〈はたらく〉 ワークスペース探訪
Exploring Work Spaces

|2019.06.17

ITエンジニアの学べる環境をオフィスのデザインでサポート【テラスカイ】

執筆:やつづかえり 編集:松尾奈々絵(ノオト) 撮影:小野奈那子 ※一部提供写真除く

働き方改革や人材採用難を背景に、オフィスのデザインを刷新して生産性を上げようという取り組みをよく耳にするようになった。しかし、今やっていることの効率を上げるだけでは新たな価値は生まれず、世間の変化に取り残されてしまうだろう。時代のニーズに応えていくには、クリエイティビティやスキルの向上が不可欠。つまり、社員が学び続けることが求められるのだ。

今回紹介する株式会社テラスカイは、2018年5月に社員の「学び」にフォーカスしたオフィスをつくった。移転から1年経った本社オフィスを訪問し、そのコンセプトと具体的な工夫、新しいオフィスで起きた変化について、田中有紀子さん(経営企画本部マーケティング・コミュニケーション部執行役員副本部長)に伺った。


●3フロアに分かれても社員同士が顔を合わせる機会を生む仕掛け

テラスカイエントランスにはアロマディフューザーを用意。爽やかな香りでお客さまを出迎える

2006年に創業したテラスカイは、企業の情報システムのクラウド化支援やオリジナルのクラウドサービスの開発・提供をしている。拡大する市場とともに同社も成長を続け、社員数が増えたため本社を移転することになった。

「移転前のオフィスでは、リフレッシュスペースや会議室を執務室にするほど、スペースが足りない状況でした。そこで引越しを計画したのですが、それを機に『どうすれば社員がもっと働きやすいだろう』と改めて考え、今のオフィスをデザインしました」。

社名の由来であるTerra(大地)とSky(空)をコンセプトに、15階は温かみのあるグリーン、17階はさわやかなスカイブルーが基調となっている。オフィス中央階の16階はHorizon(地平線)がコンセプト

移転前も今も変わらずオフィスは日本橋にある。社員の通勤の便が悪くならないこと、取引先を訪問する際にも便利な立地であること、そして歴史あるこの界隈への愛着があったことが、移転先を選んだ理由だ。

移転の時点で約350人だった本社の従業員数は、2020年に700人程度になることを見込んでいる。そのため、旧オフィスは1フロアだったが、新オフィスは15~17階の3フロアに。社員はそれぞれ自席が決まっているが、フロアの違う社員同士も顔を合わせる機会を増やす工夫が散りばめられている。

休憩や打ち合わせなどで自由に使えるラウンジは、中央階にある16階に設えられ、昼休みの時間帯は社員食堂に早変わり。「バーナイト」と称して、終業後にお酒とおつまみを安価で提供することもある。また、社外からも参加者を招いて勉強会やイベントが頻繁に行われている。

昼休みには社食になる「ホライゾンラウンジ」

ビュッフェメニューは500円で一皿に好きなだけおかずを盛ることができるので、「野菜をよく食べるようになった」という声も

●ITエンジニアが7割だから「学習できる環境」が重要

「働きやすいオフィス」と一口にいっても、会社のビジネスや業務によってその内容は変わる。テラスカイの場合は、ITエンジニアが社員の7割を占める。同社では短期間に少人数のチームでプロジェクトを回していくため、その動きにあわせたオフィスづくりが行われている。

「私たちのビジネスは、クラウドを使ってお客さまのシステムを開発すること。クラウドに特化していることにより、一つひとつのプロジェクトの期間が短く、スピードが速いのが特徴です。短いもので1~2カ月間のプロジェクトごとに、3~6人ほどのエンジニアがチームになって仕事をします。チームでのコミュニケーションがしやすいように、社内には小さなミーティングができる場所をたくさんつくりました」。

会議室は、Monsoon、Tundraなど「世界の気候」の名称をつけた部屋を用意し、壁面はアイディアペイントを設置

15階に自社サービスを開発する部署、17階に顧客向けの受託開発を行う部署の席があるが、プロジェクトには両方の部署のメンバーがアサインされることも多い。そのため、互いの執務エリアにあるミーティングコーナーや、16階のラウンジに集まって打ち合わせをする。

