大型再開発が進み、急速に生まれ変わる日本橋・京橋エリア。
土地の文化や記憶を受け継ぎながらも、未来へ向けた街づくりを目指すこの街は、洗練されたビジネス街でありながら、目抜き通りを一本入ると老舗も未だ健在で、古き良き日本の文化が残されています。なかでも、中央通りと並行する東仲通り、通称「骨董通り」を含む路地裏の一帯は、古美術・工芸・日本画・近代絵画・彫刻・版画など150軒近い専門店が集まり「アートの街」として知られています。
この街を舞台に行われる「東京 アート アンティーク〜日本橋・京橋 美術まつり」(以下、TAA)は、毎春恒例の地域密着型アートイベント。9回目の開催となる今年は4月26日(木)・27日(金)・28(土)の3日間、「骨董通り」を中心に、過去最高の89軒の参加ギャラリーが赤いフラッグを掲げ、扉を開け放して皆さんをお迎えします。この機会に、普段は敷居が高くガラス越しに眺めて通り過ぎていた老舗骨董店や格式高い画廊を訪ねてみませんか。
今回は、参加ギャラリーのオーナーでTAA実行委員も務める林田画廊の林田泰尚(やすなお)さんに、ギャラリー巡りの心得や美術品の楽しみ方、近隣の休憩スポットなど、さまざまなお話を伺いました。
◆ はじめに ◆
公式サイトやパンフレットで行きたいギャラリーをチェックしよう
──2018年で9年目を迎えました。TAAのこれまでと今年の新たな取り組みをお聞かせください。
とてもありがたいことに、毎年楽しみにされている方が増えています。有志が集まり手探りで進めてきたイベントながら、近隣企業のご協力もあり大きくなって、最近では、若い方や骨董初心者の方にも多くいらしていただくようになりました。
今年からの新たな取り組みとしては、ギャラリーの音声ガイドが取り込めるQRコードの設置があります。音声ガイドは、日本語・英語、店舗によっては中国語で対応しており、スマートフォンなどで聴きながらギャラリーを巡ることができます。
また、公式サイト上では、作家名や美術品のジャンルなど、お探しのキーワードでの検索ができるようになりましたので、気になるギャラリー事前に調べておくことをおすすめします。
◆ 楽しみ方 その1 ◆
会場となる日本橋・京橋エリアの歴史に触れよう
──日本橋・京橋での開催にどんな意味を感じていらっしゃいますか?
この辺りは路面店が多く、その中でも古美術商が比較的多いため、渋く落ち着いた雰囲気があります。城下町として発展を遂げた江戸時代には、職人や道具屋が集まり御用商人が行き交った場所。その名残からか、多くの愛好家が通い、育まれた店が多くなったようです。
また、イベント会場に出店するのではなく、自店舗で開催することにも意味があると思っています。歴史ある土地柄やギャラリーの雰囲気に触れて、アートを身近に感じていただき、イベント終了後もまた訪ねてきてほしいです。
◆ 楽しみ方 その2 ◆
美術品の並ぶギャラリー巡りの心得を知ろう
──ギャラリー巡りにあたって、なにか心得がありますか?
ごく当たり前のことですが、ギャラリーに入ったらまず挨拶をすることでしょうか。「こんにちは」と声をかけあったらお互い気持ちがいいですよね。誰でも初めての場所は緊張するものですが、まずは入ってきてください。TAAでは、街ぐるみで皆様をお待ちしています。
──目利きじゃない素人が行っても大丈夫でしょうか?
美術品を楽しむのは「良いとこ探し」と考えると良いですよ。
会話の糸口に、ご自身が、いいなぁ、気になるなぁと思った作品や表現を口にしてみるのもいいかもしれません。店内のものを気に入っていただけたら店側も嬉しいですし、お客様の好みがわかればおすすめしたいものが出てきます。うんと話が盛り上がれば、奥からとっておきの作品が出てくるかもしれません(笑)。
美術品は、ひとつとして同じものがない一点もの。本当に気に入る作品との出会いは運命の出会いといっても過言ではありません。とはいえ、なにも高尚なことではなく、家に持ち帰って眺めたり使ったりする楽しみは、一目惚れして購入したバッグや洋服と変わらないのではないでしょうか。気に入った美術品を所有している時間も価値のひとつなのです。
また、美術品は消費していくものではないので、飽きてしまったらこちらでお引き取りすることもできます。次の方への橋渡しをするのも我々美術商の役目だと思います。
──美術品・骨董を買うとは、どのような体験なのでしょうか
美術品は、何百年も前に作られて大切に受け継がれてきたものや、現在の作家が丹精込めて作り上げた作品です。美術品に対価を払い所有する体験は、古美術品にとっては次の代へつなぐ新たな愛蔵者となることで、現在の作家にとっては近い未来に名作を生み出す創作の支援となり、作品にとって最高の評価をすることです。
近頃はパソコンやスマートフォンを利用して実物に触れることなく買い物をする人も増えていますが、ギャラリーに足を運び美術品に触れることで、その作品が持つ力、美しさを五感すべてで感じていただきたいです。一目で恋に落ちるような作品に出会って、素敵!と感じる時間を楽しんでください。
──TAAを今後はどのようなイベントにしていきたいですか?
