八重洲・日本橋・京橋エリアを中心に、この街で働く人々にお気に入りの過ごし方を伺う連載「Front of Style」。
今回訪れたのは、人と人とのご縁をつなぐバーとして話題の「THE FLYING PENGUINS」。店長の佐藤奈央子さんと、個性豊かな店員、お客さんにお話を聞く中で、バーのある八重洲に根付きつつある、新たなワークライフスタイルが見えてきました。
●やりたいこと、夢、想いなど「WILL」がある人がつながれる場所を
東京駅八重洲口、日本橋駅からほど近くに店舗を構えるバー「THE FLYING PENGUINS」。カウンターにテーブル席が2つ、全17席と限られたスペースながら、オープンと同時に多くの人が来店。お酒をたしなみつつ、心から会話を楽しんでいる様子が伺えます。
「やりたいことや思いのあるお客さまの言葉が飛び交い、店内は活気に溢れているんです」と話すのは、店長で、コミュニティマネージャーの佐藤奈央子さん。
「この八重洲・日本橋・京橋エリアは、歴史ある企業が多い反面、再開発が進み、スタートアップ企業や、コワーキングスペースなどができて、新たな人も増えている印象です。でも、そういった最近このエリアで活動を始めた人たちが飲みに行く場所が、身近に少ないという声が聞こえてきて。会社、世代、肩書きなど関係なく、夜な夜な集って、やりたいことや夢をお酒を飲みながら話して、応援し合える場所があったらいいなと。そんな思いから2022年1月にこのバーはスタートしました。
私たちは、やりたいこと、夢をWILLと呼んでいるのですが、お店を訪れてくれる人たちは、WILLがある人が多いと感じます。WILLがある人の周りには同じような人たちが集まり、会話が弾む。そんないい出会いの場になっていると思います」
「THE FLYING PENGUINS」の大きな特徴のひとつが「コネクター」という、日替わり店員の存在。日ごとに、多種多様な経歴を持つメンバーがお店に現れて、コミュニケーションを取りながら、お客さん同士をつないでいきます。
「コネクターもWILLがあるということは大切にしていますし、起業家やベンチャーキャピタル、新規事業に携わるビジネスマンなど、いい意味でキャラクターが立っている人たちばかり。その日のコネクター目当てでご来店されるお客さまが多いです」
コネクターが間に入ることで、ここでの出会いが仕事につながったり、好きな食や趣味を通じたコミュニティの広がりも。
「おもしろい人たちが混ざり合うのは本当に素晴らしいこと。コネクターの存在の大切さを実感します」と佐藤さんは話します。
この日のコネクターは、起業家、経営者のえみかさん。
佐藤さんいわく「新規事業・人材開発など、アートシンキングのコンサルティング会社を経営されていて、とても頭が切れる方。インプットとアウトプットの情報量がすごい!」とのこと。えみかさんを通じて、つながる人たちも多いと言います。
そんなえみかさんが思う、「THE FLYING PENGUINS」の魅力とは?
「まずこの場所がすごく特別だなと感じます。ドロップインで来られるお客さまが、多くの人が知る企業の社長さんだったりすることもあって。日本の経済が集中している八重洲・日本橋・京橋エリアだからこそ、本当にいろいろな方が訪れてくれるので、びっくりしますね。
また、私の場合は自分の会社のお客さまが来店してくれて、普段とは違うコミュニケーションが取れるのもいい。スタートアップの会社の方に、他のコネクターを紹介して仕事につながったことも。SNSなどで人と人のつながりが見えやすくなった気はするけれど、オンラインとは違う、リアルな場所のメリットがここにはあるなと思います」
●無類のお酒好き! お客さんと一緒に飲んだり、おいしいものの情報共有も
無類のお酒好きで、バーという場所との相性の良さはおりがみつきの佐藤さんですが、実は元CA。そのキャリアを通してローカルエリアの魅力を再認識し、バーを起点に、地域活性も目指しているそうです。
「私自身が長野県佐久市で育った地方出身者ですし、仕事や旅で日本各地へ出向く中で、有名な観光地だけではなく、知らない場所にも多くの見どころがあるなと。そこから、ローカルに興味を持ち始めました。お酒は何でも大好きですが、地元に日本酒蔵が13もあって、歴史があり地域の味が出る日本酒推し。お酒に人の思いが乗っているな、と感じます。
お酒は人と人とをつなぐツールにもなってくれると思うので『THE FLYING PENGUINS』のコンセプトは、私自身の思いとも重なりますね」
お酒に合うおいしいものにも目がないという佐藤さんが、出勤前に立ち寄るのが「窯焼PIZZAとワインの店 BOSSO 八重洲店」。ランチを食べに行ったり、テイクアウトをすることも。
「THE FLYING PENGUINS」はドリンクメニューのみで、フードの持ち込みが可能なので、近隣のおいしいお店として、お客さんにおすすめすることもあると言います。
注文したのは、房総の四季を表した4種の味が1枚で楽しめるスペシャルピッツァ「ピッツァボッソ」、三つ編みのように編み込んだモッツァレラが特徴的な「ナポリより三つ編み水牛モッツァレラとイタリア産16ヶ月熟成プロシュート」、田舎風の煮込み料理「和牛スネ肉と檸檬のスペッツァティーノ」の3品。
佐藤さんは、旬の食材をふんだんに使った、季節のメニューが特にお気に入りだそう。
会話が盛り上がり、お客さんと一緒にお酒を飲むことも。週1~2回はお店に足を運ぶというお客さんはーー。
「奈央子さんはお酒にしか興味がないみたいで(笑)。日本酒に詳しくておいしい銘柄を教えてくれたりと情報が豊富ですし、気さくで楽しい方。奈央子さんと話していると、いい気分転換ができてありがたいです」とその印象を話してくれました。
●リアルで人と出会える貴重さ。都道府県横断イベントで、つながるきっかけ作りも
6月からは、ローカルに興味がある佐藤さんの企画で、リレー形式の都道府県横断イベントを行っています。その都道府県にゆかりのある人を招いて地域のことを知ってもらい、その土地のお酒や食材を楽しみ、好評を得ているそうです。
「出身地やゆかりのある場所が同じだというだけで、すごく安心感があって、つながりやすい。共通項やつながりを大事にしている場としてコンセプトにぴったりだし、単純にテーマとして楽しいなと思います。このイベントが地方のひと・まちとつながるきっかけとなり、ひととつながったことで、そのまちのことを好きになる人を増やしていきたいです。
お店としては、会社員、サラリーマンが多い街なので、土日は人が減ってしまうんですね。土日にもこのエリアやお店に訪れてほしいし、普段来ない人にもぜひ来てほしい。愛着がある地方のイベントがあるから、という理由で来てくださる方も多いんです。イベントは、半分~2/3ぐらいは新しいお客様ですね」
「THE FLYING PENGUINS」が始まって約10か月。「人と人をつなぐ役割のおもしろさを実感しています」と佐藤さん。
「普通に生活していたら出会わない人と、本当にフラットにつながれる場所。たまたま隣に座ったとか、同じボトルからお酒を飲んだから、仲良くなれる。そんな人と人が交わる瞬間はとても貴重で、見届けられるのはうれしいですし、やりがいを感じています」
BOSSO 八重洲店
住 所:中央区八重洲1-4-16 東京建物八重洲ビル B1F
WEBサイト: https://bosso-yaesu.com/
執筆:野々山幸(TAPE)、撮影:島村緑