴染んでいます。

写真:や満登入口・店内。120坪の店内に、個室が5室、テーブルフロア32席。「面影の間」「桔梗の間」「海棠の間」など風流な名のついた個室はすべて趣の異なる設え。最小は4席。個室をつないで最大20席まで可能。

料理はコースが主体。懐石風の献立のほかに、すき焼きや、しゃぶしゃぶのコースもある。
新年会のおすすめは、松コース。彩りも鮮やかな前菜から始まる料理は「や満登」自慢の献立を構成しています。
こちらのひとつの名物は、マグロと飛騨牛。創業者が本マグロの中トロを供したところたいへんな評判になったのは明治の昔。この一品を常連たちは「や満登づくり」と呼んだといいます。今ひとつが、飛騨牛。これは、3代目の夫婦、つまり現当主英行さんの両親が飛騨を旅した折りに食べてそのおいしさに魅了されたことから、取り寄せるようになったという。本マグロと飛騨牛、豪華ですねえ。新年を祝う宴には、これくらいの贅沢もいいかもしれません。

お椀は鯛の蒸し物、お造りには当然のや満登づくり、ホタテ、巻きエビに生ウニ。ほかに、飛騨牛の朴葉味噌焼き、ブリの照り焼き、合鴨の煮物と牡蠣の酢の物、そして食事には、蕎麦の実となめこの雑炊が出る。ふーっと、満足のため息をついているところへデザートが運ばれるという形で料理は締まるわけですが、このヴァリエーションと、量、おいしさならば、年齢性別を問わず、食卓を共にする人たちみんなに喜んでもらえそうだ。ちなみにコースのお値段は1万2960円。リーズナブルというものでしょう。

写真左:先付、前菜と食前酒。 写真右:お造り。本マグロは店の名物で「や満登づくり」と呼ばれる。

写真左:紅葉鯛蕪羽二重蒸しのおすまし。 写真中:鰤の照り焼き。下には大根のステーキが隠れている。 写真右:飛騨牛の朴葉味噌焼き。

「松コース」は12960円。食前酒、先付、前菜、御椀、刺身、焼物、飛騨牛ステーキ、煮物、揚物、酢物、食事、水菓子の12品。内容は月替わりで、その日仕入れた最高の食材で提供するため日によって変わることもある。夜のコースは8640円から全5コース。要予約。サービス料10%。

若き日には京都の名門「瓢亭」に修業に出たという英行さんは、調理場とホールのスタッフたちの連携や、献立のチェックなど、入念に行なっているという。

「古い店ですが、ランチには女性のお客さんも多いです。どうか、肩肘張らずに気軽に来ていただきたいですね」

料理は、季節やその日の仕入れによって日々変わるけれど、それは、よりおいしい一品を供するための工夫。八重洲口に残る100年割烹で、長く愛される実力の賜物を味わいながら飲むお酒も、格別な味がするものです。ぜひ、年の初めの一席を。

写真左:目にも鮮やかな美しい料理と一緒に乾杯! 写真右:4代目当主、成川英行さん。(写真提供=や満登)

案内人プロフィール:大竹 聡(おおたけ・さとし)
作家、エッセイスト。1963年東京生まれ。『酒呑まれ』(ちくま文庫)、『新幹線各駅停車 こだま酒場紀行』(ウェッジ)、小説『レモンサワー』(双葉文庫)など、酒と酒場に関する著書多数。

INFORMATION

酒席 いづみや

住所
中央区日本橋3-3-3
電話番号
03-3271-2939、03-3275-3050
営業時間
16時30分~23時
※土曜の宴会は13時から予約可
定休日
日曜・祝日
Webサイト
http://www.idumiya.info/

や満登

住所
中央区八重洲1-7-4 矢満登ビルB1
電話番号
03-3271-2491
営業時間
11時~14時(L.O.13時30分)
17時~22時(L.O.21時30分)
※土曜の宴会は13時から予約可
定休日
土曜・日曜・祝日
Webサイト
http://nihombashi-yamato.jp/

※本文中の価格はすべて税込価格です

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