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〈たべるかう〉 拍手喝采!「褒められ手みやげ」
Nice souvenirs of Tokyo

|2017.12.19

Vol.7 お正月のご挨拶には、和の心を贈ろう

[榮太樓總本鋪 日本橋本店] & [山本山 日本橋本店]

案内&文/瀬川慧  撮影/工藤睦子

手みやげのなかでも“お年賀”ともなれば、年始の挨拶にふさわしい伝統ある老舗の品を贈りたいもの。ならば東京では、名店が軒を並べる日本橋へと足が向く。

江戸名物の“榮太樓の金鍔”と“西河岸大福”は鉄板の手みやげ


文政元(1818)年創業の「榮太樓總本鋪 日本橋」は、今に残る江戸育ちの菓子舗として知られる店。ことに有名なのが、刀の鍔(つば)を象った丸い“名代金鍔”で、江戸・安政年間に、小さな屋台で金鍔を焼いて売り出したのが始まりだという。小指の先ほどの小麦粉を練った生地で、箔のように薄く餡を包み、丸く成型したものを胡麻油で香ばしく焼く伝統の技は、現在も変わらない。個包装タイプとは別に、日本橋本店と日本橋三越店だけで買い求めることができる、日持ちのしない手づくりの生金鍔は売り切れ仕舞いの知る人ぞ知る限定品だ。

これに合わせて贈りたいのが、ファンの多い“黒豆大福”。お菓子好きの友人をして「ここの黒豆大福が、世の中の黒豆大福の基本」とまで言わしめたもの。
程よい柔らかさの黒豆と小豆餡がぎっしり詰まった大福は、黒豆の塩け、ちょうどいい餡の甘さがクセになる逸品である。

もともと榮太樓初代が世に売り出した大福餅は、当時、日本橋際にあった魚河岸の若衆が激しい仕事の後に、空腹を満たすのに格好な甘い生菓子として評判になり、“西河岸大福”と呼ばれ親しまれたもの。「せっかちな江戸っ子に食べやすく」と、考案された歯切れのいい餅が特徴だ。
名代金鍔と並んで、江戸っ子たちの手軽なおやつだった、この2つの生菓子を箱に詰め合わせてもらい、熨斗をつけてお年賀に。包みを開いたときの相手の笑顔が目に浮かぶ。熱いお茶をいただきながら、江戸・日本橋にあった魚河岸の昔物語などでもしてみようか。

写真左:手焼きの生金鍔(1個249円)。 写真右:黒豆大福(1個227円)。

写真左:江戸菓子“名代金鍔”(1個227円)と“黒豆大福”(1個227円)を詰め合わせて。写真の、手焼きの生金鍔は日持ちがしないため、日本橋本店と日本橋三越店(1個249円)だけで買い求めることができる。同じ個包装タイプもある。
写真右:お年賀用の包装。

また、「東京みやげ」といえば、思い浮かぶのが“榮太樓飴”。こちらも江戸の庶民には高価だった有平糖を、もっと気軽にという思いから誕生した。

「鋏で切った紅色の飴を、口内を傷つけないように指でつまんで三角形に」したその大きさと色形が、酸っぱい梅に似ていたことから、洒落好きな江戸っ子が“梅ぼ志飴”と命名。上方の芸妓や舞妓が飴を唇に塗ってから口紅をつけると、唇が荒れずに紅に照りがでるといって、東京みやげに喜ばれたという逸話もあるとか。いわば、江戸版の“リップグロス”。何とも甘く粋な話である。

今では、黒飴、抹茶飴、紅茶飴、のど飴、果汁飴もラインナップに加わり、シリーズを賑わせている。上品な甘味の色とりどりのどこかハイカラな飴は、日本中で愛されている名品だ。

写真左:梅ぼ志飴と黒飴の詰め合わせ“名橋日本橋缶”(2缶入)1296円。榮太樓總本鋪が所蔵する明治44年の「日本橋開通記念絵はがき」と、初代歌川広重の「日本橋より富嶽遠望図」がデザインされた缶は、日本橋のおみやげに最適。
写真右:お年賀用の「お獅子(梅ぼ志飴・黒飴 13粒入)」緑・紫各594円。

写真左:お年賀用の「榮太樓飴 江戸初春」。左は宝船(黒飴9粒入)、右は干支(梅ぼ志飴9粒入)の2個入りで713円。
写真右:渋皮栗をとろけるしぐれの黄味餡と風味豊かな小豆餡で包んだ、日本橋本店限定品の「楼(たかどの)」は、お年賀にぴったり。2個入り1750円。

