〈さんかする〉イベントレポート
Event report

|2019.06.10

「東東京スタートアップで働くを語る会#6」開催 新たなベンチャー集積地「日八京」って知ってる?

移動型賑わいづくり集団を名乗る「はじまり商店街」。年間200本以上ものイベントを手掛ける彼らが今ホットな注目エリアとして挙げるのが東東京だ。昨年9月から主催する「東東京スタートアップで働くを語る会」は今年3月の開催で第6回を数えた。東東京に根を張り始めた若い力。ゆるくて熱い、そんな最新の会の模様をレポートする。


老舗デベロッパー×テックベンチャー代表者対談

3月22日(金)、株式会社はじまり商店街が主催するトークイベント「東東京スタートアップ」が「『テクノロジー』と『スタートアップ』は街にどんな影響を与えるか?」をテーマに京橋のkyobashi TORSOにて開催された。ゲストは、この春大学を卒業し、「既存産業×IT」で、多発的・非連続的にスタートアップを創出し続けるスタートアップスタジオを運営するXTech株式会社の子会社の取締役に就任した廣川航さんと、同社と共同で八重洲にオープンさせたスタートアップ支援拠点「xBridge-Tokyo(クロスブリッジトウキョウ)」を運営する東京建物株式会社の渡部美和さん。この日集まった参加者同士の自己紹介を兼ねたアイスブレイクのあと、ゲストのふたりから“なぜ今の仕事を選んだのか”が語られた。

左からM&A BASE取締役 廣川航さん、東京建物ビル事業本部まちづくり推進部 渡部美和さん

“多数の子会社設立” “2社の企業買収” 勢いにのるXTechグループ

廣川さんは慶應義塾大学在学中だった2018年8月に「XTech」に参画。同社は2018年1月、元サイバーエージェント取締役の西條晋一氏により設立された。新規事業の立ち上げのほか、ポータルサイト大手「エキサイト」や留学事業を手がける「地球の歩き方T&E」の買収など、わずか1年で5つの子会社を抱え、グループの総従業員数は300名を超えている。そんな目覚ましい成長を遂げる同社は2019年2月、M&A支援事業へ参入するために子会社「M&A BASE」を設立し、取締役に新卒第一号の廣川さんを起用したことを併せて発表し、世間を驚かせた。

「弊社代表の西條は、メディアへの発信などPRにこだわりを持っており、『XTechに新卒が子会社の取締役として入る』、つまり私が入社するというプレスリリースをだしたところ、思いがけずバズってしまいました」。

そう笑う廣川さんだが、本人ももちろんただ者ではない。1995年、東京生まれ。中学2年から株式投資を始める。「株」の世界を知ったのは、小学生の時に村上ファンドの村上世彰氏やライブドアの堀江貴文氏が「会社とは誰のものか?」という議論を連日繰り広げていたのを見たことがきっかけだった。また、中学生になって実際に株式投資を始めることを後押ししたのは、親戚が株式投資で得た利益で車を購入した成功体験を目の当たりにしたことだったという。

「僕は元々車が好きで、いつか買いたいと思って貯金をしていました。しかし、いざ始めて見るとそんなにすぐにお金が貯まるわけではありませんでした。そんな時、親戚が株式投資で成功して車を買ったという話を聞きました。では、自分もやってみようと。実に単純な理由からでした。お金ですか? 大好きです(笑)。あと、自己承認欲求が強いです。古い人間かもしれませんが、お金によって自己承認欲求はある程度満たせると思っています(笑)」。

数々のスタートアップやファンドでリサーチャーとしてインターンをしていた大学生時代

廣川さんは、株式投資を始めた直後に、投資ファンドよる企業買収を描いたテレビドラマ『ハゲタカ』と出会う。「ハゲタカ」と出会って以来廣川さんは投資ファンドの虜になる。高校の卒業論文では、「ハゲタカ・ファンドは本当にハゲタカなのか?」という論文を書いたが、そんな高校3年の時に、人生2度目の転機が訪れる。たまたま友達に誘われて参加したビジネスコンテストで、著名なベンチャーキャピタリスト(ベンチャー企業に投資する投資ファンドの)と出会う。そのベンチャーキャピタリストと出会うまでの廣川さんは、IT業界やベンチャー企業にある種の胡散臭さを感じていたというが、出会ってからはむしろポテンシャルを感じ、大学生活のほぼ全てをスタートアップやベンチャーキャピタル、ヘッジファンドなどでのインターンに注いだ。

