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〈むかしみらい〉 地元企業物語
Campany's story in our town

|2020.07.14

地域活性化を縁の下で支える「さとふる」が、ふるさと納税の仕組みで支援の可能性を広げる

半年に迫るコロナ禍は、多くの人の暮らしに打撃を与え続けている。そうしたなか、株式会社さとふる(本社:中央区京橋)は5月8日、同社が運営するふるさと納税サイトを通じた「大阪府新型コロナウイルス助け合い基金」寄付が1億円を突破したと発表。寄付受け付け開始からわずか9日間のことだった。

地域色豊かなお礼品が話題となり、一般に広く定着した「ふるさと納税」だが、次々起こる大規模な自然災害や新型コロナウイルス感染症のような不測の事態に対応した社会貢献の窓口として、新しい役割を担うようになってきた。それはまさに同社が常に考えてきた“地域社会への貢献”につながる新しい道筋ともいえるだろう。

ビジネスの出発点から、基幹事業とは異なるチャレンジングな取り組みまで、さとふるの企業活動を概観するとともに現場の想いを知るべく、地域協働事業推進部に所属し、広報を担当する道岡志保さん(写真左)、坂平由貴さん(写真右)に話を伺った。


ITの力で、地域の皆さんが本来の仕事に集中できる環境を

人口減少に伴う税収減を補うためのひとつの手段として、近年多くの自治体が取り組んでいるのが「ふるさと納税」による歳入の確保だ。2015年には制度改正がなされ、ふるさと納税の控除上限額が約2倍に拡充。各自治体のふるさと納税受入件数が急速に高まりつつあった2014年、株式会社さとふるは設立された。

「ふるさと納税の手続きには寄付者の個人情報管理や、お礼品の在庫管理や配送、お問い合わせ対応といった細かい対応が必要な部分が多いため、自治体職員の方々から業務負担の大きさを嘆くお声を伺っていました。一方で、弊社の母体であるSBプレイヤーズ株式会社は、『ITで地域社会に活力を』を企業理念とする会社です。持っているノウハウを活かし、ふるさと納税サイト『さとふる』の立ち上げとともに、煩雑で多岐にわたるふるさと納税業務の一括代行サービスを開始しました。そうすることで、職員の皆さんは本来注力すべき地域住民の暮らしのサポートに、お礼品を扱う事業者の皆さんは商品の製造や企画開発に集中できるようになる。それによって起こる、より一層の地域活性化が弊社の目的でもあり、喜びでもあるのです」(坂平さん)。

ふるさと納税サイト『さとふる』の運営を通じて、寄付の募集や寄付金の収納、寄付者の情報管理、お礼品の在庫管理や配送、お問い合わせ対応など、ふるさと納税に関わる一切の業務をワンストップで代行

お礼品、すなわち地域産品の魅力が磨かれることで、提供事業者の売上増加の可能性が高まる。そうして地元から得られる税収とふるさと納税の寄付によって、住民サービスの向上を行うことができる。地域の特色あるお礼品の品質・魅力の向上は今や自治体にとって大きな課題だ。

「例えば写真の撮り方を少し変えるだけで、そのお礼品の魅力が伝わりやすくなりますし、緩衝材の入れ方や化粧箱の工夫で、配送時に壊れてしまうなどのトラブルも防げます。お礼品を扱う事業者には、今までB to Bのビジネスがメインだった方々も多くいらっしゃいますので、不慣れなB to Cにおける留意点などをアドバイスさせていただくことも、弊社の業務の一環となっています」(坂平さん)。

寄付の募集や申し込みを受け付けるWebサイトのユーザビリティも、さとふるでは強く意識している。どの自治体のどのお礼品を選んでも、同じフローで寄付を行うことができる点や、決済方法をクレジットカード払いやコンビニ払い、ペイジー決済ほか、選択肢を多様化した点など、多くの人に寄付をしてもらうことで自治体を応援してもらいたいという想いが表れている。

2019年10月に行われたさとふる主催の「ふるさとまんぷく祭」には多くの自治体が参加し、盛況を博した。さとふると各自治体の強い信頼関係が窺える

ふるさと納税を地域での持続可能な経済循環につなげる

さとふるの拠点は東京・京橋の本社と、大阪、福岡、北海道の4ヶ所。各事業所に約30名程度のスタッフがいる。その地域に思い入れがある社員によって活性化を推進していきたいという考えから、現地採用のスタッフが多いそうだ。

「京橋をはじめ、どの拠点もアクセスのよい場所にあります。弊社が行うサービスの多くは遠隔でも行えますが、『一緒に地域活性化していく』という想いがありますので、なるべく自治体との距離が近いところにスタッフがいて、現地に足を運んでお困りごとを聞いたり、お礼品の開発やブラッシュアップのご相談にも乗れるように、各地に拠点を設けました。特に京橋は東京駅に近いため、自治体や事業者の方が会議や商談で東京に来られたついでにお立ち寄りいただきやすく、また私たちスタッフもフットワーク軽く現地に向かうことができます」(道岡さん)。

