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〈むかしみらい〉 地元企業物語
Campany's story in our town

|2016.09.21

Vol.2 コンタツ

「東京ローカル」を発信する、地域密着の老舗酒問屋。


酒類の総合卸を営むコンタツは、大手の商社や流通企業ではできない商品の開拓や、地域へのきめ細やかなサービスも行う、日本橋の老舗問屋だ。

その歴史は、大正13(1924)年にさかのぼる。関東大震災後の荒れた日本橋呉服町(現八重洲一)の地に、いち早く「近藤商店」を開いたのは、店主である近藤辰次。現在、浅草の「神谷バー」で知られる神谷酒造の創始者・神谷伝兵衛や、かねてから親交のあった大阪の松下商店などから援助を受けて、洋酒缶詰食品問屋として開業した。ところが、わずか10年後の昭和9(1934)年に近藤が亡くなり、創業時から支配人をしていた津久浦慶一が後を継ぐ。

法人化が進められた昭和14(1939)年、「株式会社近藤辰次商店」と、創業者の名を残したことは、近藤に対する感謝や創業当時の想いを忘れないための決意があったからなのかもしれない。その2年後には太平洋戦争に突入し、酒類も配給制となる。卸売業も中止されたため、副業で軍納のたくあんの製造をするなど、会社を必死で守ろうとする姿勢もうかがえる。しかし、空襲で本社が焼失。戦後の不況期から高度成長期まで、一代、二代と地道に問屋業を続けながら、昭和40(1965)年には、本社ビルを構え、46(1971)年、「コンタツ株式会社」に商号変更された。

平成17(2005)年に三代目を継いだ津久浦慶明氏は、大手商社との競争も増す中、あえて「『東京の酒屋との取引店舗数がナンバーワン』と言っていい強みを活かして」(津久浦社長)、「東京ローカル」を旗印にした事業に着手。酒造との新たな商品開発や、販促に繋がるイベントの企画などを開始した。なかでも昨年三月に発売されたクラフトビール「TOKYO BLUES」は、「東京らしいビールをつくろう」と、東京・福生市で江戸期から商いを続ける石川酒造と組んで開発された。ブルースのセッションのように二つのモルトを組み合わせた柑橘系のさっぱりとした味わいで、和食にも合うテイストに仕上げられている。

さらに「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」という品評会も開催し、「世代」「料理ジャンル」「国」の3つのボーダーを超えた新トレンドもつくり出している。創業から九十二年。昔から変わらない地域密着の問屋の強みを活かした、新たな開発を進めていく。

コンタツ株式会社
住所: 中央区八重洲1-1-8
TEL: 03-3281-1321
交通: 東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅から1分、半蔵門線三越前駅から3分
WEBサイト: http://www.kontatsu.co.jp/


TEXT: 大谷みさ子
東京人2016年7月増刊より転載

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