〈はたらく〉 イノベーションの舞台
FRONT of TOKYO

|2019.09.24

名だたる起業家が集う「SEA」が起こすソーシャルビジネスの大きなうねり

次世代の社会起業家を支援する一般社団法人として2018年8月に設立された「ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション:SEA」(所在地:中央区京橋)。このSEAに今、日本を代表する社会起業家が続々集まっている。その背景にある、ソーシャルビジネスが秘める大きな可能性と、SEAが描く“ソーシャルビジネスの波が自発的に広がる世界”について、SEAの共同代表を務める進藤均さんに話を聞いた。


設立1年で、既に20件の社会起業家を支援

SEAをひとことで言うなら、「ソーシャルビジネスを始める起業家を支援するための組織」となるだろう。ソーシャルビジネスとは、社会が抱える問題をビジネスの手法を交えながら解決を図っていく取り組みのこと。

SEAを創業したのは、進藤均さんと荻原国啓さんの二人だ。進藤さんは障害者の求人雇用情報・転職支援サービスなどを手掛けるゼネラルパートナーズ代表取締役社長として、荻原さんは企業のメンタルヘルス支援を手掛けるピースマインド創業者・現ゼロトゥワン代表取締役社長として、ともに長年ソーシャルビジネスに携わってきた。進藤さんは話す。

「根底にあるのは、こんなに楽しくて、やりがいがあって、ちゃんと稼ぐこともできるソーシャルビジネスがもっと増えたらいいのにな、という想いです。

内閣府でこんな調査もありました。世界各国の若者へのアンケートで『自国のために何か役に立つことをやりたい』と答えた人は、意外にも世界で日本が一番多かったんです。一方で『社会を変えられると思っている』と答えた人は最下位でした。社会のために何かやりたいとは思うけど、どうせ変わらないと諦めてもいる。それが現状なんだなと。

我々も新卒採用などに関わる中で、若い人たちの社会貢献や社会問題解決の意欲が高まっているのを実感しています。この流れをムーブメントにするにはどうしたらいいかと考えた時に、そうした事業を“生み出す部分”へのサポートが必要だろうとなったんです」。

一般社団法人「ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション:SEA」創業者の二人。
左)株式会社ゼネラルパートナーズ代表取締役社長・進藤均さん 右)ゼロトゥワン株式会社代表取締役社長・荻原国啓さん

SEAが行うのは、社会起業家に対するノウハウや精神的な支援。さらには必要に応じて資金の援助も行う。そうしたSEAの取り組みの中心的な役割を果たすのが、豊富な起業経験を持つメンター陣だ。そのラインナップには進藤さん、荻原さん以外にも、日本を代表する社会起業家が名を連ねる。

設立1年余りで、早くも50件の起業支援の相談があり、うち20件ほどは実際に支援が始まっている。具体的に支援が行われていない案件でも、メンターが個人的に話を聞くなど何らかの形でサポートするケースが多いという。

「予想以上にご相談が多く、ソーシャルビジネスをやりたい若者がたくさんいること、そして起業家からのサポートが求められていることを再認識しました。今後、メンター陣はより増強される予定で、社会起業家を目指す人もさらに増えるでしょう。ソーシャルビジネスが広がる可能性を今すごく感じています」。

SEAの起業家メンター陣の一部。
左から、株式会社CAMPFIRE代表取締役社長・家入一真さん、認定NPO法人カタリバ代表理事・今村久美さん、認定NPO法人フローレンス代表理事・駒崎弘樹さん、一般社団法人FutureEdu代表理事・竹村詠美さん、REAPRA PTE.LTD.CEO・諸藤周平さん

社会貢献とビジネスの“両輪”が揃うことで自走が可能に

こうした取り組みの背景にあるのが、ソーシャルビジネスというものが持つ大きなポテンシャルと、それがための難しさだ。そもそも、なぜ社会課題の解決とビジネスを並行して行うのだろう。

「ソーシャルビジネスは、自転車のようなものだと考えています。社会課題の解決という“前輪”と、ビジネスという“後輪”がきちんと揃ってこそ、持続的に走ることができる。これが寄付で成り立つNPOなら、あるとき寄付が打ち切られて活動ができなくなるかもしれない。自治体の助成金で成り立つNPOであっても、もう予算がありませんとなったら活動は止まってしまう。

でも、もしその取り組みがビジネスとしても成立していれば、自走することができる。より発展させることも可能になる。つまりは前輪と後輪がきちんと揃うことで、事業を継続的に、速く走らせることができるんです。もちろんNPOや非営利の活動にもメリットがあり、どちらがいいと言い切れるものではありませんが、社会貢献を持続的に行うには、ビジネスとして成立していることが重要なカギになると我々は考えています」。

左)SEAのミッションの大きな一つが、経験豊富な起業家によるメンタリング。社会事業の運営に必要な実践的アドバイス、伴走者としての精神的なサポート、経営資源やネットワークの提供および紹介、事業提携のアレンジメントなどを行う
右)SEED投資を中心とした資金支援もミッションの一つ。SEAソーシャルベンチャーファンドによって出資を行う以外にも、時にはメンター自身が出資したり資本政策についてのアドバイスをする

