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〈はたらく〉 東京ワークライフスタイル
Front of style

|2019.05.29

日本橋エリアで夏の気配を楽しむ 自然を肌で感じて働く街


八重洲・日本橋・京橋エリアを中心に、この街で働く人々にお気に入りの過ごし方を伺う連載「Front of Style」。

今回は、無料巡回バス「メトロリンク日本橋」の運転手・杉田明彦さん、八丁堀でベーカリーカフェ「Cawaii Bread & Coffee」を運営する原田環さん、京橋にオフィスを構えるファームシップグループの冨高秀雄さんにお話を伺いました。


●水辺で気持ちを整え、バスの車窓から日本橋の景色に目を留めて
杉田 明彦さん(「メトロリンク日本橋」乗務員)

日本橋エリアを中心に巡回する「メトロリンク日本橋」は、誰でも利用できる無料の循環バス。14カ所の停留所を、約10分間隔で運行しています。

2004年にサービスを開始し、今年に入り累計利用者数が1000万人を突破。よく利用する方の間では、リアルタイムで運行状況がわかるアプリが好評です。

このバスの運転手を務める杉田明彦さん。約25年間、トラックの運転手として青森や新潟、山口など全国各地を巡ってきたそうです。2年前、妻の一言がきっかけとなり、50代を目前に「もともと最終目標だった」というバスの運転手に転向しました。

「今は東京の中心地を運転していますが、道路沿いの高層ビルを山に見立てれば、なんだか渓谷を走っているような気分になります。人も荷物も、責任を持って運ぶことは一緒ですね」。

バスの運転を始めた頃は「お客さんの体を出来るだけ揺らさないよう運転しよう」と意気込み、夜中に足がつって目が覚めることもよくあったのだとか。

杉田さんのお気に入りのスポットは、日本橋のたもと。停留所のひとつ「日本橋南詰(にほんばしみなみづめ)」で運転を交代するときは、少し早く来て、橋のたもとで川を眺めて気持ちを整えます。

「埼玉・秩父出身で、幼少期から川があるところで育ちました。水があって橋があって、そこにちょっとした緑がある場所は、なんだか心が落ち着くんです」。

トラックの運転手時代から何度も通っていたこの橋が「日本橋」なのだということに気がついたのは、バスの運転を始めてから。

「運転に必死だったからなのかな、今の会社で運転教習の最中、2回目に通ったときに『あれ? もしかしてこれがあの日本橋ですか?』と。指導官にも笑われましたよ」。

日本橋付近の街路樹の色づきに、季節の変化を感じるのも楽しみのひとつ。「手前の桜はもう咲いているけれど奥の桜はまだだな、なんていうちょっとした差も、毎日同じルートを運行すると目に留まります。これからの新緑の季節も楽しみですね」。

メトロリンク日本橋(日の丸自動車興業株式会社)
WEBサイト: http://www.hinomaru.co.jp/metrolink/nihonbashi/ 


●スパイスの効いたカレーを食べ、夏が近づく亀島川を散策
原田 環さん(カワイイファクトリー主宰)

水辺のある景色が、日本橋エリアの魅力のひとつ。ベーカリーカフェ「Cawaii Bread & Coffee」は、日本橋川の支流にあたる亀島川沿いに店を構えます。

オーナーは2人組のクリエイティブユニット「カワイイファクトリー」で活動する原田環さん。10年前、事務所を日本橋茅場町に移転したことをきっかけに、この街での生活を楽しんでいます。

アートやデザインに関する雑誌や書籍などの企画・制作を手がける傍ら、2014年に「Cawaii Bread & Coffee」をオープン。

「生活に根付いた通いやすいお店があったらいいのに」という思いを形にした同店では、国産小麦やオーガニック食材、自家培養発酵種を使った自家製パンと、こだわりの豆で淹れるコーヒーを提供します。

オープンに際しては、金沢21世紀美術館の共同設計者で知られる西沢立衛さんの建築設計事務所に物件のリノベーションを依頼。また、パンの材料は、有名シェフや食通が絶賛する岡山県の吉田牧場から仕入れるなど、これまで編集の仕事で築いてきた人脈が生かされたそう。

「『この人にお願いすればおもしろくなりそう』と思った各分野の専門家に力を借りて立ち上げたお店です。そういう意味では、店づくりは本や雑誌の編集とも似ているのかもしれませんね」。

