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〈さんかする〉イベントレポート
Event report

|2023.09.01

地元の飲食店から回収した廃油とコーヒーカスから、土に還る「鉢」作りを体験

夏休みが始まったばかりの 7 月下旬。東京・京橋にある「TOKYO IDEA EXCHANGE」で行われたのは、地元の飲食店から回収した廃油とコーヒーカスを使い、土に還る「鉢」を作るワークショップ。全 3 回行われたイベントでは、親子で「SDGs」や「廃物利用」について考え、一緒にものづくりを楽しむ姿が見られました。


ものづくりの街・京橋で地産地消型のリサイクル

ワークショップが行われた「TOKYO IDEA EXCHANGE」

ワークショップが行われた東京・京橋は、江戸時代に武家屋敷で使う畳や襖、武具などを作る職人たちが多く暮らした職人街。そんなものづくりの DNA を現在まで受け継ぐこの場所に、2020 年にオープンしたのが「TOKYO IDEA EXCHANGE」です。3D プリンターやレーザーカッターといった最新の機材を取り揃えた施設で、ワークショップやイベントを実施するなど、ものづくりに関わる企業や人の交流拠点となる「場所」を提供しています。
 

このイベントを主催したのは、TOKYO IDEA EXCHANGE コミュニティ主催者で株式会社東京メイカー代表取締役社長の毛利宣裕さん。地元の飲食店から廃物を使って何かできないかと相談を受けたのがきっかけでした。

「最初は廃油を 3D プリンターで使用する材料にするといった方法を考えましたが、逆にコストがかかったりとなかなか良い利用法が見つかりませんでした。そんな時に目を付けたのが環境問題の観点から近年、注目を集めているバイオプラスチック。同じく地元で出るコーヒーカスと合わせて地元で出た廃物をリサイクルする、夏休みの自由研究になるようなワークショップをしたらおもしろいんじゃないかと思いました」(毛利さん) 

そんな毛利さんから相談を受け、今回の講師を務めたのが小野正晴さんです。小野さんはメーカーにデザイナーとして勤務する傍ら、3D プリンターによる新しいものづくりを追究し、さまざまな作品を生み出しています。

「毛利さんからお話をいただいて、とてもおもしろい取り組みだなと思いました。地元で出た廃物をそこでリサイクルする。運送エネルギーもかからない地産地消のリサイクル、まさに小さなエコシステムじゃないですか。今回の土に還る鉢の作り方は、研究機関が公開しているレシピをもとに考えました」(小野さん)

左)主催者で、東京メイカー代表取締役社長の毛利宣裕さん
右)講師の小野正晴さん

このようなアイデアの連鎖が形になったのが今回のワークショップ。ここで、レシピの材料を提供してくださった地元飲食店をご紹介します。

左)右にいらっしゃるのが 「割烹 嶋村」加藤仁さん
右)左にいらっしゃるのが「GOOD COFFEE FARMS Cafe& Bar」 高見澤肇さん

東京・八重洲にある「割烹 嶋村」は創業 173 年の老舗。毎日たくさんの天ぷらを揚げる際に出るのが、今回提供していただいた廃油です。

「(試作で作られた鉢を見て)廃油からこんなにかわいらしい鉢ができるんですね。最近では天ぷら油を航空燃料にするような話もあり、飲食店から出る廃油がさまざまなところで利活用していただけてうれしいです。飲食店は油に限らず廃棄物がでるので、そうしたものの利活用を私たちも一緒に考えていきたいと思いました」(「割烹 嶋村」取締役 加藤仁さん) 

コーヒーカスを提供してくださったのは東京・日本橋にある「GOOD COFFEE FARMS Cafe& Bar」。2022 年にオープンしたこちらは、小規模コーヒー生産者とともに、環境負荷を最小限にして作ったコーヒー生豆を世界のロースターや消費者に直接届けている「GOOD COFFEE FARMS」のコンセプトショップです。

「コーヒーカスの活用については、当社でもコーヒーカップやコースターなどにアップサイクルしています。ただコーヒーカスは廃棄する量が多いので、ほかにもさまざまな活用ができればと思います。こうしたアップサイクルが地産地消でできるのはとても素敵ですね」(「GOOD COFFEE FARMS Cafe& Bar」ストアマネージャー 高見澤肇さん)


