変化の時代に求められるチームのためのオフィスとワークショップ
去る10月4日(水)、「チームワークあふれる社会を創る」ことをミッションに掲げるサイボウズ株式会社が東京・日本橋のオフィスの会議室を提供し、こども国連環境会議推進協会(JUNEC)主催の「SDGs×レゴ®ワークショップ」が行われた。中学生以上なら誰でも参加できるオープンなイベントで、50席を用意した会場はキャンセル待ちの人も含めて満席。うち社会人が8割と、今回のテーマに対する世間の関心の高さが伺えた。
理想と現実、世界のジレンマを体験する
2030年までに国際社会が達成すべき目標として、2016年1月からスタートしたSDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)。「誰一人取り残されない(no one will be left behind)」世界をつくるための17の目標、169のターゲット、230の指標で構成されている。
この壮大なチャレンジを、カードゲームとレゴを用いて体験するのが今回のワークショップだ。こども国連事務局長の井澤友郭さんをファシリテーターに、7~8人のグループに分かれ、ランダムに配布されたゴールカードが示す「富を得ること」「悠々自適な暮らし」といった人生のミッションを遂行。同時に、間接的に影響を与える世界の「経済」「社会」「環境」の変化が可視化されるため、否が応にも矛盾と向き合うことになる。企業に置き換えれば、環境対策と企業利益の追求という、二つの戦略のジレンマといえるだろう。そして、変化する状況、限られた時間の中で、仲間と次の一手を導き出す。まさに、チームの仕事だ。
互いに都合のいい解釈をしていないか?
さらに、カードゲームの体験後に「レゴ®シリアスプレイ®」を活用したリフレクション(ふりかえり)を行うことで、個々の思考を深化させていく。価値観やビジョンといった形のないものを、レゴのパーツを使って表現するのだが、作品の解説、それに対する質問と回答を重ねるうちに、さほど意識せずに選んだパーツさえも、その色・形・大きさの意味が際立ってくるから面白い。井澤さんはこれを「気づきの再構成」と呼び、このワークショップの醍醐味と語る。
「レゴの大きなメリットは『問いを持つ』『問いを投げかける』ツールとして働いてくれることです。例えば、付箋を使ったワークショップで『壁』と書いたとします。すると、人は分かった気になって、そこに一人一人が思い描く「壁」の解釈の齟齬があることに気づかない。レゴという形ある物があって初めて、壁の高さや構造、壁の向こうにある景色に、価値観の違いを発見するのです。レゴで遊ぶような感覚のワークショップですから、質問すること・されることへの心理的ハードルも低い。曖昧さの中から本質を探り当てるには対話が欠かせません。ワークショップはいわば、他者理解と合意形成のエクササイズなのです」。
答えのない時代、変わり続けることの大切さ
今回のプログラムは、SDGs以外に『どんな組織をつくりたいか』『将来どんなまちを目指したいのか』といったテーマにも展開可能だ。井澤さんは実に年間150回以上、課題解決やキャリア形成に関するワークショップを開催している。何が井澤さんをそこまで突き動かすのか聞いた。
「20世紀型の教育や20世紀型のビジネスには必ず正解とされる先行モデルがありました。『海外で成功しているものを日本に持ってきて、きちんとしたローカライズを施せば成功する』。そういう時代に求められたスキルは、正解の絵に対して、正しい場所に正しいピースをいかに早く置けるかを競うジグソーパズルのようなもの。しかし、21世紀は答えのない時代です。この先、日本の人口は減り続けます。参考にすべき成功事例はないに等しい。ですから、新しいものを生み出さないとならないのですが、自分一人で考えられることには、限界があります。価値観の合わない相手がいたとしても、チームの力で自分の想像を超えるアイデアを手にし、変わり続けていくことが必要なのです」。
個人主義的な日本人、グループからチームへ
働き方をはじめ、誰もが模範とするロールモデルが崩れた今、井澤さんがワークショップを通じてリードする「他者理解」とは、「違いを発見する、違いを受け入れる、違いを楽しむ」ことであり、合意形成とは「正解ではなく“納得解”を見つける」ことなのだ。井澤さんはこう続ける。
「そういう意味で、心理的同一性を求め過ぎる日本のコミュニティはグループであってもチームではないケースが多く見られます。『話し合えば分かり合える』という理念も大切ですが、そもそも、一人一人は生まれも育ちも違い、価値観も違って当たり前。『分かり合えない』方がむしろ普通なのです。それを前提にすると、コミュニケーションスキルやコラボレーションスキルはぐっと上がります。さまざまな人種が住むアメリカが分かりやすい例です。チームはみんなバラバラでもいい。同じような人が集まっていても新しいアイデアは生まれません」。
似て非なるチームとグループ。行動を共にするグループの同質性は必ずしもパフォーマンスに直結しない。日本人が元来持つ、共感があらかじめ保証されているという思い込みや、均質化された個人を集める個人主義かつグループ主義的価値観を変えられれば、働き方の選択ももっと楽になるだろう。成果は、チームで問われるものなのだ。
<イベント詳細>
SDGs×レゴ®ワークショップ
日時: 2017年10月4日(水)
場所: 東京日本橋タワー27階 サイボウズ株式会社内会議室
主催: こども国連環境会議推進協会(JUNEC)
◆井澤 友郭 (いざわ ともひろ) こども国連環境会議推進協会 事務局長
ワークショップデザイナー、レゴ®シリアスプレイ®ファシリテーター。「持続可能な社会を実現する人を創る」をテーマに活動をしている教育NGO「こども国連環境会議推進協会」の事務局長として、2003年から活動。「持続可能な開発目標:SDGs」や「危機管理」をテーマに、課題解決やリーダーシップ開発などのワークショップを年間150回以上開催し、延べ1万人以上の社会人・学生を育成してきた。
【関連サイト】
サイボウズ株式会社 https://cybozu.co.jp/
「SDGs×レゴ®ワークショップ」詳細 http://junec.gr.jp/sdgs/