10月31日(月)から12月2日(金)にわたり開催された「Art in Tokyo YNK」は、本展覧会ディレクターを務める石井信氏(四季彩舎)と吉野智彦氏(TOMOHIKO YOSHINO GALLERY)のユニット、「TOKYO CONTEMPORARY KYOBASHI」が2021年から取り組んでいるプロジェクトです。
老舗の古美術店や画廊が多く点在する京橋のオフィスビルから最新の現代アートを発信するという、独創的な魅力が詰まった本展のテーマは「多様性」。使用する素材や表現方法の異なる6名のアーティストが参加した第3回展を写真とともに振り返りながら、東京有数のビジネス拠点で、「YNK(インク)」と呼称される八重洲・日本橋・京橋エリアの一角に吹き込んだ新たな息吹を感じていただければと思います。
京橋駅直結、さらには東京駅、銀座一丁目駅、宝町駅など多方面からのアクセスに対応するよう、建物入口が複数設けられた大型ビルが舞台の「Art in Tokyo YNK」。ビル内の動線は自ずと分散されるため、オフィスエントランスといえど、日常的に人通りは多くなく、人が滞在するようなにぎわいはありません。その光景が変わろうとしているのは、半年に1度のペースで開催を重ねてきた本展の重要な意義のひとつではないでしょうか。
第1回と第2回と比べ、明らかに鑑賞者数が増えていた今回。ビルの就業者はもちろん、学生とおぼしき若者や、デパートの袋を抱えた買い物客、またお話を伺った人の中には、近隣商店の方や、京橋のギャラリー巡りで訪れた方など、老若男女様々な人々がゆったりとアートと対峙できる空間を満喫していました。
特に印象的だったのは、通りがかりに偶然鑑賞したという方の、「面白かった。せっかくなのでこの足でアーティゾン美術館にも行ってみます」というコメント。会場では、周辺ギャラリーや美術館で開催中の展覧会情報も紹介されており、アートという新たな視点で、歩けば歩くほど魅力が広がる八重洲・日本橋・京橋エリアを知るきっかけとして、「Art in Tokyo YNK」が作用したようです。
本展では、多様性というテーマのもと、漆喰や陶、顔料インク等、素材も技法も異なるアーティストの作品展示によってアートの表現の幅の広さと自由度の高さが示されたわけですが、同時に、誰もが持っている感覚で共有できるアートの寛容性を再認識しました。長時間作品に見入っている人たちは共通して、アーティストたちのほとばしる情熱や主張を感じたのはないでしょうか。
「Art in Tokyo YNK」はまだ多くの人に知られた展覧会ではないですが、人を惹きつける魅力と懐の深さがあり、受け手に考えるきっかけを与えてくれるアートとのごく身近な接点として、今後じわじわと話題になっていく予感がします。
関連サイト
Art in Tokyo YNK公式サイト: https://artintokyoynk.com/
TOKYO CONTEMPORARY KYOBASHI(@kyobashicontemporary): https://www.instagram.com/kyobashicontemporary/
四季彩舎: https://www.shikisaisha.com
TOMOHIKO YOSHINO GALLERY : https://www.tomohikoyoshinogallery.com