〈はたらく〉 東京ワークライフスタイル
Front of style

|2019.09.30

好きなものは路地で見つかる 日本橋・京橋「骨董通り」での生活


八重洲・日本橋・京橋エリアを中心に、この街で働く人々にお気に入りの過ごし方を伺う連載「Front of Style」。

今回訪れたのは、日本橋~京橋にある一本の路地。ギャラリー「メゾンドネコ」オーナーの平きょう子さん、ギャラリー散策を趣味にする株式会社コルボの宮内俊郎さん、近隣の「ギャラリーモーツァルト」の杉本是清さんに、骨董通り周辺での日々について伺いました。

※記事中では、「東仲通り(通称:京橋美術骨董通り)」を、取材対象者の用いた呼称である「骨董通り」にて記述しています。

●猫の後を追って、今では路地の一員に
平 きょう子さん(「メゾンドネコ」オーナー)

骨董通りは、通り沿いはもちろん、周辺の細い路地にも、隠れ家のように美術店やギャラリーが立ち並ぶ場所です。そんなエリアの雰囲気に惹かれているという平きょう子さん。毎朝、愛用の自転車で路地を通り抜け、出勤します。

平さんは、2015年にギャラリー「メゾンドネコ」をオープン。「生きとし生けるもの」をコンセプトに、絵画から立体作品まで幅広い作品を展示しています。

ギャラリーを始めたきっかけは、1匹の猫との出会いでした。

平さんが近隣の会社の仕事を手伝っていた頃、堂々とした姿で歩く猫を道端で見かけて「こんなビル街に」と、びっくり。後をついていき、たどり着いたのがこの路地だったそう。古美術店「木雞(もっけい)」の飼い猫だと判明し、猫好きという共通点から店主の大江夏子さんと『ネコ友』になりました。

当時、何か新しく仕事を始めたいと考えていた平さん。大江さんから「店の2階が空いている」と聞き、話がトントン拍子に進んだといいます。

平さん(左)と、「木雞」店主の大江夏子さん(右)。お世話をしている地域猫のトラさんと一緒にひと休み

路地で毎日を過ごし、ギャラリー運営に奮闘するうちに、いつしか周囲には顔見知りが増えました。近隣の老舗和菓子店「桃六」は、よく訪れる場所のひとつです。

「豆大福やお団子など、桃六のお菓子はちょっとした手土産にぴったり。茶飯のお弁当は展示作家さんと食べることも。食べ飽きない味で大好きです」。

売り切れ必至のお弁当は、少し早めの時間に購入。これからの季節は、秋限定「栗ごはん」の登場を心待ちにしています。

「桃六」の「茶飯おこわ弁当」(右)

メゾンドネコ」の開館は12時30分。昼休みを利用してよく足を運んでくれる近隣の会社員がいることから、この時間帯にオープンするようになりました。

「ギャラリーは敷居が高いと思われがちですが、気軽に立ち寄ってもらえるとうれしい。美術館のように入場料がかかることもありません。手の届く価格の作品も多いですよ」と平さん。

「偶然が重なり、こうして骨董通りで生活しているのは不思議な気持ち。猫がつないでくれた縁を大切に、これからもアートを身近に感じられる場をつくっていきたいです」。

メゾンドネコ
住    所: 中央区京橋1-6-14 佐伯ビル2階
WEBサイト: http://www.office-taira.jp/m-neko/gallery/index.html 

木雞
住    所: 中央区京橋1-6-14 佐伯ビル1階
WEBサイト: https://www.mokkei.com/index.html 

桃六
住    所: 中央区京橋2-9-1


●リフレッシュの秘訣は、カレーうどんとギャラリー散策
宮内 俊郎さん(株式会社コルボ)

「メゾンドネコ」平さんから「いつも展示を観に来てくれる方」と紹介されたのが、日本橋にある株式会社コルボで働く宮内俊郎さん。ヘルスケア専門のセールスプロモーションを行う会社で、クリエイティブプロデューサーを務めています。

製品のネーミングやコピー、デザイン要素の構成を考えるのが主なお仕事。そんな宮内さんがリフレッシュタイムとして大事にしているのが、骨董通りエリアでのお昼休憩です。

ランチのピークタイムを避けて早めに会社を出ると、まずは骨董通りで腹ごしらえ。

多い時は週5日通うという「京橋 ちょぼや」は、昼はうどん店、夜は居酒屋として営業するお店です。九条ねぎがたっぷり乗ったカレーうどんは、刺激的な味わいとやわらかな麺の喉越しが病みつきに。

「京橋 ちょぼや」の「肉カレーうどん」(右)

いつも注文するのは、付け合わせのご飯を大盛りにした「肉カレーうどん」。食べ続けるうちに、宮内さんの顔を見るだけで運ばれてくるようになったのだとか。卓上の黒七味をうどんに、自家製の「山椒こんぶ」をごはんに乗せていただきます。