移転前はそのようなスペースがなく、会議室を使うには予約が必要だった。予約が取れずにわざわざオフィスの外に行くこともあったため、「今は必要なときにサッと集まれて仕事がしやすい」と社員にも好評だ。

執務エリアに用意したミーティングエリア。打ち合わせがしやすいようモニターを設置

エンジニアの働き方を考えて重視したもうひとつの点が、「学び」に対するサポートだ。

「常に技術が進化するエンジニアの業界では、学び続けることが必要です。そのため、個人が集中して学習することも、みんなで学び合うこともできるよう、目的に合わせた大小さまざまなスペースを、社内のいろいろな場所に配置しました」。

1人で新しい技術を試したり資格取得の勉強をしたりするなら窓際の集中しやすい席で。少人数のグループで発表やディスカッションをするときにはプレゼンテーションに適した場所で。社外のエンジニアも参加する大きな勉強会は16階のラウンジで。このように、さまざまな学びの形に適した場所を選べるのだ。

1人での作業や勉強に適した窓際の集中スペース(写真左)と、窓際の勉強スペース

●仲間の存在と働きやすいオフィスが学び続けるモチベーションを支える

オフィス移転前は、勉強会を開いても会議室に入りきれない社員がいたり、場所が確保できずに構想だけで終わったりしてしまったこともあった。今は十分なスペースがあるため、開催される勉強会やイベントの数も増えているという。

チームで集まって発表や勉強会のできるプレゼンテーションエリア。15階と17階の執務エリア中央に配置されている

社外のエンジニアと一緒にコミュニティ活動をしているエンジニアもいる。例えば量子コンピュータの勉強会には、100人以上の参加者が集まった。最近では、自社製品を利用する顧客を招いて情報交換をする「ユーザー会」も始めた。エンジニアにとっては、普段は直接接することの少ない顧客とコミュニケーションを取る機会になり、それが仕事のモチベーションにもつながるという。

「ユーザー会では、お客さまに食事などを楽しんでもらいつつ、『こういう機能を追加してほしい』といった製品への要望をホワイトボードに書き出してもらったり、お客さまの抱えている課題を伺ってエンジニアがその場で解決したりと、活発な情報交換が行われました。今後も定期的に開催したいと考えています」。

特にクラウドという分野では新しい技術がどんどん出てくるため、エンジニアはそれを追いかけることに疲れてしまうこともある。1人で学び続けるには強い意思が必要だが、テラスカイのオフィスは、一緒に学び助け合う仲間をつくることにも役立っているようだ。

勉強会の開催は会社の指示によるものではなく、あくまで社員の自主性に任されている。「やりたい」という気持ちをもった社員が自主的に会を運営するため、頻繁にイベントが開催されても特定の担当者に負担が偏ることはないとのこと。利用しやすいオフィスが、社員の自主性をうまく引き出していることが伺える。

仕事やスキルアップに直結しないカジュアルな交流も行われている。例えば、ラウンジに導入された卓球台を利用しての卓球大会には、15組ほどの出場者のほか、社長も含む観戦者が集まり、とても盛り上がったそうだ

◇◆
近年オフィスにおいて、社員同士のインフォーマルな交流を促す場に注目が集まっています。人々を誘い込む磁力を備えた場所「マグネットスペース」をつくるにあたって必要な要素を、岸本章弘さんが考察しました。

コーナー監修・岸本章弘さんコラム [場所が人を呼び、人が人を呼ぶ マグネットスペースの活用] 

関連サイト
株式会社テラスカイ: https://www.terrasky.co.jp/ 

<執筆者プロフィール>
やつづかえり
コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。2013年に組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブマガジン『My Desk and Team』開始。『くらしと仕事』編集長(2016〜2018.3)。Yahoo!ニュース(個人)オーサー。各種Webメディアで働き方、組織、ICT、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。著書に『本気で社員を幸せにする会社』(2019年、日本実業出版社)。

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