そして、2018年10月に廣川さんは、XTechに新卒で入社し、同社より子会社の取締役に就任するプレスリリースが発表された。

「様々なスタートアップでリサーチのインターンをしていくうちにXTechという既存産業とテクノロジーの掛け合わせ、つまり既存産業でもITが使われるようになっていくのを肌身で感じるようになりました。例えば、数年前から日本でもよく聞かれるようになってきた『Fintech』。『Finance(金融)』×『Technology』の造語で、モバイル決済が代表的です。それまでのスタートアップは、金融や不動産、ヘルスケアなどの参入コストがかかる領域はなかなか少なかった。だが自分が大学を卒業する頃には、様々な領域に〇〇Techが浸透し始めていました」。

「ただ、就職活動はそんなにうまくいかず、どうしようかと思っていました。そんな時にXTech Ventures(VC)の共同創業者である手嶋さんとお会いしました。手嶋さんとは定期的にお茶をさせていただく関係だったのですが、そこでXTechの代表でありXTech Venturesの共同創業者である西條さんが僕に会いたがってると伺い、その数日後にお会いしました。気がつけばいつのまにかXTechで働いていました(笑)」。

参加者とのディスカッションのひとコマ

ベンチャー=若者の街『渋谷』だけではない

かくして、「新卒で役員」という唯一無二のキャリアに至った現在、廣川さんは八重洲にある「xBridge-Tokyo」を本拠地として活動している。

「IT系スタートアップの若い起業家が集まる渋谷に対して、ミドル層の起業家たちは八重洲や日本橋などの東京駅周辺を選ぶ人もいらっしゃいます。なぜ東京駅周辺なのか? 東京駅周辺には大企業が集まっています。そのため、既存産業を扱う大企業と一緒になって何か新しいことやろうとすると、早く対応できる。もちろん、街の雰囲気の魅力もあると思います。渋谷には渋谷の良さがあるが、東京駅周辺は落ち着いていて個人的には居心地がいい。おかげで先日、渋谷に行ったら若くて元気がある人が多くて、ちょっともう違うかもなって(笑)」。


学園祭実行委員会の経験で知った、輝く人を支えるやりがい

ここで、トークのバトンは渡部さんへ。「新たなベンチャー集積地」として注目される東京駅周辺に多数のビルを所有する大手総合不動産デベロッパー「東京建物」入社5年目の若手ホープだ。海外旅行が趣味で、宿はゲストハウスなど他の宿泊者と友達になれる場所を選ぶという渡部さんは、慶應義塾大学で心理学を専攻し、「ポジティブ思考がいかに大切か」を研究した、まさにコミュニケーション能力の塊のような人。

「学生時代は学園祭実行委員会に所属していました。一週間ろくに寝られずに迎えた後夜祭で、ステージで輝く参加団体の笑顔を見て、『ああ、ここまでやってきてよかった』と心の底から思えたんです。実行委員は本番に至る準備と段取りを行う裏方で、時には演者に指示をしたり、活動を制限したりしなければならないので、精神的にも大変でしたが、『輝く人を支える側の仕事に就きたい』と思えた経験でした」。

渡部さんは現在、ビル事業本部まちづくり推進部に所属し、廣川さんをはじめ成長意欲あふれる人材が数多く籍を置くxBridge-Tokyoの運営担当として忙しい日々を送っている。

「入社して分かったことがあります。どんなに準備万端のつもりでも、人が集まらないと成立しない学園祭と同じで、いくら土地を買って良い建物を建てても、そこに人がいなければ意味がないんです。デベロッパーというと、規模の大きいハードの建設や大規模開発がまず思い浮かぶと思いますが、私の理解ではデベロッパーも結局、人の集まりをつくるのが仕事。そしてこの仕事に私はとてもやりがいを感じます」。