何より必要、起業経験者による“心の伴走”

逆に、そんなソーシャルビジネスだからこその難しさもある。

「社会貢献とビジネスのどちらか片方だけをやるのに比べると、やっぱり両立させるのは簡単ではありません。だから起業をためらう人も多いし、挫折してしまう人も少なくない。とりわけ起業家にとって大変なのが、事業が実際に回り始めるまでの期間です。

たとえ初めに計画をきっちり立てても、予定通りにいかないことの方が圧倒的に多い。先行きが全く見えない中で、なけなしの資金はどんどん減っていく。まだ組織ができあがっていなければ、営業から経理、財務まであらゆる業務を自分でこなす必要もある。それは心が折れそうにもなります。私が17年前に起業した時も、まさにそんな感じでした」。

だからこそ大きな力となるのが、「起業経験者」による精神的な支えだという。

「起業経験者であれば、そうした苦しみを一通り経験しているので、よりリアルで生々しいサポートができます。世のアクセラレータ(※)というと、大手企業出身者が入ってコンサルティングをする形が多いですが、ソーシャルビジネスをしようという人が本当に求めているのは、不安を取り払ってくれる精神的サポートだと思うんです。

起業では、1人のお客を100人に増やすこと以上に、まずは1人目のお客さんを見つけることが何より大変です。逆にいえば、1人のお客がどういう気持ちになってお金を動かしてくれたのか、その辺の感覚をつかむことがとても重要になる。その産みの苦しみで心が折れないよう、起業家自身が次の起業家に寄り添い、伴走する。それこそがSEAの存在意義だと考えています」。

※スタートアップ企業などに対し、事業成長を加速させる支援を行う企業や自治体


人が生きづらさを感じるのは、社会に問題があるから

社会貢献とビジネスを両立させる秘訣はどんなところにあるのだろう。

「ひとことで言うのは難しいですが、やっぱり『志』ありきなのかなと。世のこんな課題を解決したい、社会にこんなふうに貢献したい、そうした志があってこそ、それを表現する方法が見つかる。志が最初にあり、それをビジネスと掛け合わせてデザインするのが社会起業家なのかなと思います」。

では進藤さん自身は、どのような経緯で社会起業家になったのか。そこには育った環境が大きく関わっているという。

「子どもの頃から障害のある人たちと接する機会がよくありました。そこで垣間見たのが、障害者と健常者が分断されてしまっている現実です。通う学校が違うし、働く場所も別々に用意されている。仕事をして社会に出たい障害者がたくさんいるのに、壁があってなかなか出られない。私は両方の世界を見てきたからこそ、そこに問題意識を感じ、この距離をどう縮めようか、壁をどう壊そうかというのをずっと考えてきました。

障害者だけでなくLGBTや、ひきこもりや、親から虐待を受けて施設にいる子の問題などにも通じるのですが、その人自身に問題があるわけではないのに、生きづらい状態になっているというのは、やっぱり社会に問題があると思うんです。そこをなんとか変えていきたいなと。だからビジネスと社会貢献の両方をやるというのは、自分の中ではわりと自然な生き方だったんです」。


社会貢献の波が自発的に広がっていく世界

実はSEAが掲げるミッションには、「起業家に伴走すること」「起業に必要なリソースを提供すること」以外に、もう一つ重要なものがある。それは「循環型の社会起業家コミュニティを作ること」だ。

先輩起業家から有意義なサポートを受けてソーシャルビジネスを成功させた起業家が、また次の社会起業家の挑戦を支援する。こうして挑戦と支援の波は、進みを止めることなく広がる。進藤さんには、その先にこんな世界が見えているという。

「現状、ソーシャルビジネスはまだ敷居が高く、どうしても“挑戦”といった文脈になってしまいます。やっていると『すごいね』『大丈夫?』などとも言われます。でもどんどんやる人が増え、事例も積み重なれば、『意外とできるものなんだな』『自分もやりたいな』という存在に変わるでしょう。また今後は税収が減り、これまで手厚く行われていた行政サービスがなくなり、そのサービスを民間=みんなで担うというのが社会的な流れになります。そうなった時、ソーシャルビジネスはもはや特別ではなく、働き方・生き方の選択肢の一つとして普通に選ばれるものになる。そんな世界をSEAは見据えています」。

左)社会起業家のコミュニティを創出し、社会起業家が次の社会起業家をサポートする“エコシステム”を確立することをSEAは目指している
右)進藤さんの手掛けるSEAとゼネラルパートナーズは、京橋にオフィスを置く。「浅草や上野界隈で生まれ育ったので、もともと銀座線や中央通りにはすごく馴染みがあります。それと弊社は来客がかなり多いので、主要な駅を結ぶ銀座線沿いで、かつ東京駅からも有楽町からもストレスなく歩いて来られるという京橋の利便性の高さも決め手となりました」

関連サイト
SEA: https://www.social-ea.org/
ゼネラルパートナーズ: http://www.generalpartners.co.jp/ 

執筆:田嶋章博、撮影:島村緑

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