2020年に向けて、外国のお客様にも、日本橋・京橋エリアが伝統ある「アートの街」だと知っていただきたく、その準備を進めています。
ゆくゆくは、地方の同業者も集めてアートフェアのようなこともやってみたいです。
◆ 楽しみ方 その3 ◆
会期中のマイ・スケジュールを組み立てよう
会期中は、日本橋・京橋エリア各所で趣向を凝らした企画展やギャラリートーク、ワークショップ、チャリティ入札会などが行われていますので、公式サイトやパンフレットで事前にチェックしておくのがおすすめ。観たいものをスケジュール帳にメモしてプランをつくるのも良いでしょう。
準備が間に合わない!という方のために、TAA実行委員がおすすめするギャラリーを巡る「老舗コース」と「路地裏コース」をご紹介します。日本橋・京橋エリアならではの老舗名店の味巡りのお楽しみもプラスしていますので、ゴールデンウィーク直前の清々しいこの時期に、街を丸ごと楽しむアート散歩に出かけませんか。
(紹介店舗には、公式サイト及びパンフレット掲載のアートマップの番号を記載しています)
1)古くからの街並みと老舗を歩くコース
王道を行く!「骨董通り」を代表する3軒の老舗
「骨董通り」と呼ばれる東仲通りが八重洲通りにぶつかる手前の角地は江戸の浮世絵師 歌川広重の住居跡。この界隈が古くから「アートの街」であることを感じながら、川端康成、北大路魯山人ら多くの文化人が通った3軒の老舗を巡る王道コースです。
飯田好日堂(map.65)
創業1941(昭和16)年。茶道具を中心に幅広いジャンルの美術品を扱う。
通常は、古美術・茶道具・近代の数寄者を専門に取り扱うが、TAAのため特別にお手頃な価格で日常にも合う品を出品するため期間中は大盛況となることも。
開催中の展示は、「わくわく文房具」。
https://www.tokyoartantiques.com/iidakojitsudo/
しぶや黒田陶苑/魯卿あん(map.43)
創業1935(昭和10)年。北大路魯山人の陶芸作品を扱う専売店として開店。
店舗は、大正時代に魯山人が古美術店を開業し、後に「美食倶楽部」を併設した場所の跡地。
魯山人作品を中心に親交があった昭和陶芸の巨匠作家の作品などを扱っています。
開催中の展示は、「大藝術家 北大路魯山人展」。
https://www.tokyoartantiques.com/shibuya-kurodatoen-rokeian/
繭山龍泉堂(map.26)
創業1905(明治38)年。中国古陶磁専門の古美術商。
国内外の愛好家の信頼も厚く、川端康成が贔屓にしたことでも有名。
27日(金)・28(土)は、15:00からギャラリートーク「DOGU -土偶いろいろ-」を開催。
https://www.tokyoartantiques.com/mayuyama-co-ltd/
ー「老舗コース」を締めくくるお土産は…
桃六
創業1869(明治2)年。桃太郎団子、どら焼き、塩大福は素朴な手作りの味が人気です。店内のお菓子が手作りなのはもちろんのこと、餡子も自家製。お昼のお弁当販売も人気です。人気商品は午前中で売り切れることもあるのでお早めに。
http://guidetokyo.info/foodshoping/temiyage/03sweets.html
2)小さな路地と穴場ギャラリーを巡るコース
入り組んだ路地裏探索と隠れ家のようなギャラリー
この機会に路地裏にひっそり佇むギャラリーを訪ねたいという方に。雑居ビルに挟まれた僅かな空間にみつけた扉。勇気を出して入ったギャラリーで、店主の熱い想いに引き込まれていくことでしょう。
メゾンドネコ (map.52)
木造家屋の2階にある、「生きとし生けるもの」をテーマにした個性的で温かみのある展示を行うギャラリー。
開催中の展示は、同建物1階にある東洋の陶磁器とオランダのデルフト陶器の取扱店、「木雞(もっけい)」との共同企画展「Life on this planet」を開催しています。
https://www.tokyoartantiques.com/maison-de-neko/
古美術 花徑 (map.42)
日本、中国、朝鮮の仏教美術、陶磁器、漆芸品、考古遺物等を取り扱う。
ジャンルにこだわることなく、店主が「ときめき」を感じたものをセレクト。
開催中の展示は、「小さな額と小さな花器」。
チャリティ入札会にも参加、「阿蘭陀孔雀文皿」を出品中です。
https://www.tokyoartantiques.com/kakei-fine-japanese-asian-art/
四季彩舎 (map.29)
創業1996(平成8)年。ビル2階の絵画専門のギャラリー。国内外問わず、現存の作家を中心に取り扱う。
開催中の展示は、新進気鋭作家によるアニマルをテーマにした展覧会「♡Animals」。
https://www.tokyoartantiques.com/shikisaisha/
ー 歩き疲れたらほっと一息 路地裏の昭和レトロな喫茶店へ…
COFFEE LOTUS
中央通りに出れば、よく知れたチェーン店も多数ありますが、せっかくなので純喫茶はいかが。どこか懐かしい雰囲気漂う店内でコーヒーが召し上がれます。フルーツサンドも美味ですよ。
http://guidetokyo.info/foodshoping/relay/00222.html
ご紹介した店舗以外にも、道すがらたくさんのギャラリーがあります。
入り口の赤いフラッグを目印に、アートの街の探索をお楽しみください。
<イベント概要>
▼東京アートアンティーク
期 間:2018年4月26日(木)、27日(金)、28日(土)
時 間:各店舗の営業時間に準ずる
エ リ ア:東京都中央区京橋・日本橋を中心とした地域
美術店・画廊:89軒
主 催:東京アートアンティーク実行委員会
WEBサイト: https://www.tokyoartantiques.com/
▼林田画廊
住 所:東京都中央区京橋2-6-1
電話番号:03-3567-7778
営業時間:平日・土曜: 10:30〜18:00
定 休 日:日曜・祝日
WEBサイト: http://www.hayashida-gallery.co.jp/
もっと詳しくアート&クラフト市の様子をご覧になりたい方は、こちらの動画もおすすめです。
(製作:アート&クラフト市映像製作実行委員会)