2022年5月13日に『xBridge - Yaesu(クロスブリッジ八重洲)』のオープニングパーティが開催されました。
『xBridge - Yaesu』は、XTech Venturesが2022年4月1日にオープンした自社運営のシェアオフィス型インキュベーション施設。東京駅八重洲口から徒歩一分の立地を誇り、24時間利用可能な本施設は、シード期を中心としたスタートアップを加速させる拠点となるべく始動しました。
もともと商人や職人の街として栄え、今も多くの老舗が立ち並ぶ八重洲・日本橋・京橋エリア(YNKエリア)ですが、近年スタートアップの街としても盛り上がりを見せつつあります。そんな、老舗と起業家、文化とビジネスが混ざり合うこの場所に新しいエネルギーを育んでいくべく『xBridge - Yaesu』はハード・ソフト両面からサポートを行なっていきます。それは単なる企業のアクセラレーションを超えて、街が紡いできた歴史を再解釈し、次の世代へと繋いでいくための挑戦でもあります。
当日はそんな熱気を反映するかのように、主催者であるXTech Ventures、アクセラレーションプログラムに採択された起業企業家達、スタートアップに関わる大手事業会社・ベンチャーキャピタリスト・・パートナー・スタッフ、そしてサポートする東京建物株式会社のメンバー等々の間で、開始直後から活発な交流が行われ、同施設を中心としたYNKエリアの今後を占う一夜となりました。
パーティは、XTech Ventures代表パートナーの手嶋浩己氏の乾杯からスタート。会場の熱気を受け、会場を見渡しながら、メルカリ創業者の山田進太郎氏やBASE創業者の鶴岡裕太氏が集っていた伝説的なシェアオフィスVC「East Ventures」を思い起こす、と語りました。「みなさんで一緒に、この場所から八重洲の街を盛り上げて、世界にはばたくようなスタートアップをどんどん育てていきましょう」そんな言葉とともに、一斉にグラスが掲げられました。
まずは「xBridge - Yaesuの使い倒し方」と題して、本施設の3つの注目ポイントが紹介されました。一つ目は、年末年始を除いて24時間使えるフレキシビリティ。二つ目は、駅徒歩一分でちょっとした空き時間にも立ち寄れる気軽さ。そして三つ目は、いつでも何でも相談し合える信頼性。『xBridge - Yaesu』のフロアには、代表の手嶋氏・西城氏を含むXTech Ventures一同が在席しており、これによって入居者各位が常時、壁打ち相手としてベンチャーキャピタリスト達に気軽に話しかけられる環境が用意されています。また、東京駅周辺エリアという立地を活かして、各種の勉強会・交流会・オフラインイベントを開催し、大手事業会社と周辺のスタートアップ関係者・起業家を繋ぐネットワークを構築していきます。こうした現実空間ならではの深い対話や起業家どうしでの切磋琢磨は、起業直後で充分なネットワークや知見を持たないシード期の起業家にとって、特に有意義な環境といえるでしょう。また、出資元であるLPやパートナー達が。いつでも気軽に訪れることが出来る八重洲ならではの利便性は、『xBridge - Yaesu』が兼ね備える魅力の一つです。
続いて、既にXTech Venturesからの出資支援を受け、『xBridge - Yaesu』に入居するWEB3.0領域の新進気鋭スタートアップ「株式会社Pictoria」から、CEOの明渡隼人氏が事業紹介を兼ねたトレンドトークを披露。同社の主軸となるバーチャルYouTuberのプロデュース事業から、近年のホットトピックであるAIやNFTへの展開可能性が語られました。
斗和キセキをはじめとしたバーチャルYouTuberタレントを抱える「株式会社Pictoria」は、そのノウハウを活かして現在、AIがアクターをつとめる「AI-VTuber」を開発中。これは単なる人的リソースの削減にとどまらず、タレントビジネスとキャラクタービジネス、テクノロジーとエンターテイメントといったさまざまな領域を新しいかたちで結びつけてくれるはずです。実際に、すでに活動中のAI-VTuber・紡ネンによる10日間連続の生配信など、人間には不可能なコンテンツも試みられているとのこと。次なるカルチャートレンドの到来に、会場に期待感が満ちてゆきました。
