創業から54年目を迎えた、株式会社花門フラワーゲート(中央区八丁堀)。「花と緑のクリエイティブエージェンシー」として、日本で初めて植物のレンタルを事業化し、現在も全国のオフィスに観葉植物などを届け続けている。また、中央区の花壇への花の提供、近隣で開催されるイベントへの積極的な参加など、地元に密着した活動も多数。その根底には、人々とのつながりを大切に、花と緑の持つ力を伝えていきたいという熱い思いがあった。花門フラワーゲートの営業部長・岡崎善郎さんにお話を聞いた。
イベントでは竹あかりに、花の無料配布も。花の持つ力を伝えていきたい
2022年3月18日から4月10日まで、東京スクエアガーデンなどで行われたフラワーイベント「Meet with Flowers~咲かせよう、サステナブルライフ」(主催:東京建物株式会社)。今回から、中央区を代表するお花屋さんである花門フラワーゲートが参加し、大好評の中、幕を閉じた。中でも、東京スクエアガーデンの入り口に大きく飾られた、竹あかりの装飾は注目の的に。花門フラワーゲートからのアイデアで実現した企画だった。
「竹あかりとは、竹にさまざまな模様をくり抜き、中にあかりを灯す装飾です。その演出制作・プロデュースを行うCHIKAKENというユニットと、我が社がパートナーシップを取って活動して8年ほどになります。イベントのお声がけがあり、ぴったりなのではと提案させていただきました。竹あかりの華やかさ、優雅さがイベントに合うのはもちろん、京橋には江戸時代に竹材の市場である竹河岸があったんです。こういった歴史的な背景からも、いつかこの地で竹あかりをやってみたいという思いが、心のどこかにありました。今回は、季節に合わせて、CHIKAKENが制作した竹に、花門フラワーゲートが桜を装飾。花できれいなラインを作ることはとても難しかったのですが、CHIKAKENとも相談し、デザインのブラッシュアップをしながら進めました。花がよく見える昼間、花もライトも映える夕方17時ぐらい、明かりがメインの夜と、1日のうちでも時間帯によって見え方が変わるのも見どころで、多くの方に楽しんでいただけたのではないかなと思います」
また、サステナブルライフをテーマに掲げた今回のイベントで、竹にフォーカスすることにはこんな意味合いも。
「全国各地で放置竹林の増加が社会問題となっています。戦後に育てやすい農作物として生産者が増えたたけのこですが、需要は減少の一途。生産者は引退して、竹林だけが残る事態が多発しました。竹は横に面で根を張るという特徴があり、どんどん竹林の面積が増えて、既存の森や林を侵食してしまうんです。整備しなければいけないけれど、自治体もなかなか手が回らない。そこにCHIKAKENが注目し、竹あかりには干ばつした竹や、伐採した竹を有効活用しています。イベントを通じて、放置竹林の問題や、竹の利用の必要性について、少しでも啓蒙できているといいですね」
さらに、同イベントの中で無料配布された切り花の調達も担当。コロナ禍で厳しい状況にある全国の生産者を応援するため、改めて、花の良さを広めるために行われたそう。
「花業界を支えているのは、お花を作る生産農家さんです。コロナ禍で多くのイベントが中止になるなど需要が減り、花を廃棄せざるを得なかったり、農家さんが花生産をたたんだりといった事態を耳にするようになりました。何かできることはないかと考えたときに、まずはこれまで花に興味がなかった人、忙しくて花から離れていた人などに『花ってやっぱりいいね』と思ってもらいたいなと。弊社が調達した花が多くの方の手に渡り喜んでいただけたと聞いて、とても手応えがありました。花が持つ力は、理屈じゃない。人が人に花を渡した瞬間に、ほんわかしたやさしい気持ちになり、笑顔がこぼれる。こんな花の良さ、花が持つ力は、根気よく伝えていきたいなと思っています」
創業のきっかけであり、会社の中心となっている花と緑のレンタル事業
花門フラワーゲートが長年続けている事業のひとつに、オフィスなどへの花や観葉植物のレンタル・リースがある。実は、創業のきっかけであり、社名の由来にもなっているというから、その並々ならぬ思いが伝わってくる。