参加者からの質問に答える渡部さん(左)。隔年で開かれる地元の誇りある「山王祭」には街の一員として参加(右)

東京駅の東側に広がる日本橋、八重洲、京橋。名付けて「日八京」

渡部さんのトークの中で度々出てくるワードに「日八京(ニッパチキョウ)」がある。大手町・丸の内・有楽町の呼称「大丸有(ダイマルユウ)」に対して、東京駅の東側に広がる日本橋、八重洲、京橋の頭文字を取って「日八京」と呼ぶそうだ。日八京ではここ数年、新形態のオフィス事業が次々と展開されており、東京建物はその中心的存在だ。日本最古の総合不動産デベロッパーである東京建物は、関東大震災復興最中の1929年、当時の最新建築技術を駆使して八重洲に東京建物ビルヂングを竣成。現在も本社ビルとして使用されているが、2025年には大丸有を見下ろす地上54階地下4階建ての複合ビルに生まれ変わる予定だ。

「大丸有との大きな違いは街の歴史的背景にあります。江戸時代、町人地として整備された日八京には今なお人が住み、個店があり、祭りなどの地域行事が盛んです。ですから、街の人の思いがまず一番にあります。そのうえで、10年先、20年先を見据え、街に新しい風をどう吹かせるかが、私たちのミッションだと考えています」。

イノベーションを支えるエコシステムを備えたまちづくり

大企業からスタートアップへの投資、あるいは両者の協業が活発になってはじめてイノベーションが生まれる土壌がつくられる。それに惹かれて、新たな起業家やエンジニア、大企業、投資家がさらに集まってくる。そんな「エコシステム」を備えたまちづくりを渡部さんは目指している。

「スタートアップ支援施設であるxBridge-Tokyoがオープンした2018年4時点の入居企業は8社でしたが、現在は26社が入居しています。それぞれが順調に成長されて社員数も増え、総勢100名以上が利用する施設となりました。彼らにとっては当然のスピード感なのですが、私からすると驚くばかりですね。廣川さんも先ほど言っていましたが、この街に入ってきてくれる起業家の中には、図らずもミドルエイジの方が多いんです。みなさんの事業経験や豊富な人的ネットワークが存分に生かされていると思います」。

東京建物ではxBridge-Tokyoのほかにも同エリアにおいて、環境を主軸としたオープンイノベーション拠点「City Lab TOKYO(シティラボ東京)」や、集まってくる起業家の受け皿として会員制シェアオフィス「+OURS」を開設。スタートアップを吸引する吸引する形となっている。

xBridge-Tokyo開設1周年記念パーティーを行った時の記念写真

ミレニアム世代が形づくる「人が集まる」街の魅力

廣川さんと渡部さんからひとしきり話を聞いた後、少人数のグループに分かれ、ゲスト・参加者を交えたディスカッションが行われた。ディスカッションといっても、知的な雰囲気をかもし出さなくてはならないようなかしこまった時間ではなく、「スタートアップってどんなイメージ?」「日八京にあったらいいなと思うもの」がテーマ。「起業家というと昼夜問わずがむしゃらに働いていそう」「ベンチャーは珍しくなくなっている。むしろ最近では、大手勤めがカッコ悪いという風潮もある」「日八京はサラリーマンのおじさんの街という印象が強いので、クラブがあってもいいよね」「スーパーや公園も欲しい!」といった自由な意見が飛び出した。

今回の会で見えてきたのは、日本のベンチャー界がこの先もうひと山ふた山盛り上がるのに、日八京のまちづくりがひとつの鍵となること。また、コミュニケーション能力に長け、既存の枠組みにとらわれないミレニアム世代の活躍なしに、街の成長を見ることはもはや難しいだろう。その点で、廣川さん、渡部さんが揃って「居心地がいい」と太鼓判を押す日八京の10年後が楽しみだ。

グループディスカッションの結論をグループごとに発表して会は締めくくられた。プロジェクターの前に立つ青いキャップの男性が主催者の「はじまり商店街」柴田大輔さん

関連サイト
はじまり商店街: https://www.facebook.com/hajimari.shoutengai/
XTech Startup Studio: https://xtech-corp.co.jp/

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