子供でもできる! 廃油+コーヒーカスで土に還る「鉢」作り

時折メモを取りながら、毛利さんと小野さんの話に真剣に耳を傾けるあつのりくんとあかりちゃん

今回のワークショップ「‐飲食店から出た廃油とコーヒーカスで作ったバイオプラスチックで‐ 土に還る鉢を作って植物を植えよう」は、この日 3 回実施されました。最終回の参加者は、あつのりくん(10 歳)、あかりちゃん(6 歳)とお母さんの 3 人。
 

はじめに講師の小野さんからバイオプラスチックと、世界で行われている環境問題への取り組みについてお話ししていただきました。

バイオプラスチック(生物資源を原料に作られる「バイオマスプラスチック」と微生物によって水と二酸化炭素に分解される「生分解プラスチック」の総称)と普通のプラスチックの違い。プラスチックをたくさん作ったことによってそのゴミが問題になっていることや、燃やすとCO2 が発生して地球温暖化の原因になっていること。これらの問題を解決するため、地球にやさしいバイオプラスチックが注目され、プラスチックの代わりに使われることが増えていることなどを、スライドを使いながら分かりやすく説明していきます。所々、大人でも少し難しい内容がありましたが、あつのりくんとあかりちゃんは真剣な顔で話に耳を傾け、気になったところをメモしていました。

さらに小野さんご自身が関わるファッション業界についても話は及びます。世界の企業ではどのような取り組みが行われているのか。例えば、落ち葉を繊維にして作られたパッケージ、プラスチックの代わりに石けんを使って作られたシート、リユースされる羊毛を使った梱包材、きのこの菌糸を使った緩衝材など、ユニークな取り組みの数々には、お母さんも興味津々でした。 

プラスチックとそれによる環境問題についてしっかり学んだところで、いよいよ鉢作りがスタート!

廃油とコーヒーカスのほかに使うのは、アルギン酸ナトリウム、ワセリン、寒天、塩化カルシウムなど体に害のない優しい成分のものばかり。まずは毛利さんの指示に従って、バイオプラスチックの材料を量り、混ぜていきます。

この計量が適当だったり、混ぜ方があまいと、鉢の出来に影響が出るとのこと。あかりちゃんもお母さんに手伝ってもらいながら、上手に材料を混ぜることができました。

左)廃油とコーヒーカスを量り、ほかの材料と混ぜ合わせていくのですが、ムラなくきれいに混ぜるのがなかなか難しく、少し苦戦中
右)混ぜた材料を型に入れて鉢の形を作ります

材料が混ざったら、事前に 3D プリンターで作成してあった型(外枠・内枠)に塩化カルシウムを溶かした液体を吹きかければ、型の準備も OK。外枠に混ぜた材料を入れ、上から内枠をグッと押し込み、外枠・内枠の 2 つの型で挟んで鉢の形を作ります。

液体に沈め、中で型から外していきます

最後に塩化カルシウムを溶かした液体を入れたバケツの中で、型ごと液体に沈めて、型を外したら、今日の作業は終了です。


完成は 1 週間後のお楽しみ。家で植物を育ててみよう
 
作った鉢は形が崩れないように紙コップにかぶせた状態で、あつのりくんとあかりちゃんのおうちへ。風通しのよい場所で 1 週間ほどじっくり乾燥させたら完成です。

バイオプラスチックや環境問題の話から鉢作りまで盛りだくさんの内容でしたが、参加してみての感想も伺いました。

風通しのいい暗所でじっくり乾燥させるのがきれいに仕上げるコツとのこと

「楽しかったです! 途中、混ぜた材料が少し硬くて型に入れるのがちょっと難しかったかな。型から外す時に少し割れてしまったところがあるので、自分では 90 点くらいの出来。学校のSDGs の授業では環境問題はまだやっていないけど、今日のメモと写真をまとめて、夏休みの自由研究にします」(あつのりくん)

「量るところが難しかったけど、楽しかった。(乾燥して完成したら)この鉢でにんじんを育てたいです」(あかりちゃん)

「環境問題について分かりやすく掘り下げてお話いただいたので、特にお兄ちゃんは興味を持って聞いてくれたと思います。普段から学校の授業で習った貧困や差別などの問題についての話をしてくれるんですが、環境問題についても考えるいいきっかけになりましたね。夏休みには、自分でも SDGsについて調べて、ここからもっと広げていってくれたらいいなと思います」(お母さん)

家に帰っても自由研究をまとめたり、完成した鉢で植物を育てたりと、このワークショップをきっかけに、これからの夏休みの楽しみがさらに増えたようです。

関連サイト
TOKYO IDEA EXCHANGE: https://idea-exchange.tokyo
東京メイカー facebook: https://www.facebook.com/search/top/?q=東京メイカー

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