また、同社は近年のWeb3.0の隆盛に呼応して、AIキャラクターと紐づいた新たなNFTのあり方を提示するプロジェクト「NEN」を始動しました。これは「GENE」と呼ばれるNFTに紐づいた「キャラクターに関する質問」に答えることで、AIキャラクターの設定がNFT所有者の嗜好にもとづいて改変され続けるというもの。いわば、NFTを通じてファンがキャラクターをプロデュースできる仕組みです。NFTをただのコレクションではなく、キャラクターとそのコミュニティのあいだをリンクさせるツールとして機能させる革新的なアイデアに、会場からも驚きの声が上がりました。最後に明渡氏は「ゼロベースでスタートできるIPビジネスを通じて、グローバル規模でも通用するトークン経済圏とキャラクターワールドを広げていく」と同社のさらなる展望を熱く語ってくれました。
明渡氏によるプレゼンを呼び水に、同じくXTech Ventures投資先が支援中のノーコードチュートリアル作成サービス「Onboarding」を開発した「株式会社STANDS」がピッチに登場。同社CEOの露木諒氏は「世の中には素晴らしいウェブプロダクトがたくさんあるのに、使い方がわかりづらいというだけで敬遠されてしまいます。これは非常にもったいない。わたしたちはテクノロジーを用いることで、プロダクトをもっと多くの人に愛される存在にドレスアップしてあげたいのです」と語りました。無数のツールやプロダクト、サービスが溢れかえっている現代では、いかに手軽にエントリーできるかは重要な指標です。誰もが自由にさまざまなプロダクトを使い比べられる、なめらかな社会の可能性がうかがえました。
続いてもXTech Ventures投資先枠のから「キビタス株式会社」がピッチを披露。同社は誰でも安価に司法サービスを受けられる社会を目指して、アプリ一つでトラブル対応ができるソフトウェアを開発中。現在は、インターネットでの誹謗中傷対策に焦点を絞ってプロダクトローンチを準備しています。CEOの森下将宏氏は「これまでのリーガルテックは同業者間で活用されるものばかりでした。わたしたちはこれをすべての人々に向けてひらくことで、司法サービスが身近な社会を実現したいのです」と語りました。SNSが席巻する社会において誹謗中傷はもはや暴力とさえいえますが、それに対抗する手段はあまりにも限られています。そうした社会と制度のバランスを調整するテクノロジーのあり方が垣間見えました。
そしていよいよ、XTech Venturesのインキュベーションプログラム『X-Gate(クロスゲート)』の第1期生による「1分ピッチ」がスタート。『X-Gate』は採択した起業家たちにソフト・ハード両面から様々なサポートを行うことで半年間で資金調達完了を目指すプログラム、というもので、当日は5社のプログラム参加企業の代表者がピッチを披露しました。
1分ピッチでは、多様な領域で展開される参加者たちの事業の未来が、かわるがわる語られました。データビジネス、ロボティクス、EC、物流システム、サステナビリティ推進、アウトドアスポーツ——いっけん、バラバラに見える各企業の取り組みですが、よく見ていくと共通する問題意識が浮かび上がってきます。「コロナ禍以後の世界でビジネスはどのように変わるのか」「テクノロジーが介入できる場所はどこに残っているのか」「これからの時代に必要なプラットフォームとはなんなのか」「サステナビリティとウェルビーイングをともに推し進めるためには何をすべきなのか」——現代に暮らすわたしたちが共通して直面する課題に向き合った上で、それを独自性のあるビジネスへと昇華させようとする、参加者たちの強い思いが感じられました。限られた時間で思いの丈をぶつける参加者たちの勢いに、会場全体が聞き入ってしまう場面も。
さまざまな領域と関心で展開される各企業の取り組みに会場はますますヒートアップ。絶えず情報交換が行われる賑やかな懇親会となりました。
最後は、XTech Ventures代表パートナーの西條晋一氏から締めのあいさつが。西條氏は長年ベンチャーキャピタリストとして業界を見てきた経験から、現在は大企業とスタートアップの垣根が取り払われ、相互に融けあう時代になっていると指摘。同時にVCには、競合他社の間でも活発に情報交換が行われる「横のつながりの強さ」があると述べました。こうした視点をもとに西條氏は「この施設を入り口に、さまざまなVCやスタートアップ、大企業の方々とつながっていってください。わたしたちが提供する場所や情報、ネットワークを使い倒して、みなさんが世界に通用するスタートアップへと成長してゆくことを期待しています」と入居者の方々に激励の言葉を投げかけました。
濃密であっという間の2時間となったオープニングパーティー。さまざまな人々がひしめき合う八重洲の街に宿るイノベーションの胎動を感じられた一夜でした。今後『xBridge - Yaesu』からいかなる可能性が芽吹いてゆくのか、みなさんもぜひ引き続きチェックしてください。