ふるさと納税は物販ではないが、地場産業の新たなチャンスにもつながっているという。

「お礼品を受け取ったお客様が、その後ふるさと納税とは関係なく商品のリピーターになってくださったり、包装を工夫したことで贈答品としての需要が生まれたり。オンラインショップを開設された事業者の方もいらっしゃいます。さらには、お礼品に選ばれたことで月々安定した収入が見込めるようになり、人手を増やした結果、各地へ営業に行けるようになって販路を拡大できたなど、嬉しい発展があったというお礼品事業者様のお声も多くあります。地場産業の振興で雇用が生まれることも地域活性化には非常に重要なんです」(道岡さん)。

左)「地方移住に憧れを持っている。魅力的な地域を増やすお手伝いがしたい」という坂平さん
右)「ふるさと納税を切り口に、地域と人を結ぶ仕事がしたい」という道岡さん

非常事態にこそ、寄付者の善意をいち早く自治体に届けたい

さとふるの自治体に対する支援はふるさと納税に限らない。そのひとつが2019年に発表された、全自治体への災害支援を可能にする災害支援協定「むすぶアクション」だ。

「台風や地震などの災害が起こったときに、その地域を支援したいという方は大勢います。『さとふる』ではそういった声にお応えするとともに、被災自治体を即時支援することを目的に災害時に寄付受け付け窓口を迅速に立ち上げるなどしてまいりました。この窓口を使用いただくと、翌月末に自治体に寄付金が届きます。また、寄付の募集にかかる費用を無償とし、また寄付決済手数料をさとふるが負担しているため、寄付いただいた全額を自治体に届けることが可能です。しかし、対象とできるのが平時より『さとふる』で寄付受け付けを行っている自治体に限定されるという課題がありました。そこで弊社では、普段寄付を受け付けている自治体以外でも、いざというときに寄付金を集めて迅速に入金できる災害支援協定『むすぶアクション』という取り組みも行っています。協定を結んでいただくことで、災害発生時に迅速に寄付を受け付けることが可能となります」(坂平さん)。

左)あらゆる立場の人々を結び、皆で復興に向けてアクションを起こそうという想いが込められた「むすぶアクション」
右)災害緊急支援募金サイトの事例。今も多くの人が避難生活を送っている、九州北部地方を中心とした豪雨災害に対する支援サイト(下画像)では、7月9日時点で25自治体の寄付受け付けを行っている

そして今年、新型コロナウイルスが猛威を振るい、各地で医療従事者の奮闘によって多くの命が救われた。感染症対策の最前線で戦う医療従事者などを支援したいという人々の思いに応え、新たに「新型コロナウイルス医療対策支援寄付サイト」を開設。7月6日現在、15府県がこれを利用しており、寄付総額は約3億5,800万円となっている。

「こちらは、新型コロナウイルスに関連した医療対策を実施する自治体の支援を目的に開設し、1,000円から1円単位で好きな金額を寄付していただくことができます。本サイトの寄付募集について自治体から弊社に費用をお支払いいただくことはなく、寄付決済手数料も弊社が負担するため、皆様から頂いた寄付金額がそのまま自治体に届きます。過去の災害緊急支援寄付の実績からも、寄付を受け付ける窓口の立ち上がりが早ければ早いほど、寄付金が集まりやすいということがわかっていますので、ふるさと納税サイトを活用することで、迅速に対応できることが大きなメリットになります」(道岡さん)。

自粛解除となったとはいえ、県をまたぐ移動を危惧する声はまだまだ多い。地方に旅行者が戻ってくるのは当分先の話になりそうだ。さとふるは地域活性化を今後どのようにサポートしていくのだろう。

「自粛期間中に各地域の美味しいものを取り寄せたという方も多いのではないでしょうか。今後もその流れは続いていくものと思われます。弊社では、運営する地域情報サイト『ふるさとこづち』の充実や、ふるさと納税のお礼品提供の仕組みだけでなく、特産品の取り寄せをより手軽に利用できるようにするための施策、特産品提供事業者の皆さんがB to BからB to Cへ事業を拡大していくためのフォローにこれまで以上に力を入れてまいります。そうして地域の価値を高めながら、地域と首都圏、地域と世界を結ぶハブの役割を果たしていければと思います」(坂平さん)。

地域情報サイト「ふるさとこづち」に掲載された地域の生産者インタビューより。商品ができるまでの歴史や生産者の想いなどに触れられる

関連サイト
ふるさと納税サイト「さとふる」 : https://www.satofull.jp/
地域情報サイト「ふるさとこづち」: https://www.satofull.jp/koduchi/

執筆:湊屋一子、撮影:森カズシゲ

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