東京では、緊急事態宣言解除初日を迎えた10月1日ですが、世界共通の記念日「国際コーヒーの日」でもあったことをご存じでしたか? コーヒー生産量で大きなシェアをもつブラジルでコーヒー生産の年度初めが10月であることから制定されたそうです。
そんな「国際コーヒーの日」に合わせて、八重洲と京橋にある2棟のオフィスビルの足元の内外空間とオンラインで開催されたイベント『COFFEE PICNIC』(主催:GOOD COFFEE FARMS株式会社/アート&クラフト市実行委員会、協賛:東京建物株式会社)。期間中、合計4,000杯ものコーヒーが無料で振舞われ、多くの人が癒やしのひと時を過ごした会場の様子をレポートします。
人にも地球にも優しいコーヒーを一杯いかが?
初開催かつ、来場者・出展者・関係者へのコロナ感染予防対策に取り組みながらも、COFFEE PICNICに多くの人が来場した理由は、扱われていた「サステナブルコーヒー」に対する関心の高さゆえでしょう。
東京スクエアガーデン(京橋3-1-1 )では10月2日(土)・4日(月)・5日(火)の3日間、東京建物八重洲ビル(八重洲1-4-16)では10月4日(月)・5日(火)の2日間、GOOD COFFEE FARMSが誇るグアテマラ産「スペシャルティコーヒー」のフリーコーヒーを実施。「Coffee Changing The World」と印字されたカップに注がれたサステナブルコーヒーを目当てに、順番待ちの行列ができる時間帯もありました。
会場を訪れていたビジネスマンのひとりは、「コーヒーを飲む時間は何よりの癒やし」とのこと。また、自宅で豆を焙煎するほどコーヒー好きだという40代の夫婦は、「美味しさが価値として生産者に還元されるGOOD COFFEE FARMSの取り組みに感心した」と話してくれました。GOOD COFFEE FARMSでは現在、環境負荷を最小にする生産ノウハウを約200の協力農園に提供しています。
フリーコーヒーの屋台に併設された物販ブースには、コーヒーはもちろん、従来廃棄して環境汚染の一因となっていた脱穀後のコーヒーチェリーを発酵・乾燥させてつくったお茶「カスカラティー」や、廃材となったコーヒーの木からつくられたコースターなどが並べられ、サステナブルな未来のためにGOOD COFFEE FARMSが実践するものづくりに、こちらでも共感や気づきの声が上がっていました。
芝生広場や手づくりマルシェもオープン
ここで、COFFEE PICNICのCOFFEE PICNICたるゆえんに触れておきたいと思います。それは、期間中にオフィスビルの足元に出現した芝生スペース。ベンチもあり、買い物途中にコーヒーで一息ついたり、オフィスワーカーが外に出てちょっとした仕事やミーティングをするのに使ったり。まさにピクニックのように、オフィスワーカーと地域の人の日常が交差し憩う空間になっていました。
さらに、東京スクエアガーデンでのCOFFEE PICNICの初日は、毎月第4土曜日恒例の「アート&クラフト市」も同日開催され、外で過ごすのが気持ち良いこの季節にぴったりのコンテンツを、来場者は思い思いに楽しんでいるようでした。
サステナブルな未来と美味しいコーヒーへの理解を深める
八重洲ビル、東京スクエアガーデン共通のプログラムとして芝生スペースで行われたのが、GOOD COFFEE FARMS代表のカルロス・メレンさんによるセミナー「消費国でのSustainablity」です。コーヒーの生産や流通の現実、生産者が直面する課題に対して、GOOD COFFEE FARMSがどうアプローチしているのか 、していくべきなのかを紹介。カルロスさんの熱のこもった話に、熱心に耳を傾けている参加者の姿が印象的でした。
また、フリーコーヒーの実施に先立ち、オンライン・オフライン同時開催されたトークイベント「消費国でのSustainablity」では、「Circular Coffee Roasters」代表で焙煎士の望月光さんが司会進行を務め、「ONIBUS COFFEE」オーナーバリスタの坂尾篤史さんとカルロスさんによるクロストークが展開されました。