食べることが大好きだという原田さん。「今日はカレー」と思い立った日に向かうのは、八丁堀駅近くの「KHADONO(カドノ)」です。

2012年にオープンしたカドノは、昼はカレー、夜はスパイスの効いた中東系の料理やワインを楽しめるバル。原田さんは7年ほど前から通っています。

ランチメニューは「ひき肉と野菜のカレー」と「海老と野菜のグリーンカレー」の2種類。この日はひき肉と野菜のカレーを選びました。

ナスやインゲンがトッピングされたカレーは、あっさりしながらもオリジナルブレンドのスパイスをしっかり感じられる味わい。「17時までランチ営業をしているので立ち寄りやすいです。夜に来たときは、お酒を飲んだ後に食べるのもまたおいしいですね」と、顔がほころびます。

「好きなものや世界観は、誰かに教えられるものではなく、長年かけて磨かれるもの。カドノの料理からは店主のスタイルが伝わってきて、信頼できるんです。彼も元は編集業界に身を置いていた方で、同業者ということもあり、何かと話が合いますね」。

食後に亀島川沿いを下流方面に下り、隅田川付近をぐるりと一周するのが、原田さんのお気に入りの散歩コースだそう。

「うちの店のテラス席も、今の季節が一番気持ちいいかも。暑すぎず、足元には薄桃色のシャクナゲが咲いていて、どこかのどかな雰囲気があります。夏が近づくとアシの葉がどんどん伸びて、また違った景色が見られますよ」。

Cawaii Bread & Coffee
住    所: 中央区八丁堀2-30-16 T&Yビル1階
WEBサイト: http://www.cawaiibreadandcoffee.com 

カワイイファクトリー
WEBサイト: http://www.cawaiifactory.jp 

WINE&CURRY STAND KHADONO
住    所: 中央区新富1-15-3 新富ミハマビル1階
WEBサイト: http://www.khadono.com 


●京橋での夕食は、同僚と和やかに沖縄料理を囲んで
冨高 秀雄さん(ファームシップグループ)

京橋駅直結のビル、京橋エドグランに入る食がテーマのシェアオフィス「SENQ(センク)京橋」。

入居企業のひとつ、株式会社ファームシップは、野菜などを施設内で計画的に育てる「植物工場」の開発事業や商品の流通、農業分野に関わる人材育成などを手がけています。

株式会社ファームシップのマーケティング部門に勤める冨高秀雄さんは、マーケティング戦略の企画を担当。IT企業でエンジニア職を務めたあと、カリフォルニアでの1年間の農業研修を経て、ファームシップグループに入社しました。

「祖父母、両親ともに兼業農家。私自身は、海外の農場で経験した大規模な農場経営やマーケティングの視点と、エンジニアの経歴を生かしながら農業に関わっています。異色のキャリアのように見られることもありますが、自分の中では自然とつながっているんです」。

社内の冷蔵庫には、サンプルや試食用の商品がずらり。「本日のお野菜」と書かれた社内販売の札も。この日は、数種類のレタスやケール、赤小松菜などが並んでいました。

休憩時は、外に出て京橋エリアを散策することも。「オフィスは、神田、東日本橋、京橋と移ってきました。ビルの合間を歩くだけでなく、路地で偶然見つけた画廊を覗いたりするのは、新鮮でいい気分転換になります」。

おいしい店を探すのも好きだという冨高さん。お子さんが生まれたばかりの最近はもっぱらまっすぐ帰宅するそうですが、この日は同僚を誘って久しぶりの飲み会に。

訪れたのは、東京スクエアガーデンの飲食店街にある「ナンクルナイサ きばいやんせー 京橋店」です。まずはオリオンビールとレモンサワーで乾杯!

学生時代にハンドボール部の大会で沖縄をよく訪れていたことや、友人が沖縄に住んでいることから、沖縄料理が好きなんだそう。「よく頼むのは、チャンプルとラフテー、あとはスパムを焼いた『カリカリポーク』です」。

外食でサラダを注文したときは、どんなレタスが使われているかなど、品種や野菜の取り合わせをチェックするようになったそうです。

ちなみに、工場栽培のレタスは、えぐみが少なくて食べやすく、鮮度が長持ちするのが特徴なのだそう。

「これまで青山や恵比寿のファーマーズマーケットに出店してきましたが、今後は京橋マルシェにも出店できたらうれしいです。エリアの方々とのつながりを増やしていきたいですね」。

株式会社ファームシップ
住    所: 中央区京橋2-2-1京橋エドグランサウス4階 SENQ京橋RoomF
WEBサイト: http://farmship.co.jp 

ナンクルナイサ きばいやんせー 京橋店
住    所: 中央区京橋3-1-1 東京スクエアガーデン 地下1階
WEBサイト: http://www.tksgroup.jp 

執筆:森夏紀、 編集:松尾奈々絵(ノオト) 撮影:小野奈那子(※日本橋南詰を除く)

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