写真左:ショーケースを見て、手土産を選ぶ瀬川さん。 写真右:入り口は紺藍染の日除け暖簾と、江戸の金鍔屋台を模した屋台が目を引く。

贈り物の定番、お茶と海苔で新しい年を寿ぐ


煎茶と海苔の名店「山本山 日本橋本店」も、また、清々しい新年にぴったりの贈り物が数多く揃う老舗である。

江戸から全国へ拡がる五街道の起点“お江戸日本橋”として庶民に親しまれていたこの地に、初代・山本嘉兵衛が山城国(現・京都南部)宇治山本村から上京し、「鍵屋」の名で宇治のおいしいお茶や茶器類、和紙類を扱う店を開いたのは、元禄3(1690)年のこと。
以降、代々の当主が茶商として江戸庶民に煎茶を広め、六代目の頃に当時爆発的人気を博した自園栽培のお茶「山本山」にあやかり、屋号を「山本山」と改めたという。

写真左:ショーケースにはさまざまな種類のお茶が並ぶ。
写真右:産地の異なる茶葉を配合してつくる“合組”は、安定した品質のおいしい煎茶。左は「合組煎茶 天下一」100g2700円。右は「合組煎茶 山本山」100g1620円。

写真左:包装紙の裏にも、歌川広重の「東海道五十三次 日本橋」の絵や、江戸時代の江戸の地図が描かれている。包装を解いたときのちょっとしたサプライズになる。
写真右:缶を巻く紙の裏側には、合組へのこだわりとおいしいお茶の淹れ方が書いてある。

江戸時代から続く老舗の矜持は、“合組”と呼ばれる産地の異なる茶葉をブレンドした煎茶をいただけば納得がいく。通常、茶葉は天候によって旨味、渋味、苦味などが左右されてしまいがちだが、さまざまな産地の茶葉をブレンドし味の均一化を図ることで、年間を通じて安定した品質のおいしいお茶が楽しめる。

これはワインでいうところの“アッサンブラージュ”と同じ。むろん、職人その熟練の技術がものをいう。一煎目から三煎目まで繊細で馥郁とした味を楽しむことができる、この“合組煎茶”は、毎年、美しい着物姿で迎えてくれる茶人の友への手みやげである。

写真左:風味豊かな“あさくさ”の「海苔詰合せ 焼海苔 手巻き焼海苔」5400円。
写真右:酒肴としても喜ばれる「おやつ海苔 詰合せ2缶セット」しらす、ごま各15g詰1080円。

写真左:上質な海苔のおいしさが味わえる、木箱入りの薄手の煎餅「のりせんべい(10枚入)」1080円。
写真右:お年賀用の包装。

お茶と並んで人気の海苔も贈り物の定番。山本山の高級海苔の“あさくさ”は、口に含むとサッと溶けて深い風味が口に広がる。おやつや酒肴にぴったりの“のりせんべい”は、煎餅というより、むしろおいしいパリパリの海苔を食べている感覚。木箱入りのパッケージも新年を寿ぐご挨拶にふさわしい。

お年賀をお渡しする際には、おめでたい紅白や金糸の水引をあしらったカードや、共にいただくシャンパーニュやワインを考えるのも楽しい。
初春の草花も一枝添えて、心尽くしを。世代を超えて伝えたい、お年賀の手みやげ。
日本橋には、まだまだそんな逸品が数多く揃っている。

写真左:お年賀の話がはずむ瀬川さん。
写真右:江戸情緒が感じられる、ゆったりした店内。併設の喫茶室では、日本茶や抹茶などが楽しめる。

案内人プロフィール:瀬川慧(せがわ・けい)
フリーランス・ライター。プレジデント社『dancyu』、世界文化社『家庭画報』、都市出版『東京人』などの月刊誌を中心に、料理、ワイン、食文化、旅、歴史、などをテーマに、国内外において取材・執筆。単行本の企画・編集・執筆に、『日本料理 銀座小十』(世界文化社)、『野﨑洋光の野菜料理帳』、『里山に生きる「土樂」の食と暮らし』、 『懐石小室に教わる 一生ものの和のおかず』(ともに、家の光協会)、『よりよく生き延びる─3.11と男女共同参画センター』(新潮社図書編集室)など。

INFORMATION

榮太樓總本鋪 日本橋本店

住所
中央区日本橋1-2-5
電話番号
03-3271-7785
営業時間
9時30分~18時
定休日
日曜、祝日
年末年始は12月31日~1月2日
Webサイト
http://www.eitaro.com/

山本山 日本橋本店

住所
中央区日本橋2-10-2
電話番号
03-3281-0010
営業時間
10時~18時(6、7、11、12月は、10時~19時)
定休日
無休(元日除く)
Webサイト
https://www.yamamotoyama.co.jp/

※本文中の価格はすべて税込価格です

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