坂尾さんは、国内カフェ業界でその名前を知らない人はいないほど、スペシャルティコーヒーのパイオニアとして業界を牽引するひとりです。2013年から定期的に訪問している生産国で、環境への負荷を目の当たりにした坂尾さんは、豆の品質はもちろん、サステナビリティやトレーサビリティも重視したコーヒーを注意深く選ぶことで、消費者の環境への意識に変化をもたらすような商品開発や取り組みを行っています。
コーヒーの原料となるコーヒー豆の生産は専ら発展途上国で行われており、重要な収入源となったコーヒー豆の生産が拡大し続けた結果、森林伐採や河川汚染が進行。それに伴いコーヒー豆の品質は悪化し、生産者の貧困問題や労働問題など複雑多岐にわたる問題が引き起こされています。
コーヒー豆の持続的な生産に向けて、生産国、消費国の双方の行動が一刻も早く求められているいま、カルロスさんと坂尾さん、そして望月さんの三者三様の実践をヒントに、まずは無意識にしている「選択」をなくす。そして、選択したことを発信することが、一杯のコーヒーに癒やされている私たちにできる恩返しかもしれません。
自分の味と出会うオンライン焙煎体験会
最後にご紹介するCOFFEE PICNICのコンテンツが「オンライン焙煎体験会」です。講師は、「感性をひらく“間”との出会い」をコンセ プトにした食体験ブランド「Comma Lab」 を運営する「COM-MA Laboratory」CEOの江角和沙さん。
2時間の体験会はコーヒーの背景を知る講義からスタートします。コーヒーの流通経路や業界の課題、スペシャルティコーヒーが注目されている理由など、普段はあまり考えることはしないけれど、知れば知るほど興味を惹かれるコーヒーの奥深さを理解始めた頃合いで、いよいよ焙煎体験へ。
参加者は事前に送られてきたコーヒー生豆(今回はGOOD COFFEE FARMSが使われました)と手順書を手に、江角さんの実演にならってコーヒー豆を焙煎していきます。「ハゼ」(豆を煎って膨らむ瞬間のこと)、「チャフ」(焙煎によってコーヒー豆の薄皮が剥がれること)といった専門用語もリアルタイムに確認しながら進めることができるのが嬉しいですね。
ハゼが始まるとコーヒー豆から香ばしい匂いが。画面越しの個々のリアクションも自ずと大きくなっていきます。江角さんによると焙煎の刻一刻と変わる香りはその時にしか体験できない貴重なものとのこと。最後に自分で焙煎したコーヒーを味わった参加者からは、「豆を挽いた瞬間に香りが広がる感じがいい」「焙煎はすごい時間がかかると想像していたが、気軽にできて変化を楽しめた」などの感想に交じって、「これまで自分のコーヒーに出会えなかったけれど、初めて出会えた」と、最上級の感動のコメントも寄せられました。
コーヒーのもつ香りや余韻とともに、たくさんの思い出が刻まれたCOFFEE PICNIC 。どこかせわしない日常に駆り立てられるオフィス街に癒やしを届けたイベントは束の間の出来事でしたが、一杯のコーヒーをきっかけに生まれた人とのつながりと同じように、地球とのつながりも見つめ直し、大事にしていかなければならないとあらためて思わせてくれました。
<イベント概要>
「COFFEE PICNIC」
開催場所:東京建物八重洲ビル 1F屋外広場、1Fブリリアラウンジ(八重洲 1-4-16)
東京スクエアガーデン 1F屋外広場 (京橋 3-1-1)
開催日程:東京建物八重洲ビル:2021/10/4(月)・10/5(火) 11:00~17:00
東京スクエアガーデン:2021/10/2(土)・10/4(月)・10/5(火) 11:00~17:00
料 金:入場料:無料
参加費:オンラインプログラムを除くコンテンツはいずれも無料
共 催:GOOD COFFEE FARMS株式会社、アート&クラフト市実行委員会
協 賛:東京建物株式会社
後 援:在グアテマラ日本国大使館、京橋一之部連合町会、八重洲一丁目中町会
関連サイト
GOOD COFFEE FARMS: https://www.goodcoffeefarms.com/
自転車をこいでコーヒー界に革命を/GOOD COFFEE FARMS(当サイト内コンテンツ)
https://guidetokyo.info/work/forefront/00022.html
Comma Lab - STORES: https://commalab.stores.jp/
撮影:島村緑
※1~5は筆者及びイベント運営側で撮影