「創業者が1960年代にヨーロッパを旅行し、『ヨーロッパの家の玄関には、必ず花壇がある。よし、これだ!』と思ったことが始まり。日本に帰って『門にお花を置きませんか?』と路面店を中心に飛び込みで営業を始めたことから、会社が立ち上がりました。これが『花門』という社名の由来でもあるんです。当時は、職場にグリーンを導入すること自体珍しく、販売は難しい。そこで、やりやすいレンタル・リースという方法を取ったようで、日本で初めての草花レンタルをした会社とうたわせてもらっています。今や弊社の中心事業で、サブスクの定額で毎月花や観葉植物をお届けして、専門スタッフがメンテナンスも担当。手間がかかるメンテナンスフリーで、花や緑を維持できるサービスとして好評いただいています。グリーンにはリラックス効果プラス、集中力を高める効果もあると言われていますので、心地よい職場環境の整備に一役買えればと思います」
また、造園の領域でも数多くの実績があり、特に、地元と、そこに暮らす人とのつながりを大切にしていると言う。
「中央通りの花壇には、もう40年以上、花の提供をさせてもらっています。年4回、春夏秋冬それぞれのお花を植えて、水やりの地元のボランティアさんとの交流も。街の人たちとの関わりは楽しいですし、少しでも地域貢献できているのかなと思うと、気持ちのいい事業のひとつです」
時代の変化を見据えながら、ノーと言わず新たなチャレンジを
前述の竹あかりもしかり、近年は、社会課題を軸とする新たなチャレンジも多い同社。たとえば、商業施設を展開する丸井グループとのコラボレーションでは、きれいな色にするのが難しいドライフラワーを扱った。
「マルイさんの各店舗で、弊社で制作したドライフラワーのオブジェを飾っていただいています。ドライフラワーには生花の鮮やかさ、みずみずしさはないけれど、マルイさんに飾るものは少しでも色をきれいにということで、花選びにはかなり力を入れました。社内で、いろいろな花を逆さに吊るして試したりも(笑)。持続可能な暮らしへの意識が高まる中、長く楽しめるドライフラワーの可能性は今後ぜひ広めていきたいですね」
さらに、脱プラスチック容器の推進、ペーパーレス化など環境への負荷をできるだけ軽くするためにできることから取り組んでいる。
「石灰石を主原料とした、プラスチックの代替となる新素材『LIMEX(ライメックス)』をフラワーギフトのミニボックスとして使用しています。5年ほど前に、当時会長職だった創業者自らがLIMEXを扱う株式会社TBMさんを訪れ、交渉をスタート。これからの時代には避けて通れない問題だと、実感していたようです。LIMEXは一見、紙のように見えるのですが、水を一切通さない特別な素材。今はギフトボックスのみですが、今後も活用できればと。また、業界的には、受発注書などまだまだ紙の書類が多いのが実情ですが、FAXなどはできる限り使用せず、ペーパーレスを実施。社内のDX化も進めています。花と緑というアナログなものを扱う企業ですが、環境には配慮してやっていきたいです」
創業時から長年続けてきた事業、地域に根ざした活動などの軸は大切にしながら、社会の流れに合わせて、新しい考え方や取り組みも柔軟に取り入れていく。花門フラワーゲートが堅実に実績を重ね、長く愛される秘訣はこんなところにあるのかもしれない。
「新たなチャレンジをしようというスタンスは強いと思います。マルイさんのオブジェでは、ドライフラワーをはめる木枠の制作も弊社で担当し、大工職人に頼み、構造計算をしながら作っていきました。また、あるイベントではお花の装飾とともに舞台設営から依頼されたことも。『ノーと言わない』という創業者の言葉がありまして、お客様が困っていたら、どんなことでもまずはやってみる。初めてのことでもやりながら覚えて、自分たちのものにしていく貪欲さは、スタッフみんなが持っていると思います。今後も、モットーでもある『日本一親切な花屋さん』を目指して、制限を設けず、いろいろなことにトライしていきたいですね」
関連サイト
株式会社 花門フラワーゲート: https://www.flowergate.co.jp/
執筆:野々山幸(TAPE)、撮影:森カズシゲ