週末の、東京駅八重洲口近くのオフィス街の一角で、学生が小屋をセルフビルドすると聞きつけ、製作現場を取材してきました。
その名も「ベニアハウスプロジェクト」。べニアハウスとは、建築家で慶應義塾大学大学院の小林博人教授が、災害直後など建物が必要とされる時に、廉価で素早く建てられる建物ができないかとの想いで考案したもので、すでに国内外で施工実績が複数件あるそうです。ベニア合板を木製のくさびでつなぎ合わせた構造に最大の秘密があり、というのも、京都の清水寺の舞台のように、釘は一切使われていません。つまり、特別な工具やスキルを必要とせずに組み立てることができるというわけです。
この日、2.5メートル角のべニアハウスの組み立てに取り組んだ、慶應義塾大学SFC (湘南藤沢キャンパス) 小林博人研究会の学生たちが小林教授の指導の下に行っている活動の目的は、都市と地方を構成するハードな空間構成要素から、ソフトなコミュニティの人間関係まで、環境の変わり様を的確に捉え次の都市と地方の在り様を構想し、ヴィジュアライズすること。少々難しいですが、彼らの研究領域のキーワードの中に、「まちづくり」が入っていることからも分かるように、研究対象地に入り込んで行う取り組みも多く、当日も、町会長はじめ地元の方々との意見交換の時間が設けられていました。
今回のべニアハウスの組み立ては試験でしたが、学生からは、再開発の進む街において、ベニアハウスを装置とした繋がる仕組みの提案がなされ、地元の方々もまた、自分たちが大切にしていることや、ベニアハウスの設置に係る許認可の話、自営業の店舗と地域の活動の両立の難しさなど、忌憚なく発言し合うことで、お互いの距離感を縮めていたようにみえました。
午後に入って開始したべニアハウスの組み立ては途中、意見交換の時間を挟み、午後3時頃には早々と完成。立派なべニアハウスをバックに地元の方々と写真におさまる、学生たちの達成感に溢れた清々しい表情がなんとも印象的でした。小林教授は、「ベニアハウスを協力して施工する過程がコミュニティや地域文化を育てることにもつながる」としています。
関連サイト
ベニアハウスプロジェクト - 慶應大学SFC 小林博人研究会: https://hirotolab.sfc.keio.ac.jp/p_2015_veneer.html
Veneer House: https://www.veneerhouse.com