取材に伺ったこの日は金曜日。店員さんと「また来週!」と一言交わし、店を後にしました。

もともと街の散策が好きだという宮内さんが、骨董通りに通い始めたのは3年前。「東京 アート アンティーク~日本橋・京橋 美術まつり」の旗を見かけて入り込んだのが、「メゾンドネコ」や「木雞」のある路地でした。気さくに話せる雰囲気が気に入り、今では月に何度も訪れています。

この日は、趣味の週末農業で収穫したカボチャを手土産に「木雞」へ。お茶を勧められ、骨董話に花を咲かせます。宮内さん(右)と「木雞」の大江大和さん(左)

次に訪れた「ギャルリーソレイユ」でも、在廊中の作家とおしゃべり。「僕はどちらかと言えば自分から話しかけるタイプです。『この作品に対して、こう感じました』と伝えると、相手も『そこに気づかれましたか』とにやり。その会話が楽しいですね」。

また、素材や制作方法など、わからないことは率直に質問。「ギャラリーの雰囲気にもよるとは思いますが、皆さんわりと丁寧に教えてくれます」と宮内さん。とはいえ、初めてのギャラリーに入るときに緊張しないのでしょうか。

「こんにちは、と一言挨拶して入ると、後から話しかけやすいのでおすすめです。今でも気後れすることは時々ありますが、入ってしまえば意外と平気なものですよ」。

「ギャルリーソレイユ」で鑑賞中

宮内さんにとって、骨董通りでのお昼休みは、仕事モードの頭が切り替わり良い刺激がもたらされる貴重なひととき。

「ご飯を食べてオフィスに戻るだけではつまらない。この場所に来ると知識が増えるし、何より物事を多面的に見られるようになった気がします」。

京橋 ちょぼや
住    所: 中央区京橋1-14-1 中山ビル1階

ギャルリーソレイユ
住    所: 中央区京橋2-8-2 渋井ビル1階
WEBサイト: http://galeriesoleil.web.fc2.com/index.html 

株式会社コルボ
住    所: 中央区日本橋3-10-5 オンワードパークビルディング7階
WEBサイト: https://www.colbo.co.jp 


●国内外の文化とつながる場所を、緑ある通りで
杉山 是清さん(「ギャラリーモーツァルト」オーナー)

宮内さんから「勢いのある作品が多くて、よく訪れるギャラリー」と紹介されたのは、大きな窓が印象的な「ギャラリーモーツァルト」。「メゾンドネコ」や「木雞」と同じ路地の通り沿いに店を構えます。

オーナーの杉山是清さんは、京橋で生まれ育ちました。「メゾンドネコ」の平さんとは、出身の美術大学が同じという共通点があったそう。

大学院では人類学を専攻し、北海道でアイヌの民具の調査に携わったという杉山さん。アイヌ文化をはじめ、国内外の民俗文化を広める場として、10年前に「ギャラリーモーツァルト」を開きました。

「勝手知ったる京橋で、特に名前のないこの通りが好きです」と杉山さん。ギャラリー内での作業中、ふと街路樹の緑が目に留まると、この場所にギャラリーを構えて良かったと感じるそう。

アイヌに関連する展示は、年に5~6回開きます。伺った日は、アイヌ民族とニュージーランドのマオリ族との交流記念展を開催中。さまざまな人が鑑賞に訪れていました。

そして月に一度は、街路樹の通りを八重洲方向に5分ほど歩き、「アイヌ文化交流センター」へ。ここは、首都圏に住むアイヌの人々の文化活動のバックアップやアイヌ文化などに関する情報を発信する施設。アイヌ関係図書約5,000冊や工芸品の常設展があり、誰でも無料で利用できます。

「アイヌ文化交流センター」で最近の新聞記事をチェック

こうして日々の仕事を終えた午後6時。杉山さんはスタッフに閉館作業を任せると、裏口から路地へ。自宅までの道すがら、いつも少しだけ遠回りをして、日本橋エリアへ向かいます。

夜はほとんど外食しないため、日本橋高島屋S.C.の地下食料品フロアで肉や魚を買い、自宅で簡単に調理して食べるのが1日の楽しみ。「素材の味を感じられる食事が好きです。心身がリラックスする時間を使って、ニュースを見たり次の企画についてイメージを膨らませたりします」。

また、杉山さんはギャラリー運営の傍ら、岐阜県でわらび餅の原料となる「飛騨わらび」を自然栽培するなど、多方面で忙しく活動しています。京橋の路地での展示活動と地方での活動。両者をつなげるのが自分の役割だと考えるようになったそう。

「東京にいながら、各地の文化に触れられる場所が『ギャラリーモーツァルト』です。京橋を訪れる人が、ここで新しい文化や人と出会えるならうれしいです」。

ギャラリーモーツァルト
住    所: 中央区京橋1-6-14 YKビル1階
WEBサイト: http://g-mozart.jp 

アイヌ文化交流センター
住    所: 中央区八重洲2-4-13 ユニゾ八重洲二丁目ビル3階
WEBサイト: https://www.ff-ainu.or.jp/web/overview/cultural_exchange/index.html 

執筆:森夏紀、編集:松尾奈々絵(ノオト)、撮影:小野奈那子

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