旅に出ると誰かに便りを出したくなる人も多いのでは?
「こんなことをした」「こんなものを食べた」と、日記代わりにSNSに投稿するのもいいけれど、ふと思い浮かんだあの人だけに今日の"記憶"を伝えるなら、こんな特別なポストカードはいかがだろうか————。
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旅館を開業して120年を迎える老舗「龍名館」では2012年から「ART RYUMEIKAN TOKYO」を打ち出し、東京駅を臨んで建つ「ホテル龍名館東京」と「ホテル龍名館お茶の水本店」を中心に様々なアート活動を行っている。
ホテル龍名館東京を運営する株式会社龍名館専務取締役・濱田裕章さんは、「ホテルのディスプレイとしてのアートではなく、ホテル滞在の延長線上にあるアートだからこそ、私たちが介在する意味があると考えています」と話す。
宿泊客にアートを身近に感じてもらう龍名館の取り組みのひとつに、客室設置のポストカードがある。
宿泊した部屋にポストカードがあれば、自然と手が伸びるだろうし、ホテルには落ち着いた心で筆をとる時間が流れている。しかも、そのポストカードが「東京」をテーマにデザインされていたらどうだろう。東京の風を大切なあの人に届けてくれる特別な一枚になるに違いない。
今回取材した「TOKYO POSTCARD AWARD」は、龍名館が主催する「東京」の魅力をアートで伝えるポストカードのデザインアワードだ。受賞作品はポストカードになりホテルの客室に置かれる。
「応募作品は抽象的なものもあれば、浅草やタワーなどのわかりやすいものなど様々です。東京というのは先進的なものと古き良きものとを兼ね備えている面白い街。作品を通じて、東京の魅力を再発見していただけると嬉しいですね」。(濱田さん)
2012年のスタートから、今回で7回目となる「TOKYO POSTCARD AWARD 2019」は「東京から生まれる」がテーマ。385件の応募作品の中から7作品が選ばれた。
3月4日(月)、ホテル龍名館東京で行われた授賞式では、審査委員長・芹沢高志さん(P3 art and environment統括ディレクター)が「このアワードはただ受賞作品を飾るだけではなく、印刷して部屋に置くことで使ってもらうことができる。ホテルの中の一部として組み込まれていることが素晴らしいと感じています」とスピーチ。
過去、宿泊客の旅の思い出とともにホテル龍名館東京から世界中に発送されたポストカードの中には、フランスの香水メーカー大手の目に留まり、そのパッケージデザインの注文を受けたアーティストもいたそうだ。
授賞式のあとに開かれた講評会には、芹沢審査委員長とともに大賞および優秀賞の受賞者が登壇。
栄えあるART大賞は、鮮やかな赤が印象的な切り絵の作品『Ring of Life』。綺麗なレースの円形が美しい作品かと思いきや、近づいてみると東京、有楽町、新橋…と山手線の全駅名が環状につながっているのだから驚きだ。また、浮かび上がっているようにも見えるデザインは、二次元のポストカードに対して変化球のアプローチであることが評価された。
作者の金子友里香さんは北海道在住。「上京するたびに新しい進化を遂げている東京を表現するのに、東京の交通機関の象徴である山手線の駅名はモチーフとしてぴったりだと思いました」と話した。
一方の優秀賞作品『The Light of Tokyo』は柔らかな色使いが特徴的な作品だ。東京の光を切り出し、青・赤・黄色の三原色で装飾することで夕暮れから夜にかけての時間帯を表現。光を濃いグレーの直線で表現することで便箋のように使うことができる。
メッセージを書き込むことで文字と絵が融合し、作品として完成することを見越したという作者のMakoto Dejimaさん。「『アート』というと絵柄のみで作られてしまいがちだが、ポストカード本来の役割に立ち返らせるもので、ハッとさせられた」と講評があった。
アーティストたちの「東京」を見つめる新鮮な眼差しを感じられる、魅力あふれる作品が揃った「TOKYO POSTCARD AWARD 2019」。他では手に入らないポストカードに「東京」の思い出をしたためて、東京駅至近のホテルから送る。そのこと自体が特別な思い出になりそうだ。
TOKYO POSTCARD AWARD主催:株式会社龍名館
関連サイト
株式会社龍名館: https://www.ryumeikan.co.jp/
ART RYUMEIKAN TOKYO: https://www.ryumeikan-tokyo.jp/art-ryumeikan-tokyo/
ホテル龍名館東京: https://www.ryumeikan-tokyo.jp/